03-4NPO法人コラボのニューズレター vol.31~42

2012年5月 8日 (火)

コラボ vol.31

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コラボ vol.31                   2006-3-01
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目次
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[インタビュー書評]
01:主張する本――『食べても平気? BSEと食品表示』
                          宮川純一(編集者)
[会員の声]
02:テロ対策の国へ「ようこそ」      まさのあつこ(ジャーナリスト)

[取材メモから]
03:人口減少と団塊世代               千葉茂明(編集者)

[おしらせ]
04:ネット上のコミュニティづくりに最適化したサイトづくり
                       樺嶋秀吉(ジャーナリスト)
[あとがき]
05:あなたのまちの「県庁の星」は輝いているか
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[インタビュー書評]
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01:主張する本――『食べても平気? BSEと食品表示』
 (吉田利宏著/集英社新書/05年12月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★「消費期限」と「賞味期限」違い、わかりますか?★

 1月20日、再開されると思いきや、土壇場でストップのかかったアメリカ
産牛肉の輸入問題。その背景には、世界を震撼させたBSE問題があったこと
をいまさら語る必要もないだろう。吉野屋ファンならずとも、食の問題に無関
心ではいられない。

 では、実際に消費者として食品の安全性にどれだけ気を配っているか。その
安心の指標が食品表示なのだが、「その理解度は?」というと、かなり怪しい。
例を示そう。

1「消費期限」と「賞味期限」の違いはどこにあるのか?
2「特定保健用食品」(トクホマーク)と「条件付特定保健用食品」の差とは
なにか?

 この2つの問いにすぐさま答えられる人は、業界関係者ならいざしらず、そ
う多くはあるまい。一般に浅く認知はされていても、実際に食品表示がどのよ
うな意味をもつかまでは知らない。BSE問題を境に、食品行政の検証までし
たうえで、消費者が「食の安全」とどう向き合うべきかを問おうとしたのが本
書である。以下、著者とのインタビューを交え紹介しよう。

★変化する食品行政★

「すべての食品に品質表示を義務付けているJAS法は、もともとは事業者側
の法律でした。規格を定めることで事業者間の生産効率を上げるものに過ぎな
かったこの法律が、長い年月のうちで消費者の声に洗われ、法律の性格自体が
現在のようにかわってきた。『すべて』の食品に品質表示を義務付けるとした
1999年のJAS法改正は、食品行政の変化を示す象徴的な出来事でした」
と語るのは著者の吉田利宏さんである。

 吉田さんは、02年3月まで衆議院法制局に在職。農水省担当として、食品
に関するさまざまな法律や制度改正に関わってきた。そのため、本書では食品
行政を担当してきた行政組織の変化も見逃さない。

「もともと農林水産省や厚生省は消費者行政を担当していませんでした。当時
は総理府(現内閣府)の仕事とされてきたのです。それが、1970年代以降
の消費者運動の広がり、それに伴う保消費者保護基本法の制定などによって、
所管官庁として事業者対応のほかに、消費者行政を視野に入れざるをえなくな
ってきた。その後一連のBSE問題で、食に関する国民の関心が一挙に爆発し
たのではないでしょうか。政治・行政もその対応を強く迫られたのです」

 事実、このBSE騒動では、政治・行政の対応も当初は事業者救済から始ま
ったが、消費者の不安の声に押され、国民の関心に目を向けるようになった。
それを証明するように、03年5月には食品安全基本法を制定、同7月には内
閣府下に食品安全委員会を設立し、農水省は業界指導の部門と消費者保護部門
を分離するといった矢継ぎ早の対応策がとられた。

 同様に、消費者に身近なトレーサビリティ制度の普及や食品表示制度も変化
を余儀なくされるのである。その点は本書でぜひ確認していただきたい。

★自治体の役割は大きい★

 次に、市民生活に身近であるべき地方自治体の対応について著者に問うてみ
た。吉田さんが一例としてあげるのは、群馬県の『食品表示ハンドブック』作
成の試みである。

 群馬県が03年に『食品表示ハンドブック』を世に出したところ、自治体の
作成本では異例の5万6千部というベストセラーとなった。その後、全国の自
治体からも協力の声が上がり、新たにできあがった「全国版」は定価320円、
しかも多色刷で大型書店でも20位以内の大ベストセラーとなっているそうだ。

 群馬県は、食品安全基本条例をいち早く制定したところでもある。市民の声
に耳を傾けた自治体の試みが、全国組織に発展、各自治体と情報を共有するよ
うなしくみができ、その成果が日本中で広く支持された好例であろう。

 また、このほかにも、長野県は02年から原産地呼称管理制度を始め、まず
日本酒、ワインの認定からスタートした。「ワインを例にとると、長野県産の
ブドウだけを原料に使い、醸造過程のすべてが長野県で行われ、色調、香り、
味、バランスについて行われる官能検査をパスしたものだけが、認定を受けら
れる」というものだそうである。現在は焼酎などの認定も行われ、他自治体で
は北海道や佐賀県が同様の試みをスタートさせているという。

「JAS法上も食品衛生法上でも、自治体は主導権を発揮しにくいようにみえ
ます。しかしオリジナルな食品表示マークの活用などによって、自治体が『食』
に関する政策の主導権をとりうることは十分可能なのです。市民に近い自治体
という立場を活かしながら、自治体は市民の食に対する関心をバックアップで
きるのです」と、吉田さんは自治体の活躍に期待を寄せる。

 食育イベントや地産地消活動のほかにも、自治体の役割や取り組みの可能性
は今後増えることは間違いない。

★食品表示制度は消費者の手で育てよう★

 1968年、消費者保護について国の責任を明確にするために誕生した消費
者保護基本法は、04年6月に「消費者基本法」と改正された。法律名称から
「保護」という言葉が削除され、その結果「政府の消費者政策が『保護』から
『自立』を求めるものへと変化した」そうである。吉田さんはその点を「もは
や消費者は、保護されるものではなく、行政と対等なパートナー」となったと
本書で指摘する。

 消費者が食の安全を守るためには、例えばパブリックコメント制度で国に直
接モノを申す、あるいは02年から農水省が始めた「食品表示ウォッチャー」
になれば、日常の買い物のなかで不正表示を見つけ、それを報告する役目を果
たすことができるそうだ。

 ただ、「そこまでは……」という人も、ぜひ食品会社に直接問い合わせたり、
行政や企業のホームページなどで個別の疑問や知りたいことを明確にしてもら
いたいと、吉田さんは強調する。

 BSE問題が急浮上したとき、にわかに原産地表示が注目されたが、「消費
者が本当に知りたいのは安全かどうか、という点。原産地表示ばかりが取りざ
たされると、核心が不明確になるばかりではなく、行政もマスコミもそれに過
剰反応する恐れがある」とも指摘する。

「官が食品表示を周知徹底させるのはもう無理でしょう。むしろ、今後の健康
や安全に関する食品表示制度をよりわかりやすく進化・発展させていくのは消
費者の側です。そのためにも、食に関し、まずは知りたいことを整理し、実際
に問い合わせてみることが、最後には表示制度を自らの手でつくりあげること
につながるのです」
 吉田さんはこう締めくくった。

◎著者紹介
吉田利宏(よしだ・としひろ)1963年生まれ。早稲田大学法学部卒。87
年、衆議院法制局入局。15年間にわたり、BSE対策など数十に及ぶ法律案
の作成、修正に携わる。2002年退官。以後、早稲田大学エクステンション
センター講師などを務めながら、執筆活動を続けている。著書に『新食品表示
制度~改正JAS法~』(一橋出版)、『法律を読む技術、学ぶ技術』(ダイ
ヤモンド社)など。

◎関連サイト
■食品安全委員会(内閣府HP)
http://www.fsc.go.jp/
■食品の表示に関する情報提供(厚生労働省HP)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hyouji/
■『全国食品安全自治ネットワーク版 くらしに役立つ食品表示ハンドブック
の発行』について=PDFファイル(群馬県食品安全会議HP)
http://www.pref.gunma.jp/shokukaigi/02task/news/17_02_14_kisha_hand.pdf
■中央食品表示ウォッチャーの公募について(農林水産省HP)
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050408press_3.html

[会員の声]
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02:テロ対策の国へ「ようこそ」
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まさのあつこ Masano Atsuko ジャーナリスト

★吹き飛んだバケーション気分★

 1月、カナダのバンクーバーで開かれた林業業界の会議の取材に訪れた。往
復に同じ北米西海岸の米国ポートランドを経由すれば3万円(税金込みで約6
万円)で往復できる格安チケットが手に入ったからだ。ちょっとしたバケーシ
ョン気分。しかしそれが吹き飛んだのは、単にバンクーバーへの乗り継ぎをす
るだけなのに、いったんポートランドで入国、税関、出国手続きをやらなけれ
ばならなくなったときである。

 実はカナダからの復路は、乗り継ぎのいい便がなかったために、本当にポー
トランドに入国をして1泊することになっていた。夜着いて朝出るだけのこと
だが、馬鹿正直に、入国カードに泊まるつもりのユースホステルの住所を書い
ておいたのが間違いだった。入国担当官がそれに気づいて質問が始まった。

「ポートランドで何を?」「用事はバンクーバーにあって、帰りは便がないか
らポートランドで1泊するだけです」
「バンクーバーでは何を?」「会議に出席します」

 それで終わるだろうと思っていた。ところがそれでは終わらなかった。
「職業は?」「ジャーナリスト」
「所属は?」「フリーランス」

★入国担当官の口調が突如、尋問調に★

 この辺からおかしくなってきた。
「何の会議ですって?」「森に関する会議」
「森?」

 おおざっぱ過ぎたのかもしれない。「最後に米国に来たのはいつ?」と尋問
調になった。「いつだっけな」と思い出そうとすると、矢継ぎ早に質問が来る。
「バンクーバーに行くのにポートランドに降りるのはなぜ?」「安くて一番早
く帰る方法がそれだったから」
「旅程は?」「バンクーバーに3日、帰りにポートランドに1泊」
「会議で何を? ジャーナリストって何するの?」「え? 原稿を雑誌に……。
で、米国に最後に来たのはですね……」
「今のところ、バンクーバーの会議に行くことははっきりしたね。ジャーナリ
ストであることもはっきりした。それで?」

「はっきりした(させた)」という部分は英語では「You established」とい
う言葉で、まるで「その他のあなたの証言は信用できない」とでも言いたげな
口調である。
「だから最後に来たのはですね……。あー、思い出せない。私、そんなに怪し
く見える?」
「誰も怪しくなんか見えないよ。だから僕たちがいるのさ。あなたは日本人に
見えないし」「日本人だってば」
「お父さんもお母さんも日本人?」「いぇーす」
「日本で生まれた?」「いぇーす」

★「9.11」以降の米国を実感★

 ますます形勢が悪い。日本のパスポートを持ち、日本人の顔をしているのに、
これでは9.11以降、アラブ系の人がいかに苦労したか想像がつく。英国の
地下鉄爆破事件のあと、怪しかったからと射殺され、片付けられた事件があっ
たことを恐怖と共に思い出した。

「パスポート見りゃ、いつ来たかだって分かるでしょ」と反抗したいところを
抑え、こう言った。「ちょっと日本語で考えさせてよ」。それにも平然と「何
語でもいいよ。2カ月前? 半年前? それとも」と急かす担当官に、「ノー。
だから日本語で集中させてよ」と日本語で独り言を言い始め、記憶を辿ってや
っと思い出した。「最後に来たのは1998年。米国政府に招かれて情報自由
法の勉強に来たのよ」。

 やっと気が済んだか、左右の指紋、目紋(?)を撮られ、ようやくポンとス
タンプが押された。パスポートを受け取りながら、「たかが乗り換えがこんな
に難しかったっけ?」と憎まれ口を叩くと、「Welcome to the U.S.(米国へ
ようこそ)」とあちらも皮肉たっぷりにニヤリと笑った。8年来ない間に米国
は、「ようこそ」という言葉が皮肉になる国になってしまった。(了)

[取材メモから]
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03:人口減少と団塊世代
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★ジャパニーズドリーム★

 かつて北海道東部の酪農一家を取材したことがある。夫妻の出身地は本州の
西日本。広い土地を求めて北海道に移住したのだった。ようやく手に入れた土
地は傾斜がある荒れ地。牛舎につなぎっぱなしの酪農家が多い中、彼らは放牧
型の酪農でコストダウンを図り、高品質の牛乳を生産。農協などからも優良酪
農家と言われるまでになった。子どもたちはいずれも跡を継ぎたいという。い
わばジャパニーズドリームの体現者だ。

 彼らの満ち足りた表情は実に印象的だった。しかし過去を振り返れば、新天
地を求めて移住したものの挫折したケースのほうがはるかに多いだろう。

 そんなことを思い出したのは、人口減少に悩む地域で、いわゆる団塊の世代
をメインに据えた移住計画が始まっているからだ。

★人口減少社会の到来★

 2007年から定年を迎える団塊の世代。その数、約700万人。ある調査
によると、その1%にあたる7万人に田舎暮らし志向があるという。

 昨年末、総務省が05年10月1日現在の国勢調査速報を発表した。「1年
前の推計人口に比べ2万人の減少、我が国の人口は減少局面に入りつつあると
見られる」との結果は、大きな衝撃を与えた。

 都道府県別に見ると、東京都や神奈川県、沖縄県など15都府県で人口が増
加する一方、32道県で減少。これを2000年~05年の推移でみると、人
口増加率は東京都(4.2%)、神奈川県(3.5%)、沖縄県(3.2%)
の順。一方、人口減少率をみると、秋田県が3.7%と最も高く、次いで和歌
山県(3.2%)、青森県(2.6%)などとなっている。

 国全体では昨年から戦後初めて人口減少に転じたが、中でも和歌山県では1
995年の108万人から減少が続き、昨年は103万6000人。10年連
続の人口減少となっている。

★「緑の雇用」から「定年帰住」へ★

 和歌山県といえば、木村良樹知事が2001年に提唱した「緑の雇用」事業
が有名だ。人口流動・定住と森林環境整備を図り、さらには地域コミュニティ
の維持など“一石三鳥”にもなる取り組みとして国も予算化。和歌山県では、
すでに家族を含め500人以上が移住した。

 和歌山県では雇用からさらに一歩進め、「田舎暮らし」「定年帰住」をメイ
ンに据えたプロジェクトチームを昨年6月に設置。「和歌山」ならではの「新
たなライフスタイル(わかやま田舎暮らし)」を都市住民に提案し、新たな人
口流動を起こそうと意気込んでいる。

 同県では本格的な移住の前に、和歌山における田舎暮らしを疑似体験しても
らうことを重視。NPO法人「ふるさと回帰支援センター」などとタイアップ
して「和歌山ほんものの田舎体験プラン」を昨夏から実施している。05年度
は3つのメニューに、都市部から計27人が参加。うち3人は実際の移住に向
けて活動を始めているという。

 このような団塊の世代に焦点を当てた移住政策を行っているのは和歌山県だ
けではない。北海道や青森県、島根県などでも熱心。いずれも過疎・高齢化地
域を数多く抱えている県だ。近いうちに、団塊世代の争奪戦が激化するかもし
れない。

 現役世代ならば、職場の確保と子どもの教育が重要視されるが、リタイア後
の団塊の世代はそれらがネックとならない。すると何が決め手となるか。

 自然環境あるいは福祉・医療、地域の人々の受け入れ態勢だろうか。戦前か
ら戦後にかけての移住は、貧困が主たる要因だった。仮に7万人が田舎に移住
することになれば、これまで日本が経験しなかったタイプの大規模な人口流動
が実現することになる。そのことはもしかすると、日本人のライフスタイルを
も問い直すことになるかもしれない。(了)

◎関連サイト
■国勢調査(総務省HP)
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/youkei/index.htm
■新ふるさと推進課(和歌山県HP)
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071200/shinfuru/shinfuru.html

[おしらせ]
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04:ネット上のコミュニティづくりに最適化したサイトづくり
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樺嶋秀吉 Kabashima Hideyoshi ジャーナリスト

★叩き台の試作版が登場★

 ネット上で情報を発信する手段としてブログが流行っています。個人で活動
している分には不都合はないのでしょうが、グループでサイトを運営しようと
すると、ちょっと物足りなさを感じます。そこで、本文のタイトルにもあると
おり、ネット上でのコミュニティづくりに適したサイトづくりに挑戦してみよ
うと思います。

 じつは、当NPO法人コラボの今年度事業のひとつに「NPO・市民団体・
政治家のためのホームページ作成指導」があるのですが、そこまで仰々しくな
くても、とりあえずその叩き台となるようなものを模索して、まずまず納得の
できるものに仕上がった暁には(かつ、それを使ってみたいという要望があっ
たときには)、セミナーを開きたいと思います。

 その叩き台の、そのまた試作版を作ってみました。http://www.kenkin.com/
XOOPS Cube(ズープス キューブ)というコンテンツマネジメント・ソフトを
使っています。これを使えば、ホームページビルダーのようなHP作成専用ソ
フトは要りません。モジュールとよばれる機能部分(ブログをはじめとして予
定表、リンク集、掲示板など多数)とテーマと呼ばれるサイト全体のデザイン
をインストールだけで簡単に作ることができます。

 ただ、XOOPS Cube自体はフリーソフトなので利用に際して料金はかからない
のですが、インストールする先のサーバーがXOOPS Cubeに対応していないと動
きません。でも、XOOPS Cubeが利用可能なレンタルサーバーは月額千円程度で
すぐに見つかります。

★複数のメンバーが役割ごとにサイト運営★

 このソフトの特長はなんといっても、その豊富な機能を操作する権限をサイ
トにログインするユーザごとに細かく設定できることです。つまり、複数のメ
ンバーがそれぞれ異なる権限=役割(例えばブログ担当、スケジュール担当、
フォーラム担当など)をもってサイト運営に参加できるというわけです。どの
権限を誰に与えるかも自由に設定できます。

 また一般的なブログではコメント機能をオンかオフのどちらかしか選ぶこと
ができないので、不快な書き込みを避けるためにオフにしてしまい、せっかく
の双方向機能を生かしていない例もみられます。その点、XOOPS Cubeならば、
書き込みができる人を例えば「ユーザ登録した人だけ」というように絞り込む
ことができます。

 試作版ではとりあえず、スタッフ1(総括責任者)、スタッフ2(フォーラ
ム担当)、スタッフ3(スケジュール担当)、ボランティア、支援者、そして
サイトを運営する管理者の6種類設定してあります。管理者(樺嶋)を除く5
者のユーザ名とパスワードが出ていますので、実際にログインしてみて、どの
機能が使えるか(あるいは使えないか)を試してみてください。

 ちなみに、サイトのメニューの中にある「お知らせ」はブログ、「このまち
をこう変えたい」はフォーラム(掲示板)、「アンケートに協力して!」は投
票、「いろんな行事に参加しよう」はイベント案内、「こんな活動してます」
は写真アルバム、「スケジュール確認を!」は予定表の機能となっています。

 このような多種多様な機能を、まるでパズルのように組み合わせていくわけ
です。私もまだまだ1ユーザにすぎませんが、皆さんのメンバーの中にインタ
ーネットに少し詳しい人がいたら、すぐに利用することができます。

 なお、詳しいことはXOOPS Cubeの公式サイトをご覧ください。
http://jp.xoops.org/

[あとがき]
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05:あなたのまちの「県庁の星」は輝いているか
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 映画「県庁の星」を観ました。桂望実さんが書いた同名のベストセラーを映
画化したもので、織田裕二(エリート県庁マン)と柴咲コウ(織田の研修先で
ある三流スーパーのパートリーダー)が主人公です。映画のパンフレットに拙
文を寄せた関係で原作と脚本の両方を読んでいたのですが、やはり映像の力と
いうのはすごいと感心しました。

 というのは、原作のほうは登場人物の人間臭さを掘り下げていた(柴咲が演
じる役は原作ではじつは小太りの中年おばさんで、しかもバツイチ!)ので割
と楽しめたのですが、脚本は巨大箱ものプロジェクトに群がる県会議員、土建
業者というドロドロの地方政界をステロタイプ化し、そこに織田と柴咲のさわ
やかな恋愛をとってつけたような印象があり、読後「うーん」と唸って腕組み
してしまったからです。

 ところが、スクリーン映し出されてみると、役者の演技が情景、音楽とから
みあって、それはそれで結構リアリティーをもって迫ってきたのです。作品の
テーマである「心(意識)の改革」も、上昇志向の固まりだったエリート県庁
マンが挫折とスーパー再建を経て県民の視線を身につけるという、ありがちな
ストーリー展開でしたがストンと胸に落ち、絵に描いたようなダメ店長が査察
に来た消防署員の前で消防法を暗唱して危機を乗り切る場面では思わず目頭ジ
ーンでした。

 映画では、エリート県庁マンの奮闘でスーパーは大きく変貌を遂げましたが、
県庁のほうは手強そうでした。それはそうです。現実に引き戻れば、県庁職員
の意識改革に取り組んだ知事は数多いますが、成功例はほとんどないと言って
いいほど難しい課題だからです。生活者起点をモットーに意識改革に取り組ん
だ、あの三重県の北川正恭前知事でさえ、在任中に変えることができた職員の
割合は半分といわれます。職員との間に深刻な溝を作ってしまった長野県のよ
うな例もあります。

 県庁や市町村の役所に、織田が扮した「野村聡」のような行政マンが果たし
て何人いるでしょうか。住民の幸福度は、その人数で決まる――そんな思いが
映画を見終えて強まりました。(了)
(樺嶋)

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発行  特定非営利活動法人(NPO法人)コラボ
発行人 樺嶋秀吉(NPO法人コラボ代表理事)
サイト http://www.npo-collabo.org/ (購読の申し込みもこちらから)
連絡先 info@npo-collabo.org
〒343-0011 埼玉県越谷市大字増林5797番地
「コラボ」はNPO法人コラボのニューズレターです
本誌に掲載された記事を許可なく転載することを禁じます
Copyright (c) 2003-2006 NPO法人コラボ All rights reserved.
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= コラボ

コラボ vol.32

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コラボ vol.32                   2006-4-01
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目次
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[インタビュー書評]
01:主張する本――『入札改革――談合社会を変える』
                          宮川純一(編集者)
[寄稿]
02:公益法人制度改革……スロバキア編
            茶野順子(笹川平和財団・笹川中欧基金室長代行)
[取材メモから]
03:コミュニティの維持と行政効率          千葉茂明(編集者)

[協働を模索する条例・政策の研究――第6回]
04:岡山県国際貢献活動の推進に関する条例
         櫻沢靖子(早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程)
[編集後記]
05:「二重人格者」宣言
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[インタビュー書評]
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01:主張する本――『入札改革――談合社会を変える』
             (武藤博巳著/岩波新書/2003年12月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★談合が行政の形を変えた★

 ライブドア問題が日本中を席巻していた1月末、東京地検特捜部の強制捜査
によって、防衛施設庁とスーパーゼネコンの官製談合が発覚した。この官製談
合発覚後、額賀防衛庁長官は2007年度における防衛施設庁解体を表明。談
合事件の摘発が、一行政庁を解体に追い込む事態に発展したのである。

 談合事件は後を絶たない。最近でも橋梁談合、成田空港官製談合、新潟県官
製談合事件などが報道で大きく取り上げられたが、全国紙では取り上げられな
い自治体の談合事件などは枚挙に暇がない。それに比例して、報道に接する側
の国民はもはや驚きすら感じなくなっている節がある。

 偽装、偽計、談合が騒がれる今、ここで取り上げたいのが本書である。著者
である法政大学の武藤教授に、なぜ談合はなくならないのか、また談合を防ぐ
には何が必要かを問うた。

★談合自体はなくならないのか?★

 談合とはなにか。それを知るためには、まず入札制度を知らねばなるまい。
入札とは、国の場合では会計法、地方自治体の場合は地方自治法にその規定が
ある。地方自治法の規定を借りれば、(1)一般競争入札(2)指名競争入札
(3)随意契約(4)せり売り――という4つの方法によって契約を締結する
制度である。 

 本来は、一定の基準を満たせば、原則として誰もが参加できる「一般競争入
札」が基本とされている。しかし、現実の問題では、(2)と(3)の2種類
が多用されている。つまりは、自治体が指名した業者の中で競争をさせる「指
名競争入札」と、競争を行わず自治体が選んだ特定の相手と契約をする「随意
契約」が幅を利かせているのである(せり売りは口頭で価格調整をする方法で
あるが実際に使われることはないらしい)。

 しかも、公正な調達がされるべきところが、さまざまな民間業者と行政との
間で、あろうことか談合が「ばれにくく、やったほうが得」とばかりにまかり
とおっているのが現実のようである。その方法も実にさまざまだ。口利き、予
定価格の漏洩……。業者ばかりが悪者とは決していえない。行政と業者双方の
リスクヘッジとして、談合が“有効活用”されているおそれさえある。

 談合はなくならないのか。著者の武藤教授は答える。
「談合を世の中からすべてなくしていくのは不可能かもしれません。しかし、
橋梁談合や今回の防衛施設庁談合事件に見るように大手企業や役所が絡む“反
社会性の高い談合”はなくしていかないといけません。手続き、制度を変えて、
談合をなくすように努力していく必要があるのです」

★地方自治体における入札の現状★

 現在、談合を防止するために制定されている法律は、独占禁止法のほかに、
入札契約適正化法(00年成立)、官製談合防止法(02年成立)などがある。
しかし、現状は厳しい。

「実際の自治体の現場では、例えば建設部門でも、自分たちで適正価格、積算
ができず、業者が入っている状態です。そこで、昨年3月に公共工事の品質確
保に関する法律(品確法)が成立し、4月から施行されたのを機に都道府県の
レベルで市町村を支援する入札のコンサルティング的メカニズムを作ろうとし
ていますが、去年の8月にようやくガイドラインが国でつくられたというレベ
ルでいまだ機能しているとはいいがたい」という状態だ。 ましてや、「市町
村では、建築士資格の保持者が必ずいるわけではない」という、役所現場での
制約も大きい。

 さらに「今後注意すべきは、民営化・委託化の流れ」と武藤教授は懸念する。
「例えば、公立病院であれば薬、医薬品、メンテナンスの発注業務を民間企業
に一括発注する場合があります。そのときに、発注・納品業務を民間がするの
だから、談合にはならないと受け取られかねません。行政の責任が曖昧なまま
に民間に発注業務を委ねてしまえば、談合ではないという風潮が起こる危険性
もある」という警告だ。

★入札に市民が参加した鎌ヶ谷市★

 それでは、実際の自治体では、独自の工夫としてどのような試みがされてい
るのか。本書に掲載されている鎌ヶ谷市の例を紹介しよう。

 千葉県鎌ヶ谷市は02年に起こった市長・助役の贈収賄での逮捕という不祥
事を経て、入札・契約制度検討委員会を設置した。市議会も入札制度に関する
調査特別委員会を設置して、改革案を練ることになった。そこから出てきた改
善点の一例が「歩切り(ぶぎり)の廃止」である。これは、設計積算価格に一
定の割引率をかけて予定価格を算出するという業界の常識を不合理として廃止
したものだ。

 そのプロセスに市民を参加をさせた点が特長的である。学識経験者、建設業
協会代表、市職員のほかに公募した市民委員3人、市政モニター2人が参加し
て改革案をつくり上げたという。業界や制度になじみがない市民に対する事前
準備の苦労はあろうが、「役所の常識は世間の非常識。市民はそれが変だとい
う感覚がもてる。役所の常識が一部通用しなくなるように社会の常識が役所の
中に入っていくのが公募のメリット」と著者も評価する。

★官の意識を変えるには★

 しかし、それほどに役所・業界の常識・慣習は世間と隔絶しているのだろう
か。この点を武藤教授にあらためて聞いた。

「業者や役人にもはや意識改革はできません。できたとしても一定枠の中での
取繕いが関の山でしょう。仮に政治で行革をしようとしても役人は抵抗します」
と手厳しい。

「国にしても今の『官』のしくみは閉鎖的で、キャリア・ノンキャリアとも配
分された予算は自分たちのものという意識が強い。年金問題の例にしても、年
金財政が破綻寸前でも平然としています。この状況を放っておけばいつまでも
続くのです。これは政治の力、市民の常識、市民の感覚で監視していくしかな
いのです」

 どうやらこれが「官」の税に対する意識のようだ。入札制度にしても、国民
が目を覚まし、本当に必要なものは何かを見つめるほかにないようだ。

★進化・分権化する入札制度★

 本書では、これからの入札のあり方として、総合評価入札制度を詳解してい
る。いうなれば、単なる価格入札からの脱却なのだが、ここに談合防止のヒン
トがあるという。

 総合評価入札制度の導入は、1999年の地方自治法施行令改正で可能とな
った。それまでは「価格」のみで落札者を決めていたが、この制度により「価
格と価格以外の要素」を総合評価して落札者を決めることができるようになっ
た。そうなれば、価格以外の要素があったほうがむしろ談合はしにくいという
ことができる。

 ただし、武藤教授は、この方式をさらに発展させた政策入札の導入を提唱し
ている。つまり入札の評価基準に社会的価値を導入して、企業に社会的責任を
促し経済的誘導策とする発想である。そこで提唱するのが、(1)環境への配
慮(2)福祉(障害者雇用等)(3)男女共同参画(4)公正労働――の4つ
の要素である。

 武藤教授の話では、大阪府や岐阜県ではすでに実施されているし、最近でも
佐賀県で障害者雇用達成率を入札基準に入れて点数化することを知事が宣言し
たとのことである。ここでいう障害者雇用達成率は「障害者の雇用の促進等に
関する法律」に根拠があることから、客観的指標として取り入れやすい。すで
に決まっている法定雇用率を入札に持ち込むことに反発や苦労は少ないという
読みもある。「地元雇用」は地方の喫緊の課題であることはいうまでもない。

★社会的価値を追求するしくみづくり★

 また、札幌市では企業の除雪に対する貢献度を入札基準に入れるかどうかが
検討されているという。このような制度をつくるには、地域社会の中で地域に
貢献している業者を客観的に判断する合意形成や指標づくりが行政や議会の腕
の見せ所となる。

「私たちの社会は価格だけでものごとを決めているのではありません。『価格』
よりも『社会的価値とはなにか』を考えるようなしくみを、えらい人が決める
のではなく、みんなで考えるのです。そのプロセスをつくるのが地方自治です。
入札制度を考えることとは、社会的価値を追求するしくみづくりに他ならない
のです」と武藤教授は強調する。粉飾、偽装、偽計ばやりの今日、この主張は
きわめて貴重である。(了)

◎著者紹介
武藤博巳(むとう・ひろみ)
1950年群馬県高崎市に生まれる。法政大学法学部卒業、国際基督教大学大
学院行政学研究科博士課程修了。現在、法政大学法学部教授、学術博士。専攻
は行政学、地方自治、政策研究。著書に『イギリス道路行政史』(東京大学出
版会)、『政策形成・政策法務・政策評価』(編著、東京法令出版)、『分権
社会と協働』(編著、ぎょうせい)、『社会資本投資の費用・効果分析法』
(監修、東洋経済新報社)など多数。

◎関連サイト
■平成16年度における主な勧告事件(公正取引委員会HP)
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/05.september/050927.pdf
■防衛施設庁入札談合等に係る事案について(防衛施設庁HP)
http://www.dfaa.go.jp/topics/nyusatsu_bogai/tyousa.html
■鎌ヶ谷市入札・契約制度検討委員会(鎌ヶ谷市HP)
http://www.city.kamagaya.chiba.jp/sesaku/nyuusatsu/nyuusatsu-keiyaku.html
■入札談合の再発防止対策について(国土交通省HP)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/01/010729_3_.html

[寄稿]
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02:公益法人制度改革……スロバキア編
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茶野順子 Chano Junko 笹川平和財団・笹川中欧基金室長代行

★寄付への優遇制度を失ったことがスタート★

 2006年3月3日、スロバキアの首都ブラティスラバにおいて開催された
「公益法人に関する国際会議」で日本の公益法人制度について発表する機会を
得た。日本の公益法人改革の一連の動きについては、03年に公益法人協会が
「民間法税調」を立ち上げ、政府の組織した有識者会議に連動するスケジュー
ルで、新進気鋭の法学者を中心に民間の視点による公益法人改革への提言を行
った。筆者の所属する笹川平和財団が助成したもので、担当者として論議を傍
聴しているうちに英米以外のヨーロッパ諸国での公益法人制度に関心を抱くに
至った。

 この国際会議はスロバキア財団協会とオープンソサエティ財団の共催による。
なぜ、いま、公益法人制度なのか。これはエストニアに続いてスロバキアで成
立した所得税に関わる flat rate tax と深い関係がある。定率課税と訳すの
であろうが、文字どおり個人所得税と法人事業税に対し、所得の多寡に関わら
ず一定の率に当たる額を税金として徴収しようとするものである。

 19%を一律の税率とする制度が成立して2年が経過したが、税制の見直し
に際してすべての優遇制度が廃止された。それまでスロバキアでは個人、法人
による寄付金控除の制度があったが、他の優遇制度と同様に寄付への優遇制度
を失ったのである。

★パーセント法は資源獲得の有効なツール★

 一般的にスロバキアを含む中欧諸国(ポーランド、チェコ、ハンガリー、ス
ロバキア)では寄付文化は根付いていないといわれている。ただし、西側から
の援助(国、民間を含む)が激減してから、これらの国々の非営利セクターは
国内のリソースに目を転じつつあった。企業の社会貢献といった新しい言葉が
市民権を得つつあった矢先に寄付の優遇税制が廃止されたのであった。

 残された数少ない資金獲得の方策の一つが、02年にハンガリーについで成
立したパーセント法であった。同法によってスロバキアの個人納税者は、所得
税の2%相当額をみずからが選んだNPO等に使途を指定することが可能にな
っていた。定率課税が開始され、寄付の優遇税制が廃止された04年からは法
人もパーセント法による使途指定が可能となった。

 大多数の企業は、寄付を行うよりもパーセント法を利用して法人税の2%を
使途指定する途を選んだ。企業の場合、個人納税者と同様に受け取り先として
複数の団体を指定することができるだけではなく、業務委託のように、ある特
定の団体に企業が行ってほしい事業の実施を委託することも可能となった。

 実際には企業の持つ財団への寄付が多いようであるが、仮に非営利組織が委
託を請け負ったとして、委託金には恒常的な経費への支援が含まれていない。
個人納税者からの使途指定金が自由度の高い資金となるのに比べ、委託金のほ
うは、仕事は増えても組織は楽にならないのである。

★非営利セクターにとっては「公益性」が課題★

 このような状況の中で、スロバキアでの公益法人制度論議は非営利セクター
から始まった。つまり、優遇税制を再度勝ち取り、寄付へのインセンティブを
設けるための論理基盤として公益性を掲げたのである。ちなみに、中欧諸国の
うちハンガリーではパーセント法成立以前に、やはり非営利セクター側のイニ
シャティブで公益法人制度を設立させている。ただし、公益性の有無は使途指
定を受けるための資格要件になっていない。

 ポーランドでも公益法人制度が成立しているが、同国の場合、非営利法人に
対する一般的な優遇税制はすでに設けられていたため、一部の法律専門家にい
わせると「(公益法人格取得のための)インセンティブが少ない」ともいわれ
ている。それでも、地方政府からの助成金や補助金の受給資格が得られるほか、
政府機関でしか活用することのできなかったボランティアの受け入れが可能に
なる等の恩恵がある。

 一般的には公益法人制度は税制の優遇政策との結びつきの中で語られること
が多く、そのほかに説明責任のありかたや意思決定の仕組み等での取り扱いが
重層的な利点として加わってくる。スロバキアでも、税制のほかに非営利セク
ターの中での説明責任についての認識を高めることも公益論議の目的の一つで
あるといわれている。

★世界中で注目される「公益法人のあり方」★

 冒頭に述べた会議ではイギリス、オランダ、日本からの参加者が各国での公
益法人制度の実情について発表したほか、ハンガリー、ポーランドからの現状
報告を受け、さらに出席者が小グループに分かれて討議を行った。ウクライナ、
ロシア、ルーマニア等からの参加者もあり、10カ国以上、80人を超える会
議となった。

 日本に関わる発表については、(1)監督官庁と公益法人の癒着等によるス
キャンダルに端を発し、行政改革の枠組みの中で、政府主導のもとで公益法人
制度改革が始められたこと、(2)新しい制度のもとでは監督官庁制度がなく
なるほか、登記により簡便に設立できる準則主義による非営利法人制度が基本
であること、(3)ただし公益性の認定には別途審査を受ける必要があり、公
益性を認定されないと税制の優遇が無いこと――などを説明した。政府からの
独立性との兼ね合い等に結構な親近感を抱いてくれた人が多かったようである。

 他にも色々な発表があって面白かったが、オランダからの発表者が、同国で
は福祉国家のあり方を見直す過程において、政府機関のみならず営利セクター
や民間非営利セクターでの公益活動を認め、これら3者の相互補完的な活動を
新しい社会福祉国家の基盤とするとし、公益法人制度はこの新しい福祉国家観
を体現するものであることを強調していたのが一番印象的であった。

 日本の公益法人制度は、ようやく平成18年の通常国会において審議される
ことになる。これからの日本のあるべき姿を見据えたうえで、民による公益を
きちんと評価した議論が行われることを見守っていきたいと考える。(了)

※ちゃの・じゅんこ 一橋大学社会学部卒業。国際交流基金を経て、1995
年米国ペンシルバニア大学行政学修士号取得。フィラデルフィア財団のプログ
ラムアソシエートを務めた後、96年よりフォード財団。世界各地の新興財団
を援助する事業に従事した後、新理事長の下で財団編成に関わる業務および職
員研修事業に携わる。99年よりグラント・トークプロジェクトのディレクタ
ーとして、同財団の事業の中からとくに優れている、あるいは勉強の価値があ
る事業を選び、プログラムオフィサーら事業に関わった人たちへのインタビュ
ーを基に、事業の立ち上げから成功までの過程を再現するビデオやガイドブッ
クといった職員向けの教材を作成した。2003年10月より現職。

[取材メモから]
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03:コミュニティの維持と行政効率
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★失われた集落★

 和歌山県本宮町(現・田辺市)にかつて1週間ほど取材で訪れたことがある。
熊野本宮大社や大斎原(おおゆのはら=熊野本宮大社の旧社地)、熊野古道、
筏での木材運搬の話などいずれも興味深かったが、中でも強く印象に残ってい
るのは集落跡地だ。

 里から30分ほど山道を登った場所に、その集落跡はあった。といっても地
元の人の案内がなければ到底分からない。雑木が鬱蒼と茂り、昼なのに薄暗い。
苔むした道祖神、かろうじて判明できる石垣や水飲み場が往時を偲ばせるだけ
だった。

 訪ねた場所にはかつて小学校があり、周りに人家が数軒あったという。炭焼
き中心の集落だったが、石炭そして石油にエネルギー需要が変わっていく中、
集落から人が流出し、ついに昭和30年代に無人に。わずか30年間ほどで人々
で賑わったはずの集落はこれほど森と同化するものなのかと、軽いめまいのよ
うなものを覚えた。

★震災復旧・復興とコミュニティ★

 2005年10月23日、最大震度7を記録した新潟県中越大地震が発生し
た。1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では6400人以上が死亡し
たが、中越では59人(2月1日現在)にとどまっている。人口密集地と中山
間地という被災地の違いもあるが、コミュニティが維持されているか否かの違
いも大きかったようだ。

 被災後、阪神・淡路でコミュニティの崩壊、孤独死が問題となったことを教
訓に、新潟では避難所でも集落ごとにまとまるなどコミュニティの維持・再生
を災害復旧・復興の柱としている。

 県の調査によると今年1月15日現在、2421世帯がまだ避難所に暮らす。
そのうち2212世帯(91.4%)は何らかの形で再建の目途が立っている
が、209世帯は未決定。県では3度目の冬を迎える今年10月までに、全世
帯が再建のめどを立てられることを目標にしている。

 県ではコミュニティの維持・再生を重視しているが、直接支援するのは被災
市町村となる。壊滅的な被害を受けた旧山古志村では否応なく集団移転する世
帯がある。また、他の市では、元の集落に戻りたいと願う住民に対して、行政
側は平場と同じ支援しかしていない。

 雪深い集落は過疎・高齢化が進む一方で、手厚い支援がなければ事実上戻る
ことができない。それでも住み慣れた家に戻りたい住民、安全上あるいは行政
効率上からできれば平場に降りてもらいたい行政。安易にどちらが正しいと言
うつもりはない。だが、いずれ全国各地で顕在化していく課題であることだけ
は確かだろう。
         *
 日本の国土の7割を中山間地が占める。中山間地の集落が消えるとどうなる
のだろうか。山が荒れ、里や川も荒れるのか。それとも自然と同化し、その一
部となっていくのか。中山間地のコミュニティ問題は、日本人の精神性をも問
われているように思えてならない。(了)

◎関連サイト
■阪神・淡路大震災の復旧・復興の状況について(兵庫県HP)
http://web.pref.hyogo.jp/hukkou/jyoukyou/index.htm

■新潟県中越大震災に関する情報(新潟県HP)
http://bosai.pref.niigata.jp/content/jishin/jishin_1.html

[協働を模索する条例・政策の研究――第6回]
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04:岡山県国際貢献活動の推進に関する条例
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櫻沢靖子 Sakurazawa Yasuko 早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程

★「大使」と県民をつなぐ★

 今回の協働条例調査報告では、ちょっと趣向を変えて国際貢献についての条
例をみていきたい。そこで、岡山県の「岡山県国際貢献活動の推進に関する条
例」を取り上げ、国際貢献という観点から協働について考えていくこととする。

 まず、条例を制定する以前の主な県の活動からみてみよう。「おかやま国際
協力大使」という制度がある。これは2002年度から設置されたものだ。青
年海外協力隊などのJICAボランティア事業に参加する岡山県出身者を「大
使」に委嘱して、赴任国に岡山県を紹介してもらったり、県民からの支援物資
を活用して現地の人々との交流を図る一方で、県民に対しては赴任国での活動
報告を行なったりするというものである。

 彼らの赴任国を見ると、アジア・大洋州・中南米・ヨーロッパ・中近東・ア
フリカの計30カ国にのぼり、計46人が「大使」として各国に派遣されてい
った。

「大使」から要請があったときに、物資の支援をするのが県民の役割である。
「相手方に失礼のない程度の中古品がお手元にあれば、きれいに手入れを行っ
た上で、岡山県国際課まで提供」するよう県民の役割として支援物資の提供を
求めている。ここでの県の役割は「大使」と県民とをつなぐことにあるという。

★「進取の精神」が県の精神的支柱★

 02年7月には、明石康元国連事務次長を会長に、有森裕子さんなどを委員
とした「岡山発の国際貢献を考える会」が設置され、翌年3月に「21世紀初
頭における岡山県の取り組むべき国際貢献のあり方について」という報告書を
まとめている。

 ここでは、「なぜ岡山県が国際貢献に取り組むのか」という問いに対する答
えとして、国際的な医療ボランティア組織である「AMDA(アジア医師連絡
協議会)」をはじめとして県内で40を超えるNGOが国際貢献活動に取り組
んでいる実態をあげている。

 また一方では、県の風土として「共に助け合うという精神風土や進取の精神
がある」と謳い、県が輩出した歴史上の人物である吉備真備、宮本武蔵、緒方
洪庵らの名をあげて、彼らの「進取の精神」を自治体の精神的支柱としている。
とてもユニークな理由である。

 国際貢献のための手法としては、県内の大学のほか、国連、JICA、NG
Oといったグローバルで多元的な国際貢献プレーヤーとの連携を掲げており、
また、県民参加型の国際貢献のためには意識の向上が必要であり、その上で活
動を推進する仕組みをつくっていくとしている。

 そして、参加の受け皿としてNGO活動等支援グループ、国際貢献活動創出
グループ、国際貢献意識啓発グループの機能を併せ持った「おかやま国際貢献
推進協議会(仮称)」をつくるといった内容になっている。

★人材育成も含めた国際貢献活動★

 こうした報告書を受けて条例の素案が作成され、04年の2月議会で都道府
県レベルでは全国初となる「岡山県国際貢献活動の推進に関する条例案」が可
決された。

 この条例では国際貢献活動を大きく3つに分け、さらにそれぞれの活動に準
ずる活動、そしてそれぞれの活動を担う人材育成も国際貢献活動に含めている。
その3つに大別されたものとは、<1>技術支援活動(技術研修員の受け入れ
や指導員の派遣等)、<2>生活環境の整備や自立支援、<3>自然災害の被
災者等の救援を目的とするもの――である。

 そして基本原則として、「県、市町村、県民、事業者及び国際貢献組織が、
それぞれの責務又は役割について相互に理解し、及び対等な立場で協力するこ
とによる協働を旨として、行わなければならない」と「協働」を明確に謳って
いる。

 県が行なう基本的な施策については、(1)啓発活動、(2)国際貢献月間、
(3)教育や生涯学習の推進、(4)参加の機会の提供、(5)人材の育成、
(6)調査、研究及び情報の提供、(7)技術支援活動の推進、(8)救援物
資の備蓄、(9)非政府活動の支援、(10)財政上の措置、を挙げている。

★分権時代にふさわしい「地方政府」の活動★

 この条例が制定されてからちょうど2年になるが、どういった成果がみられ
るだろうか。得てしてこういった条例は理念として掲げられるに留まりがちで
あるが、県の行なうべき施策については具体的に条文化されていたこともあり、
上手く活きているようである。

 例えば、10月を国際貢献月間として、04年に第1回、05年に第2回の
「地球市民フェスタInおかやま」を開催している。第2回は中学生の募金活
動、高校生のインターンシップ報告会をはじめとして、多くの県民が参加して
いる。

 また、裾野を広げるための施策としては、国際貢献ボランティア活動入門講
座をホームページに掲載し、分かりやすく丁寧な解説を掲載している。また、
独特なものとしては、「9のつく日は救援物資の日」として県民に呼びかけて
救援物資の備蓄を行なっており、イラン大地震、スマトラ沖大地震、中国江西
省北部地震などの際には実際に救援物資を提供している。

 こうした岡山県の例は以前からあった国際貢献の素地を条例の制定により制
度化し、それによって広く県民に浸透させる契機にもなった好例であるといえ
る。地方分権の時代に生きる「地方政府」らしい活動のスタイルである。(了)

◎参考文献
小林章人著「お役所仕事から一歩前へ(88)県民協働による『国際貢献先進
県おかやま』づくりをめざして全国初の条例を制定」(『地方自治職員研修』
526号、66-68頁)

◎関連サイト
■岡山県
http://www.pref.okayama.jp/
■岡山県国際貢献活動の推進に関する条例
http://www.pref.okayama.jp/kikaku/kokusai/jyourei/jyo_page2.html#001
■国際貢献ボランティア活動入門講座
http://www.opief.or.jp/volunteer/

[編集後記]
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05:「二重人格者」宣言
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 先月の本欄で織田裕二主演の映画「県庁の星」を紹介しましたが、もうご覧
になったでしょうか。改革に目覚めた、織田演じるところの県庁マンが巨大ハ
コモノ事業を県民の目線から見直し「プランB」として提案、いったんは受け
入れたかに見えた知事でしたが、結局は県議会のボスと同じ穴の狢だった、と
いうお約束のオチです。「やっぱ、そんなもんだよね」と落胆させてくれます。
でも、県庁の豪華な職員用談話室(こんなの本当にあるの?)に置かれたエス
プレッソのコーヒーメーカーに注目です。劇中の最初のほうでは「県民の税金
で賄われています」と張り紙がされていただけなのに、最後のほうでは機械の
前の透明プラスチックボックスに百円玉がぎっしり。そうか、改革は小さなと
ころから進んでいくんだ、と妙に納得させられます。

 と、心ある公務員にエールを送りながら、じつはその一方で公務員の金銭感
覚をばっさり斬るような本をいま書いています。官民給与格差、職員互助組合、
特殊勤務手当、退職時特別昇給、天下り、公務員宿舎、技能労務職……。NP
O法人コラボのメンバーとしては住民本位の行政を応援しつつも、ジャーナリ
ストとしては批判すべきは批判するというスタンスです。少し前から、NPO
活動とジャーナリズムは相容れない部分があると感じ始めていたのですが、そ
の壁を乗り越えるためにも、たとえ「二重人格者」と言われようとも、NPO
では応援団、ジャーナリストとしては批判者であることに徹したいと思ってい
ます。

 コラボ、4年目の春です。

(樺嶋)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
発行  特定非営利活動法人(NPO法人)コラボ
発行人 樺嶋秀吉(NPO法人コラボ代表理事)
サイト http://www.npo-collabo.org/ (購読の申し込みもこちらから)
連絡先 info@npo-collabo.org
〒343-0011 埼玉県越谷市大字増林5797番地
「コラボ」はNPO法人コラボのニューズレターです
本誌に掲載された記事を許可なく転載することを禁じます
Copyright (c) 2003-2006 NPO法人コラボ All rights reserved.
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= コラボ

コラボ vol.33

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
コラボ vol.33                   2006-5-01
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

目次
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[インタビュー書評]
01:主張する本――『犯罪は「この場所」で起こる』
                          宮川純一(編集者)
[会員の声]
02:剣道をとおして見つけた「参加すること」の大切さ
              吉原祥子(国際海事大学連合事務局スタッフ)
[取材メモから]
03:選挙後に注目されるマニフェストを        千葉茂明(編集者)

[お知らせ]
04:ニューズレターの配信について
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01:主張する本――『犯罪は「この場所」で起こる』
             (小宮信夫著/光文社新書/2005年8月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★高まる防犯まちづくりへの期待★

 いま、「防犯まちづくり」がブームである。学校で、通学路で、防犯のため
のさまざまな試みが進行中である。地方・都市に関係なく、全国の自治体で安
全・安心まちづくり条例の制定が相次いでいる。

 安全・安心まちづくりは、「地域社会における都民、事業者及びボランティ
ア(中略)による犯罪の防止のための自主的な活動の推進並びに犯罪の防止に配
慮した環境の整備」(東京都安全・安心まちづくり条例第2条)がその理念で
ある。行政と住民が協働して、防犯のまちづくりをしようというのがその狙い
だ。

 このような社会情勢を背景に自治体、教育委員会、警察、青年・商工会議所、
児童館等々の講演に引っ張りだこなのが本書の著者、立正大学の小宮信夫教授
である。

★「原因」から「機会」へ★

 犯罪社会学の世界では、いま大きな流れが起きているという。本書の言葉を
借りると、従来の「犯罪者の人格や劣悪な環境(家庭・学校・会社など)に犯
罪の原因を求め、それを除去しようとする」原因論から、「どのような『場所』
が犯罪を引き起こすのか、また、物的環境(道路や建物、公園など)の設計や、
人的環境(団結心や縄張り意識、警戒心)の改善」を通して、犯罪者に都合の
悪い状況をつくり予防につなげるという機会論への変化である。

 欧米ではかなり普及している考え方のようだが、いったいどのようなものか、
その構造を見てみよう。

 第一に、犯罪をしにくい環境をどうつくるか。公園や学校、道路のような公
共空間の防犯環境設計とは何か。本書によると、物理的・心理的に「入りにく
い」とされている「領域性」、物理・心理的に「見えやすい」という「監視性」、
それとソフト面の恒常性、ハード面での管理意識からなる「抵抗性」の3点か
ら「場所」を捉えていくというもの。侵入者を排除するための柵によって、か
えって人の目の届かない死角が生まれる恐れがあるといえばわかりやすいだろ
う。安全・安心まちづくりの取り組みの中でも、このような防犯環境設計の標
準化がいよいよ始まろうとしている。

★安全マップづくりと参加★

 ハードの整備とともに平行して進めるべきソフトの課題についてはどうか。
 著者がさまざまな自治体で実際に取り組んでいるのが、学校主体の「地域安
全マップ」の作成である。全国画一のマニュアルを作るのではなく、各自治体
の校区や市街地で、わがまちの「安全マップ」をつくる試みがさかんだという。

「地域の弱点を地域住民が自ら見つけようという『コミュニティの再構築』、
そして何よりも子供たちがこの作成作業を通じて、自分で危険を感じとれるよ
うになるための訓練を兼ねているのです」と、その狙いを著者は語る。

 この作業に参加するのは決して子供ばかりではない。「今でも地域パトロール、
ワンワンパトロールなどに参加されているお年寄りも大勢います。このマップ
づくりの輪に、こういった参加の機会がなかったお年寄りや大人にも参加を呼
びかけることでそれぞれの意識も変わるのです」

 では、20代や30代の参加はどうだろうか。特に、「コミュニティ」のつ
ながりが希薄な街の課題であるが、この点については「難しい問題ですが、例
えば、小学校の地域マップづくりのアシスタントとして研修してもらい、いず
れはその他多くの学校に講師としてこの方法を広めてもらうなど参加の受け皿
はいくらでもある」と、青年層の参加に熱い期待を寄せる。

 このマップづくりはどんどんと進化を遂げているようだ。「地域安全マップ
作製指導員」(沖縄県)、「地域安全マップ掲示板」(青森県)、「マップづ
くりの社会教育講座」(目黒区)等々、さまざまに規模やかたちを変えながら
“分権型発展”をしているようである。

★ネットワークによる主体★

 さて、このような進化を可能にするのは、そのさまざまな主体に要因がある
といえよう。米国や英国を見ても、「犯罪から遠ざかるライフデザイン」に向
けたさまざまな政策プログラムが用意されているのだが、多彩な主体が活躍し
ている様子がうかがえる。

 例えば米国では、ボランティア活動の支援・推進を目的とした「アメリカ部
隊」、英国では地方自治体に課せられた非行少年の立ち直り支援の義務を果た
すための中核的組織として「犯罪及び秩序違反法」によって新設された「少年
犯罪チーム」の活躍がある。

「アメリカ部隊」には、研修を受けた17歳以上のメンバーが週20時間から
40時間のボランティア活動に従事しているという。メンバーは年間5万人に
上る。そのメンバーを受け入れる非営利組織は2000を上回り、フルタイム
就労のメンバーには、年間で約100万円ほどの生活手当が出るという。日本
では想像しにくいが、これも立派な非営利組織だという。

「少年犯罪チーム」は、関係機関の出向者、チームの新規雇用メンバーに加え、
「犯罪及び秩序違反法」が明示した警察や保護観察、児童福祉、保険、教育、
薬物防止、住宅供給などの多彩な分野の専門スタッフが加わりながら、非行少
年の立ち直り支援に従事しているという。

★コミュニティ再生へ★

 いずれの組織にしても、日本ではピンとこない組織であるが、犯罪機会を減
らすために必要な組織として存在感を示している。となれば、日本の自治体に
おける取り組みにも何が必要か見えてくるはずだ。

「日本においても、英国にみる『少年犯罪チーム』のような存在が不可欠です。
既存の行政組織の『タテワリ』は、地域の問題にとってはまったく迷惑なもの
で、その弊害すら起こしかねません。日本に『アメリカ部隊』のような組織は
ありませんが、こういう組織を作るためには、どうしても“有償”ボランティ
アに対する認識と理解が必要なのです」と著者は指摘する。

 他方、日本ではまだまだ「警察におまかせ」感は否めない。議会答弁を見て
も、警官増員や警察予算の増額に終始しているのが現状だ。それでも「防犯ま
ちづくり」のために、自治体や非営利組織も主人公なのだという認識が徐々に
広まりつつあるという。

 こうして「防犯」を突き詰めると、結局のところコミュニティの問題に突き
当たることを本書は明確にする。著者は「自治体には防犯の主体となる意識を、
NPOにはフットワークのよいコーディネーターの役割を」期待している。そ
して、議会には「議会が首長の意識を徹底化するくらいの意気込みがほしいと
ころ。予算の問題に終始せず、地域の『安全マップ』がどうなっているのか、
実物を見て質問するくらいにがんばっていただきたい」とエールを送る。

「コミュニティを強化していくと犯罪以外の問題、例えば子育て、介護といっ
たさまざまな問題が見えてきます。『自分の子をどう守ろうか』という視点か
ら『日本の社会をどうしよう』と考えるきっかけにしてほしい」というのが著
者の願いでもある。(了)

◎著者紹介
小宮信夫(こみや・のぶお)
中央大学法学部法律学科卒業。ケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科修了。法
務省、国連アジア極東犯罪防止研修所、法務総合研究所などを経て、立正大学
文学部社会学科教授(社会学博士)。専攻は犯罪社会学。現在、東京都「治安
対策専門家会議」委員、東京都「地域安全マップ専科」総合アドバイザー、広
島県「子どもの安全な環境づくりアドバイザー」、青森県「防犯環境設計アド
バイザー」、岡山県「犯罪のない安全・安心岡山県づくり検討委員会」顧問、
神奈川県市町村振興協会「海外調査研究アサインドテーマコース」コーディネ
ーター、大阪府市町村振興協会「住民生活における安全・安心政策研究会」指
導助言者、文部科学省「防犯教育及び学校の安全管理に関する調査研究協力者」
など。所属学会は、日本犯罪社会学会、日本社会病理学会、日本被害者学会、
警察政策学会、 日本社会学会、日本犯罪心理学会、イギリス犯罪学会。地域安
全マップの開発者として全国各地で技術指導に従事。

◎関連サイト
■小宮信夫の犯罪社会学の部屋
http://www.ris.ac.jp/komiya/
■新潟県安全・安心なまちづくりホームページ
http://www.pref.niigata.jp/seikatsukankyo/kenminseikatsu/bouhan/
■犯罪発生件数の分析<神奈川県・全国・横須賀市>(横須賀市HP)
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/anzen/hanzai_zenkoku.html
■地域安全アップをつくろう
(広島県子どもの犯罪被害防止対策プロジェクトチームHP)
http://www.pref.hiroshima.jp/cspt/topics/anmap/anmap01.htm

[会員の声]
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02:剣道をとおして見つけた「参加すること」の大切さ
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吉原祥子 Yoshihara Shoko 国際海事大学連合事務局スタッフ

★仲間と繋がることで暮らしの拠り所に★

 新年度が始まって2ヶ月あまり。近所の子どもたちも少しずつ新しい学年に
慣れてきたように見える。私は地元で剣道の稽古に通っており、そこで幼稚園
児から高校生まで近所のいろいろな子どもと会うが、彼らの成長の早さには日
日驚かされる。ついこの間まで華奢であんなにかわいかった子が、あっという
間にオッサンのようになっていたり……。そういうときは、嬉しいような悲し
いような複雑な気持ちになる。

 さまざまな人が集うこの会を取りまとめている先生夫婦は、ともにフルタイ
ムの仕事を持ちながら30年間、剣道を通じて地域の子どもを育て、親を育て
てきている。その先生が最近、お母さん方に言うのが「会はみんなで作ってい
くもの。月謝(2000円)を払えばあとは子どもを預けっぱなしでいいとい
うものではない」ということだ。

 以前のお母さん方と比べ、最近のお母さん方は、「なんでも子どもに教えて
ください」「ぜんぶ面倒を見てください」という姿勢の方が多く、自ら防具の
手入れ方法を覚えて子どもに教えたり、保護者間で協力しあって会の運営を手
伝っていこうという意識が希薄らしい。昔なら親分肌のお母さんが一人や二人
いて、その人たちを中心に、保護者のやることの具体的な中身や役割分担が古
株のお母さんから新しいお母さんへ代々受け継がれていたのが、最近ではそう
いう繋がりも途絶えがちだという。

 この話を聞いたとき、(私自身は“未婚、子なし”だが)我が身を振り返っ
て自分自身にもこのような参加意識がまったく欠落していたことに気づいた。
なるほど、自分の都合や自分が強くなることだけを考えていては、会(チーム)
としての結束や強さは生まれない。いつまでも「誰かがやってくれて当たり前」
という「お客さん意識」でいてはいけないんだ。以来、私も子どもの稽古の相
手や配布物の作成の手伝いなど、平日の夜や休日を利用して出来る範囲で参加
するようになったが、不思議なことに、そこから次第に会の仲間との繋がりが
生まれ、いまではそれが地域での自分の日々の暮らしを支えてくれるかけがえ
のない拠り所となっている。

★地域の中でできることはたくさんある★

 子どもたちの剣道やサッカー、野球チームなど、地域に根ざした活動は、塾
などと違い、保護者や参加者一人ひとりが会やチームの運営に協力することな
くしては維持・発展できない。逆にいうと、誰にでも出来ることはなにかある。
参加の余地がある。

 これをもう少し広げて考えて見ると、地域住民として自分の足元から一人ひ
とりができることは、気づいていないだけで、案外いろいろあるのかもしれな
い。例えば、子どもが安心して遊べ、若者が外へ出ていくことを恐れない地域
を作ること。税金を投入する前に、自分たちで地域の中でできることはいろい
ろあるんじゃないか。おまけに、そこから得られる、仕事とはまったく違った
種類の手ごたえや学び、生活実感は想像以上に大きいかもしれない。

 安全・安心面から見ても、独身者や一人暮らしのお年寄りなど、単身世帯数
がかつてない勢いで増加している今、地域での繋がりが個々人に与える意味は、
これまで以上に重要になるだろう。一方で、子どものいる家庭は学校行事や習
い事を通じて地域に参加していく道が多くあるが(または、関わっていかざる
を得ないが)、単身者には参加のきっかけをつかむことが難しいことも事実で
あり、この点は工夫が必要だ。

 地域の住民として自分になにができるのか。今はまだ子どもたちを眺めなが
ら漠然と考えているだけだが、いずれ自分なりの参加の仕方を見つけたいと思
っている。(了)

*よしはら・しょうこ 1971年生まれ。東京外国語大学タイ語科卒業(途
中タイへ1年間留学)。米Institute of International Education バンコク
支部、東京財団研究推進部を経て、国際海事大学連合(IAMU)勤務。

[取材メモから]
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03:選挙後に注目されるマニフェストを
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★家に籠もる候補者★

「恵庭のような政治風土でできたのだから、全国どこでもできる」

 4月22日、都内で開かれたローカル・マニフェスト推進地方議員連盟の研
修会で講演した中島興世・北海道恵庭市長の言葉に多くの参加者がうなずいた。

 市議だった中島氏は昨年11月に行われた市長選に出馬、各種団体の支援を
受けた「有力者連合」の現職候補を破った。下馬評を覆し、当選した最大の要
因が、「子どもたちの問題こそ最重要の地域課題」としたマニフェストだった。

 立候補表明を行えば、支持を広げるために集会を開いたり、支援団体を回る
のが通例。だが、中島氏は「10日間家に籠もった」。家に籠もり、マニフェ
ストやチラシの作成に全精力を注いだのだ。

 中島氏のマニフェストは絵本仕立て。「読書コミュニティの充実」「炊き立
てのご飯を子どもたちに」「子どものための公募債」――。子どもたちの問題
に焦点を当て、市長に就任したら何を行うかが明確に伝わってくる。「財源や
期限はラフ。マニフェストにとって最も大事なのは事後検証が可能なことでは
ないか」と話す。

 中島氏のマニフェストは全国から引っ張りだこ。選挙後に、マニフェストを
5000部増刷したという。これまで選挙が終われば、忘れ去られるのが公約
(口約)の常だった。選挙後にこそ注目されるところにマニフェストの真髄が
あろう。

★首長の実行可能性は?★

 マニフェストは「政権公約」と訳されることが多い。議院内閣制の国政では
衆議院で過半数を押さえれば、その政策が実行可能であるためだが、日本では
まだマニフェストの歴史が浅く精度も低い。マニフェストの策定過程で政党内
の合意形成が十分になされていないため、昨年8月のような「郵政解散」が生
じてしまう。

 地方でも首長候補者がローカル・マニフェストを掲げて選挙に臨む例が増え
てきた。地方自治体は首長に予算提案権や執行権が付与されており、いわゆる
“大統領制”とも言われる。相対的に首長の権限が強く、議会は低いと言われ
るが果たしてそうなのだろうか。

 首長がいくら予算や条例をつくっても最終的には議会の議決が必要になるた
め、国政のように実行可能性が担保されているわけではない。

 また、予算編成権などがない地方議会議員にマニフェストは作成できないと
いう指摘が根強くあるが、それも再考の余地があるのではないだろうか。

★地方議員もマニフェストを★

 地方議会では現在、議員定数の12分の1の数があれば、議案を提案できる。
そして賛同者を過半数以上集めれば可決できる。可決した条例は議員提案のも
のでも市長名で公布され、執行部の職員は粛々と執行することが求められるは
ずだ。

 つまり、首長も議員も完全な形で政策の実行可能性が担保されているわけで
はない。中島氏が指摘するようにマニフェストを「事後検証可能な公約」とと
らえれば、議会の議員や会派もマニフェストを掲げて選挙に臨むことは可能だ
ろう。

 マニフェストは「気づきの道具だ」と、提唱者の北川正恭・早稲田大学大学
院教授(前三重県知事)は繰り返し訴えている。「議員にマニフェストは無理」
とハナから否定するのではなく、これを機に政策本位の議員が増えていけば、
日本の地方議会、そして自治体の将来にとって好ましい状況をもたらすのでは
ないだろうか。(了)

◎関連サイト
■北海道恵庭市・市長のページ
http://www.city.eniwa.hokkaido.jp/syokai/shichouhp/mayor.htm
■ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟
http://www.local-manifesto.jp/gikaigiin/

[お知らせ]
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04:ニューズレターの配信について
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 これまで、このニューズレターはNPO法人コラボの会員(正会員、賛助会
員、ニューズレター会員)とコラボの活動に協力してくださった方を対象にお
送りしてきましたが、次号以降はコラボの活動に関心のある方ならばどなたで
も購読できるようにいたします。

 具体的な方法は近日中にサイト( http://www.npo-collabo.org/ )で告知
いたしますので、ご友人・知人・活動仲間などへ周知いただけると幸いです。

 なお、現在、ニューズレターを受信されている方には、今後も送付を続けさ
せていただきますので、引き続きご愛読ください。
(樺嶋)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
発行  特定非営利活動法人(NPO法人)コラボ
発行人 樺嶋秀吉(NPO法人コラボ代表理事)
サイト http://www.npo-collabo.org/ (購読の申し込みもこちらから)
連絡先 info@npo-collabo.org
〒343-0011 埼玉県越谷市大字増林5797番地
「コラボ」はNPO法人コラボのニューズレターです
本誌に掲載された記事を許可なく転載することを禁じます
Copyright (c) 2003-2006 NPO法人コラボ All rights reserved.
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= コラボ

コラボ vol.34

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
コラボ vol.34                   2006-6-01
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
目次
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[協働を模索する条例・政策の研究――第7回]
●まちづくりと協働=石川県金沢市
         櫻沢靖子(早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程)
[インタビュー書評]
●主張する本――『特別会計への道案内――387兆円のカラクリ』
                          宮川純一(編集者)
[事務局より]
●NPO法人コラボの05年度事業報告
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[協働を模索する条例・政策の研究――第7回]
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●まちづくりと協働=石川県金沢市
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櫻沢靖子 Sakurazawa Yasuko 早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程

★古都保存法では対象外★

 本年度からは協働条例についての調査を発展させ、もっと幅広く自治という
ものについて実例をあげて考えていく。その1回目として金沢市を取り上げる。

 金沢市は400年以上もの歴史をもつ城下町として知られる。大規模な自然
災害や戦災にも遭うことがなかったため、歴史的な町並みが残る美しい都市で
ある。金沢市はこうした特徴を活かしたまちづくりについて、条例を中心とし
て様々な施策を積極的に展開している。

 1966年に「わが国固有の文化的資産として国民がひとしくその恵沢を享
受し、後代の国民に継承されるべき古都における歴史的風土を保存する」(第
1条)ために国や自治体が講ずべき特別の措置を定めることを規定した古都保
存法が制定されたが、この法律における古都の対象に金沢市が入らなかったこ
とがきっかけで68年に「伝統環境保存条例」が制定された。

 これは89年に「伝統環境の保存及び美しい景観の形成に関する条例」(景
観条例)となったが、金沢市ではこの「伝統環境保存条例」をはじめとして、
「屋外広告物条例」「こまちなみ保存条例」「歴史的文化資産である寺社等の
風景の保全に関する条例」「夜間景観の形成に関する条例」といった数々の条
例が制定されている。

 なかでも独特なのが「金沢市旧町名復活の推進に関する条例」である。最近
は市町村合併により、ひらがなやカタカナの自治体名称が増えてきたが、金沢
市では2004年にこの条例を制定し、「旧町名復活推進委員会」を設けて、
旧町名を復活させる取り組みを行っている。

 この条例のねらいは「旧町名の復活を推進することにより、地域における住
民相互の連帯意識の醸成及び住民によるまちづくりの活性化を図」るというも
のである。現在は「主計町(かずえまち)」「下石引町(しもいしびきまち)」
「飛梅町(とびうめちょう)」「木倉町(きぐらまち)」「柿木畠(かきのき
ばたけ)」「六枚町(ろくまいまち)」「並木町(なみきまち)」が復活して
いる。旧名を復活させるための支援として市は資金面での援助も行っている。

★たくさんの条例に特区までも★

 また、まちづくりに対する市と市民の取り組みは条例制定にとどまらない。
今年3月には構造改革特区として認定されている。特区の名称は「周辺環境に
調和した道路標識金沢特区」で、案内標識や警戒標識を標準よりも2分の1に
小さくし、自然や昔ながらの街並みと調和させたものにして「金沢らしさ」を
出していくという。こうした取り組みは観光と景観を大事にしてきた金沢なら
ではの政策といえよう。

 では、こういった「金沢らしさ」の推進に、市の条例では市民はどのように
参画することになっているのだろうか。「金沢市における市民参画によるまち
づくりの推進に関する条例」(市民参画条例)と「金沢市における市民参加及
び協働の推進に関する条例」(市民参加及び協働推進条例)といった一見同じ
ように見える条例もある。00年に制定された市民参画条例は「市街化区域に
おけるまちづくり」について定めたものであるのに対して、05年に制定され
た市民参加及び協働推進条例は前者よりも広範囲、いわば市政全般を対象とし
ている。 

 市民参加及び協働推進条例関連の一例として「金沢まちづくり市民研究機構」
を見てみよう。これは03年6月に設置され、金沢のあるべき姿について市民
が主体となって研究を進めていくというものである。金沢世界都市戦略・世界
の都市政策交流研究部門、「まちづくりの総合戦略」政策統合研究部門、内発
的発展・地域経済政策研究部門、「知識文化創造都市」・教育・健康・医療・
福祉の金沢モデル研究部門、「サスティナブル・金沢」環境戦略研究部門とい
うように5つの研究部門を設け、さらに研究テーマごとにグループに分かれて
研究活動を行い、その成果を発表し、市政に提言を行なう。

★お役所が出すぎの感も★

 また、「まちづくり協定」というものもある。これは、市街化区域を対象と
する市民参画条例と、市街化区域外を対象とする「金沢市における土地利用の
適正化に関する条例」の2つを総称した通称「金沢市まちづくり条例」で規定
されているもので、地域の住民が中心となってまちづくり計画を作成し、その
計画を実現するために住民の3分の2以上の同意を得て結ばれる協定のことで
ある。

 06年4月現在で17の協定が結ばれている。その一つ、東山ひがし地区で
は、国の伝統的建造物群保存地区に指定された「ひがし茶屋街」を含んでおり、
多くの観光客を目当てに次々と建つ新しい店が街並みを崩していくことを憂慮
して「まちづくり協定」が結ばれた。屋外広告物に制限を課し、茶屋街の風情
を感じさせるあんどん型の広告物を設置するように努めるといったことや屋外
の自動販売機の設置制限などが決められている。

 このように、金沢市では条例制定、特区申請、研究活動をとおして、「金沢
ならでは」の特徴を活かしたまちづくりが行われている。そして条例の数の多
さからもわかるように、市民との協働も含め、よりきめ細かい施策を行ってい
るようだ。しかし、こうした細かな条例によって、一方ではお役所らしさが前
面に出てしまい市民にとってわかりにくいものとなってしまっている感も否め
ない。せっかくの施策であるから、わかりやすく利用しやすく、また議会も巻
き込んで多元的な人々が協働できるような手段を講じることも必要となってく
るのではないだろうか。(了)

◎参考文献
■木谷弘司「市町村アカデミー・コーナー(204)条例を活用したまちづくり」
『判例地方自治』270号、119-122頁
■山出 保「『風格』と『活力』のあるまちに~金沢の改革と実践~」
『地方自治職員研修』525号、195-201頁

◎参考サイト
■金沢市のホームページ
http://www.city.kanazawa.ishikawa.jp/
■金沢市の構造改革特区(首相官邸HP)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kouhyou/060328/dai10/80toke.pdf

[インタビュー書評]
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●主張する本――『特別会計への道案内――387兆円のカラクリ』
             (松浦武志著/創芸出版/2004年11月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★特別会計とは何か★

 さる5月26日、小泉改革の総決算ともいわれる行政改革推進関連5法案が
成立した。このうちの代表格である通称・行革推進法案は「簡素で効率的な政
府を実現する」ために政策金融改革・独立行政法人の見直し・特別会計改革・
総人件費改革・国の資産及び債務に関する改革――などを謳い上げたプログラ
ム法であるが、ここに挙げられた特別会計は文字通り「特別」というだけあっ
て実に複雑で性質の悪い会計である。

「特別会計」とは何か。本書に引用されている東京新聞社説によると、「国が
特定の事業を行う場合、一般会計と別枠で設けた予算のことである。特別会計
は現在32(04年時・06年現在は31会計)あり、本年(04年)度の予
算額を単純に合計すると369兆円で、一般会計の4・5倍もある。一般会計
などからの繰り入れを除いた実質でも199兆円で、2.4倍」という莫大な
ものだそうである。

 例年、暮れになると新聞やテレビで大々的に報道されるのは一般会計。閣議
決定された予算案は省庁別に、あるいは給料、家賃、生活費といった項目ごと
に家計簿に見立てて使い道が明らかにされるので、おなじみだ。が、特別会計
は国会の議決があるものの、一般会計のように大々的に騒がれることも議論さ
れることもない。

 では、実際に特別会計を調べようと思うと、困ったことにまとまった資料が
ないのである。もちろん山のような白書やあちこちのホームページをみれば、
何らかの手がかりを見つけることは可能だが、省庁別に縦割りだったり、さま
ざまに重複していたりして、日本の特別会計の総体はどの程度で、一体どれだ
けの負債があるのか、その全体像がわかりにくい。とにかく厄介な代物なので
ある。 

★素人だから書ける★

 そこで本書の登場となる。本書はその複雑怪奇な特別会計をひとつにまとめ
た実務書型ハンドブックである。

「このテーマをまとめるにあたって、この際と思い、一年間仕事もしませんで
した」と言うのは著者の松浦武志氏である。第1回政策秘書試験に合格してか
ら、政策秘書として政治に携わってきた経歴の持ち主である。なぜ、特別会計
(特会)をテーマに執筆を思いたったのか。

「仕事柄、国会議員の事務所には山と詰まれた資料が届くのですが、特別会計
についてまともに調べようとしたら、とてもではないがその余裕は国会議員や
秘書にはありません。それを読み込むなんてムリです。仮に特別会計のことが
全部わかる学者がいたとしても、すべての特会を鳥瞰してみた本は一冊もあり
ません。専門家があえて書かないのであれば、素人である自分が書いてしまお
うと思いました」

 特別会計は全部で31に及ぶ。省庁別のあらゆる国会資料や予算書と格闘し、
また買い集めた資料も加えた分析と執筆に半年を費やし、計1年かけて刊行に
いたったという。

 それにしても、なぜこれまで誰もこのテーマに取り組まなかったのか、との
疑問が湧く。たしかに特会のうち特定分野に絞って書かれたものはある。しか
し、専門家はしっかりしたものを書こうとするために、結局は専門性の壁を越
えられなかったのではないかと著者は推測する。

 加えて、「特会自体がいい加減です。その成り立ちが大体いい加減なんです
から」ときっぱり。「衆議院の委員会で特別会計について議論をしようとして
も、まずその総体が見えないから議論の緯度・経度がわからない。せめて、深
みのある議論のきっかけになればと思い、本書には『道案内』と付けました」

★新たな発見の数々★

 それでは本を見てみよう。本書は、「第1章 特別会計のすがた」「第2章
 特別会計の問題あれこれ」「第3章 特別会計についての取り組み」「第4
章 特別会計総まくり」「第5章 特別会計なんていらない」という“木を見
て森も見れる”構造になっている。特に第4章は個々の特別会計について、そ
れぞれ04年度予算の執筆時におけるそれぞれ最新の予算書データ等を用いて
解説を加えている。

 この稿ではとても紹介し尽くせるものではないが、面白い発見を2つほど。
例えば、旧印刷局特別会計には、かつての財務省印刷局の所管に印刷局病院と
いうのが2つ存在したのだとある。そのひとつの小田原病院は採算性がよくな
いため「診療所に運営形態を変更した小田原健康管理センター」となったよう
だが、そもそもなぜ印刷局が病院を持たないといけないのだろうか。著者でな
くとも疑問を感じざるをえない

 さらに、特定国有財産整備特別会計だ。庁舎など国有財産の使用の効率化と
配置の適正化を図るための国有財産の取得、および処分に関する経理を行うも
のだそうだが、この会計は貸借対照表を持たないそうなのだ。減価償却を前提
とした「毎年度の特定国有財産の時価評価額がわからない」というのである。
笑止千万である。

 政府は国家公務員宿舎をはじめとする国有資産の売却を急いでいるが、これ
まで資産基準の計りようがなかったとしたら、国民から「贅沢」と言われよう
とも「ドンブリ勘定」と言われようとも、実はどうしようもなかったのかと妙
に納得してしまう。

 これらを著者に問うと、「誰も知らないでしょう」とニヤリ。特会1つひと
つの事業計画書を見ていると、このように「アレ?」と思うことがたびたびだ
という。

★独立行政法人化とガバナンス★

 特別会計のうち、郵政事業特別会計、郵便貯金特別会計、簡易生命保険特別
会計、造幣局特別会計、印刷局特別会計、国立学校特別会計については民営化、
独立行政法人化によって廃止されている。しかし、そこで新たに作られた独立
行政法人にも、今日の政治的な課題が見て取れると著者は指摘する。

「最近、相次いで設立されている独立行政法人(独法)化は果たして行革なの
でしょうか。昨年の郵政民営化にしても、郵政公社28万人削減といっても、
その人たちは依然として『国の出資100パーセント』の株式会社にいるので
す。郵便事業で食べている職員が今もいるわけですが、数字の上では公務員の
定数からは外れるわけです。極端な話、省庁を独立行政法人化してしまえば公
務員はその分減る仕組み。これならば、やり方次第でいくらでも数字は操れる
のです」

 本当の行政改革を問えば、「『人間がどれだけ減るのか、コストがいくら減
るのか』であり、コストが減らないものは本当の改革ではありません。安くな
るのかならないのか、次に、浮いたコストは国民のものであるからそれをどう
国民に還元するのか、独法化、民営化の目標はここにあります。この当然とも
いえる筋道がないとしたら、それは改革でもなんでもない」と手厳しい。

 今回の行革推進法では、独法の見直しとして「組織及び業務の在り方並びに
これに影響を及ぼす国の施策の在り方について併せて検討を行い」とあるが、
その先を行くように「独法が赤字を出したら、大臣が責任を負うべきです。ま
た株式を公開して、商法上の無限責任をつけるなど」の「独立行政法人のガバ
ナンス」が必要とも強調する。

★特別会計は“ネタの宝庫”★

 さて、この本は著者のライフワークともいえる労作であるが、そのモチベー
ションの根っこは「この会計のカラクリを解明する」ことにあるという。

「特別会計は質問や追及のネタの宝庫であり、本書はまさにココを突っ込めと
いう素材集です。これまでの財政学の教科書も特別会計は手薄、あるいは真剣
に扱おうとしてこなかった分野です。ある意味では、そのことに対する自分な
りの異議申し立てでもあります」と、あくまで特別会計へのこだわりを打ち明
ける。

 書店に対しては本書を政治・政治学の棚に置いてほしいというのが著者の密
かな願いであるが、タイトルゆえに会計学・財政学の棚にある場合も実に多い
という。書店による予想外の対応に戸惑いながらも、より多くの人々が特会の
姿を知り、本当に必要な改革とはなにかを検証してほしいという著者の想いは、
これからもさめることがないようである。(了)

◎著者紹介
松浦武志(まつうら・たけし)
1963年京都府生まれ。静岡県、奈良県で育ち、大阪府立生野高校、京都大
学法学部卒。93年の第1回政策秘書試験合格の後、衆参両院にて政策秘書と
して勤務。2003年11月、本書執筆のために退職。05年9月より河村た
かし衆議院議員の政策秘書。

◎関連サイト
■松浦武志HP
http://www.geocities.jp/fwkg2534/
■各特別会計の新たな特別会計財務書類の開示状況(財務省HP)
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseig150801.htm
■特別会計改革(経済財政諮問会議HP)
http://www.keizai-shimon.go.jp/explain/progress/specialaccount/index.html
■(自治体の)特別会計の予算(兵庫県HP)
http://web.pref.hyogo.jp/zaisei/tokuyosan.htm
■簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案
(行政改革推進事務局HP)
http://www.gyoukaku.go.jp/jimukyoku/060210kaikaku_suishin_b.pdf

[事務局より]
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●NPO法人コラボの05年度事業報告
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 NPO法人コラボの06年度通常総会が5月25日に開催され、05年度の
事業報告が了承されました。主な事業の成果は次の5点です(事業報告書より
抜粋)。

(1)啓発事業のうちのホームページ運営については、前年度に引き続いて会
の活動や機関誌(ニューズレター)の周知に大変役立った。

(2)啓発事業のうちのシンポジウム開催については、「永田町の外と内から
見た地方自治(仮)」をテーマにして、元首長の国会議員と元国会議員の首長
などによるシンポジウムを2006年9月の衆議院選挙後に行う予定だったが、
国会等のためパネリスト候補者との日程調整がつかず、次年度への継続となっ
た。なお、2005年3月に行ったシンポジウム「パーセント条例が問いかけ
るもの」で取り上げた千葉県市川市の「1%条例」について、当会代表理事が
2005年8月に鳥取市で開催された第19回自治体学会の分科会においてパ
ネリストとして報告を行った。

(3)啓発事業のうちの機関誌発行については、2005年度も引き続き毎月
1回、正会員、賛助会員、シンポジウム等の事業協力者などに対してニューズ
レター「コラボ」を配信した。住民と行政の協働などをテーマにしたインタビ
ュー、書評、小論、寄稿などを掲載し、読者からは好評を得ている。

(4)住民参加事業のホームページ作成支援については、市民活動グループや
政治家(候補者)向けにネットコミュニティづくりに適したモデルサイトを作
成し、2006年1月に公開した。

(5)政策提言事業のうちの調査・研究については、協働関係を促進する条例
(埼玉県、高知市、福岡県宗像市、山形県白鷹町、岡山県)の実態を調査・研
究し機関誌(ニューズレター)に発表した。

 また06年度の事業については、(1)のホームページ運営と(3)のニュ
ーズレター発行、(4)のモデルサイト提案は引き続き行い、(5)の調査・
研究はテーマを今後、協働関係に限定しないで自治体政策全般に広めることに
なりました。(2)のシンポ(「永田町の外と内から見た地方自治(仮)」)
は実施の方向で準備を進めますが、併せて他テーマによる少人数でのセミナー
を複数回開催する可能性も探ります。さらに、住民交流促進として各種住民運
動団体を調査・紹介する活動を始める予定です。
 06年度事業については、当ニューズレターやサイトにおいて随時お知らせ
しますので、興味のある方はご参加、ご協力ください。

代表理事・樺嶋秀吉

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発行  特定非営利活動法人(NPO法人)コラボ
発行人 樺嶋秀吉(NPO法人コラボ代表理事)
サイト http://www.npo-collabo.org/ (購読の申し込みもこちらから)
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〒343-0011 埼玉県越谷市大字増林5797番地
「コラボ」はNPO法人コラボのニューズレターです
本誌に掲載された記事を許可なく転載することを禁じます
Copyright (c) 2003-2006 NPO法人コラボ All rights reserved.
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= コラボ

コラボ vol.35

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コラボ vol.35                   2006-7-01
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目次
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[インタビュー書評]
●主張する本――『自治を担う議会改革―住民と歩む協働型議会の実現』
                          宮川純一(編集者)
[取材メモから]
●国の「専管事項」と自治体             千葉茂明(編集者)

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[インタビュー書評]
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●主張する本――『自治を担う議会改革―住民と歩む協働型議会の実現』
            (江藤俊昭著/イマジン出版/2006年4月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★地方自治法改正★

 6月18日、今年の通常国会は閉会した。今国会で行政改革関連法が成立し
たことは記憶に新しいが、その一方でめったに報道されないものの、地方自治
法が改正されたのはご存知だろうか。

 今回の改正では自治体の議会制度充実に向けて、(1)議会は、学識経験を
有する者等に専門的事項に係る調査をさせることができることとする、(2)
議長の臨時会の招集請求に関する規定を設ける、(3)議員の複数の常任委員
会への所属制限を廃止する、(4)委員会の議案提出権を認める――という制
度改正が盛り込まれている点に特徴がある。これも「規制緩和」の御多分に漏
れず、何かと制約の多い自治法の縛りを緩和して、地方議会を活性化するよう
にということだろう。

 しかしながら、一体どれだけの議会議員がこのことを知っているのだろうか。
自治法改正を常に意識している自治体職員が多数いる一方で、議会(議員)は
そんなことには全く関心がない(それどころではない)、というのが本当のと
ころであろう。そのような人のためにこそ、この本を紹介したい。

★議会が取り残されだした★

 議会改革へ向けた試みはこれまでも行われているにもかかわらず、その成果
を見い出すのは難しい。実際のところは、「地方分権といわれ、これまでさま
ざまに自治体改革が議論され、試行錯誤されてきましたが、そのほとんどは行
政(執行部門)の改革です。ニューパブリックマネジメント手法や住民参画の
推進も同様です。そして残されたのが議会ですが、議会改革の話はとかく定数
削減の話に落ち着いてしまう」と語るのは本書の著者、江藤教授である。

「地方議会もこれまで政策・監視能力を高めよう、議会事務局を考えよう、勉
強会をやろうと実際に試行錯誤してきました。ただし、ここで注意しないとい
けないのは、地方議会は『国政とは違う』ということ。住民の視点から議会の
あり方を考えた地方自治体独自の改革が必要なのです」と説く。

 住民自治の基本は「協働型議会」。それがサブタイトルに「住民と歩む」と
つけた理由であり、「住民自治の視点から考えると議会の役割はやはり大きい」
と議会にエールを送るべく本書を執筆したという。裏を返せば、住民不在の地
方議会への警鐘とも受け取れなくもない。

★協働型地方議会★

 それでは、協働型議会とはどのようなものであろうか。端的に著者の言葉を
借りると、協働型議会とは住民型参加を機軸とし、首長に対する「監視型議会」
と住民参加を促進する「アクティブ型議会」という両面を併せ持った議会のこ
とである。特にこの両側面は決して対立するものではないというのがポイント
である。とかく「議会軽視」とされがちな自治基本条例や住民投票も快く受け
入れる議会といえばわかりやすい。

 本書によると、市議会会議条例の制定(横須賀市議会)、出前議会(鹿児島
市議会)、地域で住民から意見を聞く議会報告会(鹿児島県本吉町議会)とい
った先進事例がその試みとして当てはまる。協働型議会のメリットについて、
著者は「『私は賛成なのだけれども他の議員が……』というのがこれまでの常
套句だが、住民懇談会等で住民との接点や交流が広がるほど、今までは隠れて
なあなあでやっていたことが出来にくくなる状況が生まれる。これまで以上に
説明責任が求められるのは必須であろう」と指摘する。

 また昨今流行のローカルマニフェストを考えるにあたっても、最初にすべて
の決め事をすることから、住民自治の視点でその後、常々修正を加えることに
力点がおかれるようになるという。

★議会を取り巻く環境を変えられるのか★

 では、この協働型議会の構築に向けて何が大切なのであろうか。

 全国画一型の発想に漬かっている例として、「いつも不思議だと思うのは、
市町村議会議員はなぜ全国議長会のバッチをつけるのでしょう。本来なら各自
治体の代表者なのだから、市町村章をつけるべきです」と著者は指摘する。

 また、時に住民が抱きがちな議会不要論に対しては、「議会は議論ができて
政策決定ができる唯一の合議体。議会の会派が策を練れば首長も出せる。その
構成メンバーに対して住民がリコールをすることもできるし、必要な時には住
民投票に諮ることもできる。条例制定についても住民参加が保証されている。
だからその仕掛け作りは議会の工夫次第でできるはず」とも。

 国会は代議制が徹底しているので、法案の審議は国民とは完全に切断され、
国民は法案のチェックもままならない。しかし、地方議会はそれが可能だ。こ
れは議会だけではなく知らぬふりを決め込む住民にとっても耳の痛い話ではな
かろうか。

★新しい地方議会★

 来年は統一地方選挙の年である。合併自治体において膨れ上がった議員定数
が正常化したり、議員定数の削減ブームに乗ってさらに定数が減る自治体もた
くさんあるだろう。

 議会に対するアゲンストはそれだけではない。地方議員の年金額が減少する
のは確実だ。議員歳費や政務調査費、費用弁償や首長の退職金を見る住民の目
もさらに厳しさを増していく。

 だからこそ、もっと多彩な協働型議会議員に登場してもらいたいとも思うの
だが、そのキーは著者のいうところ、「休日と夜間」にあるという。「休日と
夜間」をもっと活用すれば、サラリーマン、子育て中の女性も参加できる。事
実、全国で自治基本条例をつくる公募市民は毎週のように張り切って出てくる
のだそうだ。

★法の枠組みを変える★

 新しい議会をつくるには公選法の見直しも必要だ。代表をどう選ぶかという
選挙制度の規定自体を公選法に委ねてしまってよいのかという問題提起も生じ
る。

「選挙法自体縛りが強い法律。特に首長選では期間が短すぎると現職有利にな
る。騒音になるからと街宣車の選挙を自粛しようというところもあるが、する
とどうやって選挙運動をするのか。いまだ『選挙公報』を出してないところも
多い」と著者は疑問を投げかける。それならば、選挙制度の骨格は住民投票で
決める、あるいは条例に委ねるほうが実は議会にとってもお手盛りの制度には
ならないのではないか、といえなくもない。

 こういった先の先を行くという発想は、今の段階では「理想論」としてかた
づけられるのかもしれない。が、北海道栗山町はすでに「町民や団体との意見
交換のための議会主催による一般会議の設置」「重要な議案に対する議員の態
度(賛否)を公表」「年1回の議会報告会の開催を義務化」「 議員の質問に
対する町長や町職員の反問権の付与」等からなる議会基本条例を制定している。

 かつて意味さえ理解されていなかった住民投票が巻町ではじめて実施されて
以来、今では当たり前になっていることを考えると、議会自身による議会改革
への狼煙はすでに上がっているのだ、といえよう。とすれば、著者が言うよう
に、「これからの地方議会に必要な人材は、全体的な視点を持ちながら議論で
きる人、創造性が豊かな方」が協働型議会の担い手にふさわしいというのはう
なずける。

 地域ブランドが花開きつつある今日、地方議員像もそろそろ全国画一から脱
却すべき時だ。地域ビジョンをつくる気概に満ち、さらに既存の政治家像に染
まっていない人材にこそ、この本を読んでほしい。(了)

◎著者紹介
江藤俊昭(えとう・ としあき)
1956年東京都生まれ。中央大学大学院法学研究科博士後期課程満期退学。
現在、山梨学院大学法学部政治行政学科教授、博士(政治学、中央大学)。専
攻は地域政治論。第2次地方(町村)議会活性化研究会(全国町村議会議長会)、
都市行政問題研究会調査幹事会検討小委員会(全国市議会議長会)意見交換会、
第28次地方制度調査会専門小委員会意見交換会、全国市町村国際文化研修所、
およびいくつかの議会、行政そして住民主催の学習会などで参考人、講師とし
てかかわる。著書に『協働型議会の構想―ローカル・ガバナンス構築のための
一手法―』(信山社/2004年)、『自治体と地域住民の協働』(共著、ぎ
ょうせい/2005年)など多数。

◎関連サイト
■地方自治法の一部を改正する法律案の概要(総務省HP)
http://www.soumu.go.jp/menu_04/pdf/164_060307_01.pdf
■横須賀市議会会議条例(横須賀市HP)
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/reiki/honbun/ag20406131.html
■栗山町議会基本条例の制定(栗山町HP)
http://www.town.kuriyama.hokkaido.jp/parliament/g_kihon.html

[取材メモから]
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●国の「専管事項」と自治体
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★島根県の「竹島の日」条例★

 5月末に北海道、6月中旬に島根県を訪れた。この道県に共通する課題が領
土問題だ。北海道庁1階のロビーには北方領土問題を考えるコーナーがあり、
高橋はるみ知事が北方領土を訪れたり、元島民による査証なし渡航の様子など
がパネル展示されていた。

 一方の島根県。昨年2月の定例会で、議員提案による「竹島の日を定める条
例」が可決され、3月25日に公布・施行された。その後、韓国が猛反発し、
日韓関係悪化の一つのきっかけとなった。竹島(韓国名・独島)の領有権問題
とは別に考えさせられたのは、自治体がどこまで国の「専管事項」とされる領
域に口を挟めるかという点だった。

 国と地方の役割(事務)分担では、領土問題や通貨、外交・防衛などはもっ
ぱら国が担うとされる。しかし、直接影響を受けるのは自治体であり、そこに
住む住民だ。昨年10月末の在日米軍に関する日米中間合意からほぼ半年間に
わたって、沖縄県や山口県岩国市など基地を抱える自治体は反発してきたが、
住民の生命・財産を守ることを第一に考えれば当然の姿勢だろう。

★国会請願が採択★

 事実上、今通常国会の最終日だった6月16日、竹島・北方領土返還要求運
動島根県民会議が提出していた、「竹島の領土権の早期確立に関する請願」が
衆参両院本会議でそれぞれ賛成多数で採択された。島根県内の団体が5月末、
2万7000人余りの署名を添えて、初めて国会に対して行った請願だったが、
どれだけの国民が採択されたことを知っているのだろうか。

 地元紙の山陰中央新報ではもちろん大きく報じられたが、全国紙(東京版)
では読売新聞がいわゆるベタ記事で報じたものしか目に留まらなかった。韓国
との彼我の差を感じざるを得ない。

 請願では、「竹島の領土権確立のために国は外交努力によってこの問題を平
和的かつ早期に解決すること」などを求めている。

 条例にしても、請願にしても、国が率先して行動していれば、島根県及び県
民は行動しなかったかもしれない。一方で、6月に行われた日本と韓国の排他
的経済水域(EEZ)境界画定交渉における日本側の姿勢は、島根県側の主張
が後押ししたのではないかとも思ってしまう。

 今後、「地方公共団体」から「地方政府」を志向していくならば、国の専管
事項とされる領域にどこまで自治体が関与できるか、一定のルールづくりに向
けた議論をすべき時期を迎えているのではないだろうか。(了)

◎関連サイト
■島根県「竹島」に関するHP
http://www.pref.shimane.lg.jp/soumu/takesima/

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コラボ vol.36

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コラボ vol.36                   2006-8/9-01
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目次
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[協働を模索する条例・政策の研究――第8回]
●千葉県我孫子市の「提案型公共サービス民営化制度」
         櫻沢靖子(早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程)
[取材メモから]
●全国知事会議雑感                 千葉茂明(編集者)

[インタビュー書評]
●主張する本――『自治体も「倒産」する―小金井市・自主再建への道を探る』
                          宮川純一(編集者)

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[協働を模索する条例・政策の研究――第8回]
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●千葉県我孫子市の「提案型公共サービス民営化制度」
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櫻沢靖子 Sakurazawa Yasuko 早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程

★自治体版「市場化テスト」★

 我孫子市は茨城県取手市と隣接する人口13万3千人余り、人口密度は1平
方キロメートルあたり約3千人の都市である。我孫子市といえば、今回の主題
である「提案型公共サービス民営化制度」の実施で随分と話題となっているが、
それ以外にも様々な取り組みを行なっている。今回は、この我孫子市の政策を
概観することとする。

 まずは、前述の政策の前提となった「市場化テスト」について。市場化テス
トは今年7月に施行された「競争の導入による公共サービスの改革に関する法
律(公共サービス改革法)」によって本格的な導入への検討が始まったばかり
であるが、その趣旨は「民間にできることは民間に、という構造改革の本旨に
従い、官民競争入札や民間競争入札を活用し、より良質で低廉な公共サービス
を実現させよう」というものである。

 同法には、自治体におけるその内容がいくつか明記された。法定化された主
なものは「戸籍謄本や抄本の写しの交付」、「納税証明書の交付」、「住民票
の写しの交付」などといったもので、自治体の先行事例を明文化したものが中
心である。言い換えれば、法定化されていない事業こそ今後、自治体版らしい
創意工夫の目玉になるともいえよう。

「官民連携・官民競争」という共通点はあるものの、先に法定化された「指定
管理者制度」との大きな違いは、指定管理者制度は自治体が運営する公共施設
の管理・運営に対象が限られているが、市場化テストでは大部分の事業が対象
となるところにあり、PPPの目玉ともいえる手法としても大いに注目されて
いるものである。

★委託・民営化の募集対象は市の全事業★

 自治体では、大阪府、東京都足立区、杉並区なども導入に向け取り組んでい
る。大阪府は基幹的意思決定業務などを除いた事業を対象に06年度以降にお
ける導入を検討、足立区は「公共サービス改革等推進専門部会」の下に「市場
化テスト推進専門部会」を設置し検討を行なっている。また、杉並区では「市
場化提案制度」とし、区の事務事業を全て公表して民間からの提案を募集する
形で検討中であるという。

 それでは、我孫子市の事例を見てみよう。

我孫子市においては杉並区と似た形で、「提案型公共サービス民営化制度」
として、市が実施する全ての事業を対象に委託・民営化の提案を募集するとい
うものである。

 提案がなされたら、まず市の担当課が実施にあたっての問題点を検討する予
備審査があり、その後、市民、有識者そして市職員などで構成される提案審査
委員会の審査があり、そこで採否と事業者の選定方法が決定される。また、必
要に応じて公聴会が開催される。第1回目の募集は06年8月31日に締め切
りとなっており、来年1月には事業者が決定される予定である。

 この一連の制度が何をもたらすのか考えてみたい。まず(1)市民提案が施
策になるという期待感が、市民に対して市政の当事者意識を与える、(2)市
民が自治体の業務に対して民間にできる余地があるかどうかチェックすること
で、行政には緊張感がもたらされる。同時に(3)効率・コストといったこれ
までの官業では見過ごされやすい視点が官民に共有される、(4)民間の活力
が活きる――ことにあるといえよう。

★「新しい公共」づくりの試み★

 この試みが「官民共創」へと結びつくのかどうか、その成否が待たれるとこ
ろであるが、我孫子市ではそのような発想が別の政策にも共通して窺える。そ
の一例が、市民による条例案づくりを行政がサポートするしくみである。条例
の提案者は本市に住所を有する市民(外国人を含む)5人以上で構成され、当
該構成員に18歳以上の市民が5人以上いる団体である。事前に説明会や検討
会を開催して条例案の趣旨などを説明し、意見を聞く。市長は提案された条例
案について検討し、その結果を公表し、必要があると認められれば議会にかけ
る、というものである。

  また、「市民投票制度」も04年3月に作られた。これは投票が必要な時に
そのつど制定する(個別型)というものではなく、常設型と呼ばれるもので、
投票にかかる事案としては市の存立の基礎的条件に関する事項(合併など)、
市が実施する特定の重要施策に関する事項、そして市民全体に重大な影響を及
ぼす市政運営上の重要事項で直接市民に問う必要のあるもの、とされている。

 自治基本条例の制定も現在進行中である。「(仮称)我孫子市自治基本条例」
では、この条例を自治体運営の最高規範と明確に位置付け、この条例に沿って
その他の条例を制定、改正、廃止しなければならないと現在の段階では規定し
ている。

 我孫子市では、このように市民を主体とした様々な施策を行なっているが、
前述のように歳出を減らす試みだけではなく、どのように商業的にも街全体を
活性化させ、税収を増やしていくかという現実も大きな課題であろう。とはい
え、このような「新しい公共」づくりの試みが、今後どのように花開いていく
のか、今後の展開も大いに注目していきたい。(了)

◎関連サイト
■提案型公共サービス民営化制度(我孫子市HP)
http://www.city.abiko.chiba.jp/index.cfm/15,14273,142,html
■公共サービス改革法
http://www5.cao.go.jp/koukyo/houritsu/houritsu2.html
■大阪府市場化テストガイドライン(大阪府HP)
http://www.pref.osaka.jp/kikaku/sijohka/guidelinehonpenkakutei.pdf

[取材メモから]
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●全国知事会議雑感
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★寂しい回答★

 政府は7月21日、全国知事会など地方6団体が地方自治法に基づき12年
ぶりに提出した意見書への回答を閣議決定した。地方側が求めた「国と地方の
協議の場」の法制化や地方交付税に代わる「地方共有税」の創設などには触れ
ず、「骨太の方針2006」の「関係法令の一括した見直し等により、国と地
方の役割分担の見直しを進める」などの表現をそのまま引用するにとどまった。

 結果はある程度予想されていたが、あまりに寂しい内容。地方側は「協議す
る場の設置や地方共有税などについて触れられていないのは遺憾」とする声明
を発表したが、それに対する重要閣僚や自民党総裁候補のリアクションは伝わ
ってこない。

★消えた「闘う知事会」?★

 7月12、13の両日、島根県松江市で全国知事会議が開かれた。その内容
はある程度報道されているので、個人的な感想を記したい。

 会場に着くなり、キャッチフレーズがなくなったことに違和感を覚えた。一
昨年の新潟会議は「闘う知事会」、昨年の徳島会議は「進化する知事会」だっ
た。入り口付近に「地方と都市の連携と共生」と書かれた幟がひらめいていた
が、2日間の議論で認識が深められたという印象はない。

 東京都の石原慎太郎知事は昨年に続いて欠席した。都道府県で唯一の地方交
付税不交付団体である東京都を抜きにして、地方交付税の将来像を語れるのか
がそもそも疑問だ。ちなみに東京都の代理出席者は会議で一切発言しなかった。

★気になるのは「新型交付税」★

 総務省が検討している新型交付税。現在の地方交付税の複雑な算定基準を簡
素化し、面積と人口をベースにするという構想の話になると、「うちの県は過
疎・中山間地が多い」「離島が多い」「高齢化が進んでいる」、あげくは「海
岸線が長いことも考慮すべき」といった声が知事から相次いだ。

 それぞれの県が抱える事情は分かる。しかし、地方側が「地方共有税」を提
唱しているのならば、限られた財源の中で「都市」部の県を巻き込み、どのよ
うに配分するかの理論武装を深めることが先決なのではないか。国側から提起
された構想に乗った議論に終止する姿を見ていると、本当に「地方共有税」を
望んでいるのかさえ疑問に思えてきた。

 また、法定5税で賄いきれず、50兆円超にも膨らんでいる交付税特別会計の
赤字をどのようにするのかという視点が皆無に近いことも気になった。「国の
景気対策につきあわされたからだ」など地方側の言い分もあろうが、すべてが
国の責任というわけでもあるまい。

★「まだ足りない」★

 小泉首相が唱えてきた道路特定財源の一般財源化についても「うちの県の道
路整備はまだ不十分」「まだまだ特定財源は必要だ」――といったかつての陳
情合戦のような光景が繰り広げられた。個人的に、今回の知事会議で最も印象
に残ったのが「まだ足りない」というフレーズだった(改革派と称される知事
があえて発言しなかったように見えたのはまだ救いだが)。

 もちろん、道路が整備されるに越したことはないだろう。産業振興や救急対
応などで切迫していることも分かる。しかし、国も地方も財政が逼迫し、歳出
削減が大テーマになっている時、マスコミ注視の中で行うべき議論なのか疑問
が残った。

 今後の戦略として「国会議員の理解を得ること」が強調されたことも少々興
ざめしてしまった。一部の知事から「住民に対するPR戦略が必要」と提唱さ
れたが具体策が詰めきれたとは言い難い。県が責任を持つのは県民であり、県
民の支持の総和としての国民の地方分権に対する支持なくして、地方分権改革
は進展しないはず。北海道夕張市が財政再建団体となったことで自治体への不
信感は逆に増している。「ピンチ」を「チャンス」に変える絶好の機会だと思
うのだが――。(了)

◎関連サイト
■全国知事会HP
http://www.nga.gr.jp/

[インタビュー書評]
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●主張する本――『自治体も「倒産」する―小金井市・自主再建への道を探る』
               (加藤良重著/公人の友社/1999年刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★夕張市破綻と小金井市の自主再建★

 さる6月20日、夕張市破綻の報道が日本中を駆け巡った。渦中にある夕張
市民はもちろん、市職員も予想外のことに戸惑ったことと思われる。何しろ、
同市は前年度黒字決算、市職員の賞与も平均額75万円だったというのだから。

 翌日の東京新聞によると「今年3月末の負債は当座の資金不足をしのぐ金融
機関からの一時借入金が約290億円、地方債残高が130億円など540億
円になる。標準財政規模の10倍以上」あるにもかかわらず、「出納整理期間
の3月から5月の期間中に金融機関からの借り換えを行い、年度末の負債残高
をゼロにする『自転車操業』を繰り返し、借入金残高を増大させていた。単年
度決算は黒字だが『隠れ赤字』が膨らんだ」とのこと。

 現在、議論が進行中の破綻法制ともあいまって、同市の動向は市関係者のみ
ならず日本中から注目を集めている。

 前置きが長くなったが、今回紹介する本の舞台は東京都小金井市である。同
市は東京都の西部に位置する人口11万2千人(1998年当時は10万7千
人)の中堅都市。その市が99年、財政再建団体に転落スレスレの時期を迎え
たのだが、市民の支持のもと、市長・職員および議会の懸命の努力によって何
とか自主再建を果たした。

 どのようにして、自主再建をなしえたのか。当時、福祉保健部長として
再建の任にあたった著者・加藤良重氏のコメントとともに探ることとする。

★自主再建への軌跡★

 96年当時における小金井市の状況はどうだったのか、この本から概略を拾
い上げてみよう。

(1)自主財源の割合を計る財政力指数が1.039であり、かえって「1」
以上ゆえに普通交付税が受けられないという状況で、(2)一般財源における
経常経費の占める割合を示す経常収支比率が111.4パーセントという全国
自治体の中でも最悪の状況であったという。本来なら70~80パーセントが
望ましいというレベルを飛びぬけていたことがわかる。

 また、(3)一般財源の標準財政規模における公債費の割合を示す公債費比
率は11.1パーセントで、これまた理想的な指数10パーセントを超えてい
た。そして、(4)市税に占める人件費の割合がなんと58.0パーセントと
いう状況で、これに退職金の支払い(97年度で11億円)が覆い被さる状況
だったという。

 97年に誕生した新市長は、200人の職員削減を訴え当選した。すでに前
市長の時代から「行財政対策会議」が設置されていたことに加え、財団法人日
本都市センターによる行政診断を受けた結果、200人の人員削減のほかに、
民間委託の必要性があったという。ここから改革が始まるのだが、その状況下
で著者は何をしたのか。著者の言葉を借りよう。

「まず『聖域はない』を合い言葉に、当時私は部長職として、職員削減、民間
委託や敬老金廃止などに踏み込みました。特に、福祉作業所の民間委託や敬老
金廃止では、議会をはじめ様々な反発がありましたが、敬老金廃止は受給資格
者である方々全員に通知を出して乗りきりました。次に、福祉作業所について
直営から社会福祉法人への委託化を進めました。委託化については、行政診断
の指摘がきっかけであるのですが、その根底には利用者に喜ばれるサービスの
向上とコストの削減がありました」

★改革のポイント★

 とはいえ、そのための職員や組合への説得はまさに試練であり、正念場であ
ったという。著者は「政治・政党レベルと組合運動レベルでの議論」、さらに
「やせ馬のけりあい」「どうにかなる主義」と総括している。しかしながら、
成果も多いようだ。むしろ「実はこの正念場こそが生きた研修になるのです。
最近みなが口にするようになったNPMや政策財務の実践がこの一連の流れの
なかに凝縮されているのです」と真剣に語る。

 さらに、組織の結束力が試される時でもある。同市の場合は、財政再建を公
約に掲げた首長の意志と現場の危機意識がうまく合致したケースといえよう。
著者をはじめ管理職は、各職場に徹底して入り、「財政危機の現実とその協力」
を訴えたという。また、行財政改革を進めるにあたって「行財政改革市民会議」
を設置して、市長に必要な建議、助言を行うこととした。

★ツケをあとに残さない★

 苦労と努力の甲斐があって、99年度以降、小金井市は自主再建への道を切
り開いた。職員定数の削減、特勤手当の廃止等に伴う給与制度の適正化、さら
に委託化・非常勤化を進める一方で、歳入の確保のために受益者負担の原則も
試みたという。

 また、同年度の退職手当財源として、退職手当債の発行に踏み切ったという
(同年度のみ)。今国会では、退職手当のための起債が特例として可能になる
よう地方財政法が“静かに”改正されたが、著者はその危険性とその後に訪れ
る本当の怖さ懸念する。

「地方財政法が今国会で改正され、退職金のための地方債発行が認められ
ました。しかし、小金井市の手当債発行当時は、法的には整理退職のみに認め
られるという非常に厳しいもので、実際小金井市でもこの退職手当債をめぐっ
ては東京都・自治省と何度も交渉をしてきたのです。退職手当債のツケはじわ
じわとその後確実に公債費にはね返ります。仮に給与カットをしたとしても、
そのカット分ももとは納税者の税金です。そのツケは結局、納税者の負担とな
るのです」

 2007年問題に頭を抱える自治体にとって、今回の法改正は決して朗報で
はないのである。

★意識改革から行動改革へ★

 自治体を取り巻く経済情勢はますます厳しくなる一方だが、それでも著者は
自治体の「人材育成の確保」こそ大事だと強調する。

「これまでの自治体の仕事は制度に沿った実務中心型でしたが、これではマン
ネリ化とともに、『なぜ?』『どうして?』という発想がおろそかにされがち
です。自治体職員にはこれまでのような法に沿って正確に遂行するという能力
から、パブコメや情報収集にもとづいた政策づくりの能力が求められ時代とな
りました。そこで、現在は政策づくりの目的や必要性を第一に考える研修を行
っています。ここで必要なのは考え方の大転換です」

 それでも単なる研修だけでは越えられない壁――夕張市の例でいえば、変え
ないこと(現状維持)を良しとする役所の組織体質、あるいは異動があるまで
やり過ごそうという意識(問題先送り意識)――があるという。

 研修講師を務める著者は常に「意識改革から行動改革へ」を唱える。その言
葉の先には、「旧体質とぶつかる」勇気と、「行政は市民の信託行為」「税金
が政治・行政の裏づけ」という自治の原点を見つめ直してほしいという願いが
ある。(了)

◎著者紹介(かとう・よししげ)
明治大学法学部卒業後、東京都小金井市入職。福祉保健部長を最後に定年退職
し、今年3月まで東京都市町村職員研修所特別講師。現在、法政大学兼任講師、
拓殖大学非常勤講師、立川市行財政問題審議会委員などを務める。著書に『自
治体福祉政策』『「政策財務」の考え方』『政策法務の基礎』など。

◎関連サイト
■東京都小金井市HP
http://www.city.koganei.lg.jp/
■「財政再建団体ってなに」(大阪府交野市HP)
http://www.city.katano.osaka.jp/kakka/zaiken/70zaiseisaikenndanntai.htm
■「法の下での財政再建を決断しました」(北海道夕張市HP)
http://www.city.yubari.hokkaido.jp/cgi-bin/odb-get.exe?wit_template=AM020000
■「退職手当債発行について(4頁)」(総務省HP)
http://www.soumu.go.jp/iken/pdf/gaiyo_18.pdf

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《事務局より》
★NPO法人コラボのサイトがしばらく前より海外からのコメント・TBスパ
ムに悩まされています。無農薬農家が草取りをするように手作業で排除してき
ましたが、際限がありません。
 そこで、その対策として、「お知らせ」はユーザのみが閲覧できるようにし
ました。お手数ですが、「お知らせ」をご覧になりたい方はユーザ登録をお願
いします。登録方法はサイトのトップページに出ています。ご不便をおかけし
ますが、どうぞよろしくお願いします。
(「お知らせ」以外のメニューはこれまでどおり利用できます)

★8月は夏期休暇を取らせていただきます。今号は8/9月合併号とし、次号は
10月に発行する予定です。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
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コラボ vol.37

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コラボ vol.37                   2006-10-01
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目次
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[インタビュー書評]
■主張する本――『呆れる 議員特権――信じたくないホントの話』
                          宮川純一(編集者)
[会員の声]
■底光りする「プロ職員」に会いたい         安藤健司(編集者)

[取材メモから]
■「地方再生」と地方分権              千葉茂明(編集者)

[編集後記]
■後記のようなもの
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[インタビュー書評]
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■主張する本――『呆れる 議員特権――信じたくないホントの話』
           (阿部力也著/河出書房新社刊/2006年7月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★静かに進行する新議員会建設★

 約5年5ヶ月続いた小泉自民党政権がその役目を終え、9月26日、新たに
安倍政権が誕生した。これとほぼ時をおなじくして、国会周辺はもうひとつの
プロジェクトが進行しはじめた。その名は「衆議院新議員会館整備等事業」で
ある。

 2006年6月6日に開かれた衆議院決算行政監視委員会での答弁によると、
「本年8月中旬から仮施設の建設を開始し、その後は平成20年1月から新し
い議員会館の工事に着手し、平成22年6月にこれらが完成する予定。また、
駐車場、外構を含めた施設全体の完成は平成24年12月を予定して」いると
のこと。新議員会館の最終的な完成は、なんと平成24年という長丁場である。
この設計事業はPFI設計とはいえ、安倍新内閣の「歳出削減」への意気込み
を聞く限り、なんとも不釣合いな話である。

★文書通信交通滞在費、その実態★

 今もっとも脚光を浴びているのは、この新議員会館よりも現在建設中の衆議
院新議員宿舎だろう。すでに週刊誌やテレビでも取り上げられ、赤坂一等地の
「豪華億ション」としておなじみだ。

 だがしかし、これらは「氷山の一角」だと力説するのは、元国会議員秘書で
現在世田谷区議である阿部力也氏である。阿部氏は7月に『呆れる 議員特権』
を上梓した。この本を見れば、庶民には決して味わうことのない議員特権のす
べてがわかるという。

 ここに上げられた数ある議員特権の中でも、著者がもっとも問題視するのは
「文書通信交通滞在費」という代物。国会議員になった瞬間から、月額100
万円、しかも非課税ときている。この本の言葉を借りると、「まるで『議員雑
費』のような扱いで、毎月毎月、自動的に議員のフトコロに入るのだが、この
お金、使途報告の義務もなく、領収書の提出もいっさいいらない、自由に使う
ことのできるお金」なのだそうである。

 しかも、この「文書」「通信」という名目も怪しい。インターネット全盛と
なっても減るわけでもない。それに基本的には電話代も電気代も議員会館は無
料。「滞在費」といっても、議員会館の使用料が取られるわけでもない。「交
通」といったって、JRパスをはじめとする各種パスを使えば、私鉄も地下鉄
もバスも飛行機もタダ同然なのである。議員会館と議員宿舎を往復する送迎バ
スは常にガラガラというのは有名な話。これだけの好条件にもかかわらず、使
途報告も領収書も不要というのだ。結局はそれぞれ議員の良識に任せているの
が現実だという。

★ますます充実する「特権」の象徴★

 ハードの充実ぶりも目を見張るものがある。先に述べた新議員会館だが、そ
の規模たるや、すごい。この本によると、地上12階、地下5階、衆院は2棟、
参院は1棟である。各議員の個室の広さは、現状の約40平方メートルのおよ
そ2.5倍の100平方メートルの広さだという。総工費は約1400億円と
のこと。

 また来年2月に完成予定の衆議院新議員宿舎は、28階建て全300戸の高
層ビル。1戸当たりの広さは82平方メートルの3LDK。しかも最上階には、
議員専用のスカイラウンジ、地下には大駐車場、フィットネスクラブ、スポー
ツジムも完備だという。これだけの施設を使うのであれば家賃もさぞ高いのだ
ろうと思いたいところであるが、現在の議員宿舎の家賃が広さにも応じて1万
円から8万円ということから考えても、新築だからといって一緒に家賃が値上
がりするとは考えられない。また、この立派な宿舎の完成に伴い、現在使われ
ている青山議員宿舎、高輪議員宿舎は廃止されるのだそうだ。

 国民の財産ともいえる学校や橋などの社会インフラが老朽化し、立て替え、
修復の必要が生じている。しかし、地方自治体もその予算がなかなか確保でき
ないのが現状だ。それに比べて、首都東京の「議員特権」の象徴がいち早く新
築というのはお寒い話である。

★元議員秘書は知っている★

 さて、ここで思い起こすのは、今年5月に成立した行革推進法の存在である。
この法律の謳うところ、政府は公務員宿舎売却など政府資産・債務改革を進め、
今後10年間で国の資産のGDP比を半減すると明記しているが、この中で国
会の自主努力については一言も触れられていない。「隗よりはじめよ」とでも
言うべきか、国会によって率先して襟を正すのは無理なのだろうか。

 著者はこの本で、「『議員バッチ』は権威の象徴じゃなくて責任の証」であ
るべきと指摘し、数多くの国会議員が抱える「特権意識」にメスを入れるべき
だと強調する。そのためにも、「国民の人々に議員特権の本当の実態を知って
ほしいと思い、すべてディスクローズするためにこの本を書きました」と語る。

 月65万円の立法事務費が使い放題である現状、議員が自分に寄付をするウ
ルトラ節税術……挙げたらきりがないほどの「特権」の現実を議員秘書として
目撃してきただけに、「一般の人の中には、議員歳費=生活費だと思っている
人も決して少なくありません。本当に力のある人は金も人望も集まってくる。
つまらない議員に特権を与えることはありません」と手厳しい。

★自治体議会からの問いかけと市民の選択★

 票も資金も個人が足を使って集める区議という立場からみれば、国会には改
善の余地がくさるほどあるという。先の文書通信交通滞在費、立法事務費など
税金によってまかなわれている費用は、当区の政調費の扱いのように領収書を
保管して使途を明確にすべき。また、ワールドカップサッカーの試合に国会議
員が無料招待されるといった意味不明の特権は言語道断だと、キッパリ。

 では、その「当たり前」に思う意識を根本から変えるにはどうしたらよいの
か。「究極のところ、地方議会の議員が原則ボランティアということになれば、
様々な職業の人が議会にやりがいを見つけて登場してくるはずです。そうなれ
ば、国会議員の特権意識も変わらざるを得ないでしょう」と、地方議会から国
政を変える可能性を著者は指摘するが、そのためには議員と市民の意識の垣根
がなくなることが前提であることはいうまでもない。

「政治に関心がある人もない人も、この本を読めば国会議員がいかに特権に恵
まれているのかがわかるはずです。有権者は、実際の投票をするにあたって、
候補者がこの特権にふさわしい人物なのか、その点をよくよく考えてほしいと
思います」。阿部氏はこう締めくくった。(了)

◎著者紹介(あべ・りきや)
1963年福島県生まれ。明治大学法学部卒業。世田谷区議会議員。1986
年、亀岡高夫衆議院議員の秘書となり、政治世界に第一歩を踏みだす。その後、
小沢一郎衆議院議員の秘書を務め、国会並びに国会議員、政党などについて細
部にわたり見識を深める。99年、東京・世田谷区議会議員選挙に民主党より
立候補し当選。現在、2期目。区議会では、会派「民主党・生活者ネット・社
民党世田谷区民連合」の幹事長を務める。あわせて東京電力グループの東京不
動産(株)総務部に在籍。

◎関連サイト
■阿部力也氏HP
http://www.aberikiya.jp/pc/
■衆議院新議員会館整備等事業(国交省HP)
http://www.mlit.go.jp/gobuild/pfi/singiin_shu/singiin_shu.htm
■新赤坂議員宿舎備品リスト(衆議院HP)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/osirase/pfi/bihin.pdf/$File/bihin.pdf#search=%22%E8%AD%B0%E5%93%A1%E5%AE%BF%E8%88%8E%22
■国会議員の三つの特権(松山大学 田村教授HP)
http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/kokkaiokenngenn.htm#kokkaiginnnotokkenn

[会員の声]
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■底光りする「プロ職員」に会いたい
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安藤健司 Ando Kenji 編集者

 どんな分野にせよ、その道のプロフェショナルに直接会って体験談を聞くの
は楽しい。「えーっ、そんな苦労があったのか」「今後は何をやりたいのか」
などと聞いたりすると、単純なお調子者だからかも知れないが、自分までそん
な気になって、つい嬉しくなってしまう。仕事で自治体を訪問したり、自治体
職員が集まる会合に参加したときなどは、問題を共有し、議論をし、解決への
きっかけをつかんで帰途につく人々の顔を見ていて、そのモチベーションの高
さやプロ根性に敬服したりもする。

 自治体は多種多様な事業を行っていて、そこでは法律家、技師、建築士、シ
ステムエンジニア、保健師、ケースワーカー、清掃作業員等々……様々なプロ
が業務に取り組んでいる。日々問題が起こるであろうし、仮にそうでなくても、
各事務のスキルを高めていくことはプロとして当然のことである。

 あまり多人数ではないが、仕事やテーマ探しでいろいろな分野の人々に会っ
てきた。だが、まだまだ足りないと思う。今まで会ってきたのは、政策テーマ
が単行本発行といった商売の目的に合う人達が中心であった(もちろん、そん
な人たちの中には、大変魅力的で仕事以外でも懇意にしてもらっている人もい
る)。これからは、自分の人間力を高めるためにも、誰もが認める「プロ職員」
に会って、正味な話をどしどし聞き、そしてこのニューズレターの読者の皆さ
んにもお伝えしたいと考えている。

 私が特に会いたいと思っているのは、自治体内では決して華やかな職場では
ないが、住民と真摯に向き合い、社会の全てが善意から成り立っているわけで
はないことを身を持って経験し、「個人」と「公務」と「社会」の結びつきを
自らの言葉で語れる職員だ。道路建設の合意形成、徴収事務、生活保護現場、
環境対策など、底光りのする輝きを放ち続ける野鍛冶のような人物が必ずいる
はずだ。

「安定した収入を得ることができ、退職手当も厚く、しかも業務時間が一定で、
余暇を満喫できる」という夢のような公務員職場メリットが瓦解しつつある。
財政悪化によって破綻する自治体の出現、総人件費改革、退職手当制度の見直
し、公務員不祥事などへの住民からの厳しい目、社会福祉関連費用の膨張、人
口減少、そして、格差社会の果てに国全体のナショナルミニマムの見直しが迫
られようとしている。自治体職員を取り巻く現状は厳しいが、そんなことさえ
も「微笑み返し」で受け止めるような職員に会いたいものだ。
(了)

<ひとこと自己紹介>
安藤と申します。とぼけた編集者です。趣味は飲酒と歴史全般です。

[取材メモから]
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■「地方再生」と地方分権
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★地方再生のかけ声★

 9月20日の自民党総裁選で圧勝した安倍晋三氏が26日、衆参両院の本会
議で第90代首相に選出された。自民党総裁選では地方ブロック大会が開かれ、
候補の3氏とも地方再生を強調、安倍氏は3年以内に道州制に目途をつけると
いう注目すべき発言も行った。

 ちょうどその頃、ある首長にインタビューする機会があった。ブロック大会
での発言の感想を尋ねたところ、「地方で開いたから地方再生を言う。でも東
京じゃ話していないからね」と半信半疑だった。景気が回復基調にあるとはい
え、都道府県で地方交付税不交付団体は東京と復活した愛知のみ。大都市を除
けば、閉塞感が漂っているように思えてならない。

 竹中平蔵前総務相の“置きみやげ”である新型交付税や再生型破綻法制、地
方債の発行自由化など地方にとっては不安材料が山積み。本来、地方側にとっ
ては攻め手であるべき新・地方分権一括法の存在が相対的にかすんでみえる。

 9月15日に開催された21世紀臨調主催の討論会では、候補の3氏とも同
法の必要性には言及したものの、臨時国会での成立では難しいという認識を示
した。地方再生とはいうものの、要は来夏の参院選をにらんで公共事業を増や
すことがメインなのかといううがった見方もある。目先にニンジンをぶら下げ
られ、国のありようを左右する地方分権の政策優先度が高くないとしたら、こ
れほど地方がなめられた話はないだろう。

★「地方再生」と失敗する自由★

 しかし、いつから「地方再生」が当然の如く語られるようになったのだろう
か。自民党総裁選の候補者は、3氏とも小泉内閣の重要閣僚だった。そもそも
「再生」すべきということは、理想に比べて現状がよくないという認識がある
はずだが、その要因をつくった責任は誰にあると考えているのだろうか。そし
て、どのような姿を「地方再生」として描いているのだろうか。

 かつて田中角栄首相は「日本列島改造論」を、15年ほど前の竹下登首相は
「ふるさと創生論」を掲げた。いずれも都市と地方の格差を意識し、地方再生
を掲げたものだと見ることができる。

 地方再生は、政治テーマとして何十年周期で浮上するものかもしれない。し
かし、いまや新幹線や高速道路を次々に造ったり、市町村に1億円ずつばらま
くような財政的な余裕はない。さらに将来人口予測を見れば、多くの県が人口
減少社会に突入する。

 そうした中、現代版の地方再生の突破口となりうるのが地方分権の徹底では
ないだろうか。もちろん、分権を進めることで自治力を高め再生する地方もあ
るが、逆に再生が遠のく地方も出てくるだろう。しかし、「失敗する自由」さ
えないのが実情だ。

 新内閣には「地方再生」概念の再構築を期待したい。
(了)

[編集後記]
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■後記のようなもの
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 最後に「編集後記」を書いたのはいつだったかと思い、バックナンバーを見
てみたら、なんと半年前(4月号)でした。千葉、宮川、櫻沢のレギュラー陣
3氏が健筆をふるっているのをいいことに、ここのところ、本業や地域活動に
どっぷりと漬かりきっておりました。今回は、近況報告を兼ねて、最近感じた
ことを書いてみます。

 半年前の本欄のタイトルは、「『二重人格者』宣言」でした。その中で「N
PO法人コラボのメンバーとしては住民本位の行政を応援しつつも、ジャーナ
リストとしては批判すべきは批判する」と書きましたが、そのジャーナリスト
の肩書で、公務員の無責任な金銭感覚を指弾する本を5月に上梓しました。官
民給与格差、職員互助組合、特殊勤務手当、公務員宿舎、需要予測のいい加減
さなど様々な問題を取り上げたところ、「公務員バッシャー」と早合点したマ
スメディアからいくつか注文が舞い込み、民放のバラエティ番組にまで引っ張
り出される始末です(このことは『地方自治職員研修』10月号の巻頭言に書
いてます)。

 役所と役人を叩いていれば、とりあえず視聴者や読者を掴めると安易に思い
込んでいる節が、一部マスメディアにはあります。しかし、少数とはいえ、公
務員の中にもミッション意識を持ちながら仕事をしている人もいます。そうい
う公務員をどうやって役所の中の多数派にしていくか。その答えのひとつが、
「叩くべきは叩き、応援すべきは応援する」ことなのですが、それを一人の人
間がやるのは、じつは容易ではありません。仕事ぶりは称賛に値する公務員で
も、給与や手当などの待遇面では十把一絡げで批判の対象となる場合があるか
らです。

 やはり、批判か応援かのどちらかに焦点を絞らざるを得ません。幸いなこと
に、本号に「会員の声」を寄稿した新メンバーの安藤健司氏が、これからプロ
意識に徹した公務員を発掘してくれそうな気配です。応援団の役回りを彼にや
ってもらうことで、私のほうは心おきなく「叩き屋」に徹することができそう
です。(笑)

 さて、この数か月における日常生活での大きな変化は、昨年末に引っ越した
先の団地で管理組合の副理事長になったことです。自治会と違って、居住者の
権利・義務関係を直接扱う管理組合には全世帯が加入しています。計280世
帯ですから、田舎の小さな村ぐらいの人口です。年間予算は数千万円、建物修
繕費用など各種会計の積立や繰越金は合わせて3億円。原則1年交替の理事が
12人で理事会を構成し、皆で協議しながら団地全般の運営をしているという
わけです。

 今年度最大の課題は、駐車場の増設です。各世帯に1台分が行きわたるよう
に、団地敷地内に駐車スペースを増やそうというわけです。そのためには、敷
地内に植えられた樹木を大量に伐採しなければならないのですが、今のままの
住環境を守りたい人たちは反対の声を上げます。全国どこにでもある、ダムや
道路建設など自然破壊型公共事業の構図と同じです。それでは、木を切らずに
駐車スペースを確保するため、現在の駐車場を多層化(2階建て)しようとす
れば、建設予定地付近の人たちが排ガスや景観悪化を心配します。迷惑施設を
押しつけるな、というわけです。

 たかが団地といっても、そこには地方行政の縮図のような世界があります。
人が生活している以上、奇麗事ばかりではありません。エゴもあればトラブル
もあります。駐車場増設問題も、最後は賛成・反対の数によって決まりますが、
その過程で少数者の声をどれだけ汲み取ることができるか。大きな声の反対者
に遠慮したばかりに、小さな声の、あるいは声にならない反対者が何倍も生ま
れることもあります。もちろん、多くの人の利益を図るために、一部の人に負
担を強いてはいけません。そんなことをあれこれ考える日々です。住民全員が
相応の利益を得て、それにふさわしい負担もするという解決策を目指したいと
思っていますが、なかなか難しそうです。

 あと、地域活動の関係では、4年前から通い続けている公民館の太極拳教室
でもこの夏、一大事が起きたのですが、それはまた今度、紹介します。
(続く)

樺嶋秀吉

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コラボ vol.38

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コラボ vol.38                   2006-11-01
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目次
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[協働を模索する条例・政策の研究――第9回]
■市民自治への試み――北海道札幌市
         櫻沢靖子(早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程)
[会員の声]
■自分の周りの「地域自治」から始めよう  打越紀子(元埼玉県吹上町議)

[インタビュー書評]
■主張する本――『「地域猫」のすすめ―ノラ猫と上手につきあう方法』
                          宮川純一(編集者)
[取材メモから]
■地域政策は誰がつくるのか             千葉茂明(編集者)

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[協働を模索する条例・政策の研究――第9回]
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■市民自治への試み――北海道札幌市
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櫻沢靖子 Sakurazawa Yasuko 早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程

★2段階で設けられた市民委員会★

 10月に札幌市において「札幌市自治基本条例」が制定され、また「(仮称)
札幌市市民活動促進条例」が制定に向け準備が進められている。近年こうした
類の条例は珍しいものではなくなったが、ここ札幌市では制定過程においてさ
まざまな工夫がなされていることから今回取り上げることとした。

 ここ最近の傾向として、ほとんどの自治体で住民参加の方法が取られている
が、ここ札幌も例外ではない。ただし、札幌市の自治基本条例の制定に際して
は2段階で市民委員会が設けられている点が特長である。まず、03年12月
から04年5月まで市民自治を考える市民会議「市民参加、こうありたい!」
委員会が設置された。これは、市民がまちづくりの主役となるための望ましい
あり方や仕組みについて議論をする場となり、市民自治推進プランの策定や自
治基本条例の検討につながる提言書を提出した。

 この委員会では公募委員の選考も工夫されている。委員は指名委員(有識者)
と公募委員各8名の計16名から成る。公募委員になるためには第一次選考で
「私の考える市民参加」という提言文を中心に選抜され、第二次選考は「公募
委員をみんなで選ぶ会」が開催されて、そこで問題意識の高さ、建設的な考え、
意欲や対話能力などを総合的に審査されたという。実際の公募人数はというと、
39人。札幌市の総務局理事、行政部調査担当部長や有識者ら、いわば行政の
プロよる面接を受け、そしてスピーチと質疑応答の試験をクリアした8人が選
ばれた。このメンバーらで約10回にわたり会議が開かれたのである。

 そして、こうした委員会を前身として市民自治を進める市民会議「自治のル
ール、みんなでつくろう!」委員会が設置され、21回にわたり自治基本条例
制定に向けた作業を行い、05年12月に提言書を提出してその役目を終えた。
こうして3年近い期間を経て、その成果が条例誕生へとつながったのである。

 この条例は、自治体の「まちづくりの最高規範」と位置づけられ、総合計画
などまちづくりに関する計画や条例の制定改廃はこの条例と整合を図らなけれ
ばならないと定める一方で、5年を超えない期間ごとに見直しをする、と期間
まで明記したものとなっている。施行は来年4月だ。

★どうなる「1%支援制度」★

 また、「(仮称)札幌市市民活動促進条例」についてもふれてみたい。こち
らの条例も、有識者と公募委員で構成された札幌市市民活動促進条例検討協議
会が設置された。そこでも提言書をまとめているのだが、ここで注目したいの
が、「個人市民税の1%支援制度」である。提言書によると、市民活動の基盤
を支え持続的な発展のための資金の確保として「1%支援制度」「基金制度」
そして「寄附文化創造センターの創設」の3つを提案している。

 この1%支援制度は、同様の制度として千葉県市川市で導入されているので
おなじみだ。札幌市での提案も市川市と同様に、個人市民税の1%分を市民の
自由意志で市民活動の支援に充てようというもの。市川市では「市川市納税者
が選択する市民活動団体への支援に関する条例」で規定されており、2004
年12月の定例会で成立し、05年度から行われている。

 札幌市においてこの条例は現時点(10月23日)では条例の素案を提示し
てパブリックコメントを10月末に締め切ったばかりの段階であるが、1%支
援制度に変えて、市民活動促進基金を設置するという。一方、こうした行政側
の対応に対して、一部の市民団体などがこの1%支援制度を実現させるために
署名活動などを行っている。この制度については納税者が税金の使い道を自分
で決めることができるという利点がある一方、専業主婦など非納税者が参加で
きないという批判もあり、今後は市川市などの動向も併せて注目されるところ
である。

 この条例は今年度中に制定されることを目指しているという。今後の推移を
見守りたい。(了)

◎関連サイト
■札幌市
http://www.city.sapporo.jp/city/
■自治基本条例(札幌市HP)
http://www.city.sapporo.jp/shimin/jichi/kihon/
■(仮称)札幌市市民活動促進条例(札幌市HP)
http://www.city.sapporo.jp/shimin/support/jyourei.html
■1%指定制度を実現する会
http://www.npohokkaido.jp/tax1/index.html
■市川市市民(納税者)が選ぶ「市民活動団体支援制度」(市川市HP)
http://www.city.ichikawa.chiba.jp/net/siminsei/volunteer/nouzei.htm

[会員の声]
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■自分の周りの「地域自治」から始めよう
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打越紀子 Uchikoshi Noriko 元埼玉県吹上町議

 この春、住んでいるマンションの管理組合理事長になった。47戸のうち、
区分所有者である住人が順番に6人ずつ役員をする仕組みなので、役はいつか
回ってくる。それがちょうど、工事の必要な時期に当たるか、何もない年に当
たるか、という違いだけだ。築15年。幸いなことに、屋上防水工事も済ませ
たばかりで、今年ならラクそう。家にいる時間も長いし、前任者とも親しいし、
ということで引き受けた。

 仕事は、マンション共用部分の保守、点検に関する一切合切。水道ポンプの
補修が必要になったときは、数社から見積りを取り、理事会で業者を選定する。
「我がマンションにも防犯カメラをつけるべきではないか」との声があがれば、
その是非を総会にかける準備。近隣のペット禁止のマンションで次々に飼う人
が現れているとの情報を得ると、うちではどうする、とアンケート作成。玄関
前の植え込みが電線に触れていると指摘されれば、植木屋を手配。こうしてみ
ると、役所の仕事によく似ている。

 管理人はいるのだが、昼間だけ。したがって夜、廊下の電灯が消えていれば、
どこどこの蛍光灯を交換しろと管理人に指示。ごみ置き場に不法投棄のごみが
あれば、行って中身を確認し、場合によっては通報。天井から水が漏れている
が、階上のお宅が留守なのでどうしたら良いか、と言ってくる人もいれば、夜
中にガス警報機を鳴らしてしまったので止めてくれ、と言ってくる人もいる。
そうかと思えば、駐車場をうろついている男がいるとか、大雨でエレベーター
が動かなくなったとか、隣の家の木に蜂の巣ができたとか、子どもが玄関ホー
ルでサッカーをするのをやめさせろとか、まあ、いろんな声が届く。

 驚いたのは、春に白蟻の被害が出たこと。マンションに白蟻なんて……と思
っていたら、木部をずいぶんかじられていたようだ。あわてて庭の点検をする
と、数軒で白蟻がいる気配。ところが、庭だけの消毒は業者がやりたがらない。
マンション周り全体の大規模な予防は高額だ。DIY的にできる方法もあるが、
1階の全世帯が協力してくれるかどうか分からない。どうしようかと話し合っ
ているうちに、夏が過ぎ、秋を迎えてしまった。

 日頃、市役所に「仕事が遅い」と文句を言っているのに、いざ自分が対処す
る側になると「検討中」期間がどんどん長びく。言い訳はいろいろあるが、そ
れにしても我ながらじれったい。地方自治を云々する前に、自分の周りの地域
自治ができなくちゃね。今年度は民主主義の学校に入学したようなもの。任期
は一年。春にはどうか無事に卒業できますように。(了)

[インタビュー書評]
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■主張する本――『「地域猫」のすすめ―ノラ猫と上手につきあう方法』
                 (黒澤泰著/文芸社/05年11月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★猫の向こうに地域が見える★

 今月、環境省は捨て犬、捨て猫対策に関して、これまでの処分数を半減する
ことを表明した。04年度の引き取り数42万匹を今後10年で21万匹に減
らすことを明記した動物愛護管理基本指針をまとめたのである。

 捨て犬・猫の問題は、都市部に共通する地域の課題でもある。自治体の現場
では、動物の愛護及びその管理に関する法律の効果もむなしく、飼い主の事情
やわがままによって引き取られた犬・猫は近年50万から40万という数に上
る。そのうち、95パーセントが殺処分によって命を落としているという。

 そこで今回は「地域猫」を主題にした本書を紹介したい。これはもともと、
自治体の試みから始まった取り組みでもある。地域猫とは「ノラ猫を不妊去勢
手術の徹底、エサの管理、フンの清掃、周辺美化など地域のルールに基づいて
適切に管理し、ノラ猫の数を今以上に増やさないで一代限りの生をまっとうさ
せることで周辺住民の認知が得られた猫」のことである。つまり、地域が飼い
主になるという発想だ。この取り組みが、いまや全国区に広まりつつある。

★共存への道★

「この本を刊行してから、行政の担当者、地方議員、変わったところでは人間
関係学・哲学といった分野の学生からも問い合わせが来きます。卒論に『地域
猫』を取り上げるそうです」

 笑いながら語るのは本書の著者である黒澤さんだ。横浜市職員で獣医でもあ
り、この取り組みの発案者でもある。

 いまでこそ有名になった地域猫であるが、今日にいたるまでの道のりは長い。
地域猫を発想したのは、1995年、横浜市磯子保健所勤務のときに「ねこバ
ザー」を見に行ったのがキッカケだという。この「ねこバザー」とは、別に猫
を売るわけではない。バザーの収益で猫の不妊去勢手術費をまかない、そして
団地住民が猫の管理をするというものだ。このバザーをキッカケに猫との共存
を思いついたという。

「それまでは猫問題の対策も方法も全然ありませんでした。歯がゆかったし、
基準もありません。犬と違って、猫は登録制度も、つなぐ義務もありません。
ましてや捕まえることもできなかったのですから」と黒澤さんは述べる。

 ここから黒澤さんの行政マンとしての活動が始まる。まず、現場を歩くこと
からスタート。苦情者から声を集める結果、「猫の集中している場所が何ヶ所
かに集中していること」「地域全体とすれば、町内会長が怒鳴り込むほど深刻
に問題としてとらえているわけではないこと」がわかった。「ノラ猫マップ」
によって、それが証明されたのである。

 こうして関係者と苦情解決のポイントを探りながら、猫問題を解決する会合
をこなすなかで、「猫問題は地域の、地域に住む人々の問題」であることを確
信していった。

 黒澤さんは、これを行政の事業とするべく行動を起こす。96年秋に「磯子
区ホームレス猫防止対策事業」を再提案するが、ハードルは高い。それでも、
「一度ダメでもここからが本当のスタート」と粘り、97年度の事業化に漕ぎ
着けた。初年度予算は50万円であった。

★ニャンポジウムの開催★

「猫の飼育アンケート調査」を行った結果、磯子区では6万6千世帯のうちの
13パーセントの世帯で猫を飼っていたことがわかった。総数は1万5940
匹であった(97年5月時点)。

「区民の意見をきいてくれ」と区長に言われたことから、区内3ヶ所でシンポ
ジウム、その名も“ニャンポジウム”を開催することになる。コーディネータ
ーは動物園の園長、会場には猫好きと猫嫌悪派が集う。本人の言葉を借りよう。

「ニャンポジウムは、叩き台も筋書きもありません。擁護派、反対派ともに、
どんな人が来るかわかりませんから、担当者としてはハラハラでした。1回目、
2回目は双方の言い合いでした。ですが3回目は、お互いが半歩でも譲れる歩
み寄りの意見を出してもらって、『今以上に猫の数が増えないように不妊去勢
手術を徹底すること』『猫の世話をするからには周辺地域で最低限守られなく
てはならないある程度のルールを決めて、それに従って徹底すること』という
2点で結論が出たのです」

 2回目の撮影に来た民放テレビがセンセーショナルに報道したこともあって、
3回目にはこの事業に対する反対派、動物愛護団体、そして県外からも多数の
傍聴者がやって来るほどの反響があったという。それでも黒澤さんは「反対派
と擁護派双方が相手の意見を聞くことが何よりも重要だったと思います」と語
る。

 このシンポジウムを経て、99年に「磯子区猫の飼育ガイドライン」が完成
し、ここにひとつのルールが出来上がったのである。そしてその成果が磯子区
から西区へ、ついには他の自治体へと波及していくことになったのだ。

★行政のスタンス★

 この地域猫に関する主人公は、あくまで地域住民である。黒澤さんは、行政
よりも住民が動くことが何よりも大切だと言う。そのため、磯子区では99年
に猫の飼育ガイドライン推進協議会を立ち上げ、同時に地域猫実践グループを
育成することとなった。

「不妊去勢には補助金が必要だという声もありましたが、3年で成果を厳しく
問われますから、単にお金を出すだけではダメです。その事業が打ち切られる
のは容易に予想ができました。だから地域の協議会をつくってもらい、そこに
補助金を出すようにして『人を育てる』ようにしたのです」

 行政がすべてを抱え込むことは、マンパワーの問題、予算の面からもムリ。
地域の人が、地域の問題として対処してくれれば、行政もそのほうがよいに決
まっている。

 とはいえ、この取り組みは息が長い。子猫が生まれないようにして、長い年
月をかけて初めて成果が出る。そして、究極はこの協議会がなくなることが理
想でもあるという。

 あくまで黒子でいることが、行政、また黒澤さんのスタンスであるが、地方
議員の視察や講演の依頼はひっきりなしのようだ。時には「ほんとうに公務員
ですか」と言われることもあるそうだ。

★問題解決の要はコミュニケーション★

 最後に、黒澤さんに今後の課題を聞いてみた。横浜のような大都市の場合、
世帯数が多いとモデル地区を作ることも必要になるという。そして、増え続け
るマンション住民をどうやって取り組みに巻きこんでいくか、実際にはエサだ
けをあげているマンション住民も依然としている等々、課題はまだまだ尽きる
ことがないようだ。

 もっとも心配なのは、「この地区が捨て猫ポイントになること」だという。
そのためには、捨てさせない工夫を考えないといけない。認知度が高まれば、
今度は「地域猫」という言葉だけが独り歩きすることの心配もある。エサをあ
げることだけが強調され、肝心のルールが二の次にとなってしまう事態は絶対
に避けたい。そのためには、何をおいても地域のコミュニケーションが必要な
のだという。

「町内会に入らない人が増えていることも事実ですが、なによりコミュニケー
ションをとりながら住民同士がお互いを理解してほしいと思います。『ノラ猫
マップ』をつくることも、どれだけ猫がいるのか把握することで、いろいろな
人に関心を持たせる効果があるのです。猫好き、猫嫌いはそれぞれ2割程度。
あとの6割の人たちをこの取り組みに参加させることが大切なのです。コミュ
ニケーションがないところほど、役所への通報件数も多いのです」

「猫が住みやすいところは人間も住みやすい」という言葉には獣医としての願
いも窺える。「地域猫」は都会に生きる猫の問題だが、突き詰めていくと地域
のコミュニケーション力が試される格好のテーマでもあるのだ。

 なお、この本には、地域猫実施マニュアルとともに実際のガイドライン、地
域猫活動チェックシートも掲載されているので、これから地域猫の取り組みを
始めようという人々にはぜひとも参考にしてもらいたい。(了)

◎著者紹介(くろさわ・やすし)
1957年生まれ。神奈川県鎌倉市在住。79年、麻布獣医科大学(現・麻布
大学)獣医学部獣医学科卒業。横浜市役所へ食品衛生監視員として入所。保健
所衛生課で食品衛生業務とともに狂犬病予防員、動物保護指導員として、地域
で発生する犬猫問題を最前線で対応する業務に従事する。90年、衛生局公衆
衛生課(現・食品衛生課)動物保護管理係にて動物業務に専念する。95年よ
り磯子保健所(現・磯子福祉保健センター)にて、行政として全国で初めての
「地域猫の考え方」を発案し、定義づけて実施する。2001年より西福祉保
健センター(旧・西保健所)でも、「猫トラブル『0』をめざすまちづくり事
業」として地域猫事業を展開中。

◎関連サイト
■『難問解決 ご近所の底力」(NHK)で取り上げられた地域猫の取り組み
http://www.nhk.or.jp/gokinjo/backnumber/030626.html
■地域猫の活動紹介(横浜市HP)
http://www.city.yokohama.jp/me/toshi/hitomati/back_num/no11/main5.html
■動物の愛護・管理について(環境省HP)
http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/

[取材メモから]
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■地域政策は誰がつくるのか
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★議員の政策立案を歓迎できるか★

「これまでは国が地域政策もつくり、自治体は執行するだけだった。だが、い
まや国にはそんな余裕も力もない。現場に近い地域自らが地域政策をつくりだ
していく時代だ。議会が時代の変化を受け止め、自ら考え、条例制定までたど
りついたことに敬意を表したい」

 議員提案による自治基本条例を制定した自治体の首長に感想を尋ねたところ、
こんな回答が返ってきた。予想以上に肯定的な感想に、正直なところ驚いた。
一般に、議員側が政策的な条例にまで手を広げることを、首長及び執行部職員
は苦々しい目で見ている。議員が条例を制定しても執行するのは執行部の職員
たちだ。どうせやるなら自分たちがやりたいように(やりやすいように)つく
りたいという本音が透けて見えることが多い。

 この首長はそうではなかった。地域における政策立案能力の向上が問われる
中、議員が政策づくりに目覚めたことを本心から歓迎しているように見えた。

★住民による立案はどこまで可能か★

 その首長の話を聞いた後、考えさせられた。地域政策を立案するのは一体誰
なのだろうか、と。

 民主主義社会ならば(あるいは理想論から言えば)、住民なのかもしれない。
だが、自治体において地域政策を具体化するものとなる予算なり、条例はもっ
ぱら執行部が提案し(予算編成権は長に属する)、議会の議決を経て執行する
というのが一般的な姿だ。そのことを疑う議論はほとんど聞いたことがない。
もちろん制度的には直接請求やリコールなどを通じて直接住民が地域政策に関
与できる道はあるが、よほど大きなテーマでなければ世論を動かすことはでき
ない。

 議会への陳情・請願はもう少し気軽に市民が政策づくりに関与できる制度だ
が、これとて一般の住民にとっては敷居が高い。その扱いも議会によってまち
まち。どんな審議を経て採否を決めるのかさえ分からないケースもあるし、そ
の効力がどの程度なのかもよく分からない。

 さらに、陳情・請願者が議場で直接意見を述べることもほとんど保障されて
いない(北海道栗山町議会が今年5月に制定した議会基本条例で、陳情・請願
を政策提言と位置づけ、意見聴取の機会を担保したのは画期的)。

★市民の提案を条例化★

 市民が地域政策づくりに参画できる手法としては、政策を受け付ける窓口に
提案したり、市民会議等に参加することが考えられる。それを一歩進めて、市
民の提案を条例化する窓口を設置したのが千葉県我孫子市である。

  我孫子市では、市民自治の推進を図るため、市民が市民生活や市民活動の場
で必要と考え、まとめた施策について、市民自らが条例案を策定し、提案する
場合のルールを定めるとともに、条例案の策定を支援する制度を設けた。

 条例案を提出できるのは市内に住所を有する市民(外国人を含む)5人以上
で構成され、当該構成員に18歳以上が5人以上いる団体であることが必要。
市では、条例案の策定に関し、要望に応じて法的助言等の技術的支援を行う。
提案者は、条例案について、事前に説明会や討論会を自ら開催し、市民に広く
条例案の趣旨や目的をPRするとともに、広く意見を聴く。説明会の開催日程
等の周知については、市の広報を利用することができるという。

 市長は、提案された条例案について検討し、その結果を公表。必要と認める
ときは、条例案を議会に上程する。

 この制度は、市民自治を追求してきた福嶋浩彦市長の存在が背景にある。福
嶋市長は現在3期12年目。来年1月の市長選に出馬しないことを表明した。
「市民による条例案づくりへの支援」は要綱である。福嶋市長が退任するまで
に、ぜひとも条例化を望みたいものだ。(了)

◎関連サイト
■我孫子市市民提案条例策定支援
http://www.city.abiko.chiba.jp/index.cfm/15,0,143,html

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
発行  特定非営利活動法人(NPO法人)コラボ
発行人 樺嶋秀吉(NPO法人コラボ代表理事)
サイト http://www.npo-collabo.org/ (購読の申し込みもこちらから)
連絡先 info@npo-collabo.org
〒343-0011 埼玉県越谷市大字増林5797番地
「コラボ」はNPO法人コラボのニューズレターです
本誌に掲載された記事を許可なく転載することを禁じます
Copyright (c) 2003-2006 NPO法人コラボ All rights reserved.
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= コラボ

2012年5月 7日 (月)

コラボ vol.39

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
コラボ vol.39                   2006-12-01
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

目次
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[プロ職員に会いたい――第1回]
■久住智治さん(東京都文京区)
――福祉における「視点」と「立ち位置」の重要性   安藤健司(編集者)

[インタビュー書評]
■主張する本――『自治体連続破綻の時代』      宮川純一(編集者)

[取材メモから]
■自治体議会の会派                 千葉茂明(編集者)

[編集後記]
■続・後記のようなもの

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[プロ職員に会いたい――第1回]
----------------------------------------------------------------------
■久住智治さん(東京都文京区)
           ――福祉における「視点」と「立ち位置」の重要性
----------------------------------------------------------------------
安藤健司 Ando Kenji 編集者

 自治体は、多種多様な事業を行っていて、そこでは、法律家、技師、建築士、
システムエンジニア、保健師、ケースワーカー、清掃作業員等々の様々なプロ
が日々業務に取り組んでいる。日々問題が起こるであろうし、そうでなくても、
各事務のスキルを高めていくことは、プロとして当然のことである。

 そうした職員群像の中から「この人こそはプロ」と思える職員に会って話を
どしどし聞き、お伝えする「プロ職員に会いたい」シリーズを始める。今回、
お会いしたのは、文京区の男女協働子育て支援部保育課長、久住智治さんだ。

★一度でも現場で達成感を得ると、やみつきになります★

――まず、久住さんが自治体職員になった経緯を教えてください。

久住さん:1982年に大学を卒業後、児童厚生職で文京区役所に入庁しまし
た。児童館や学童保育を13年。その後、重度心身障害者の通所施設で成人の
重度心身障害者担当を7年。その後、特別区の管理職試験を受験しまして、企
画政策部にて自治基本条例を4年担当、その後、保護課を経て現在、保育課で
仕事をしています。自治基本条例の仕事を除けば、全て福祉の仕事ですね。

 ただ、大学では、福祉専攻ではなかったんですよ。昆虫学を専攻していたの
で、もともとは、生物や理科の教員になりたかった。大学のゼミが地域の児童
館を手伝っていたので、当時の職員にすすめられて受験しました。その関係で、
最初は、児童館職員業務をやりたかったんです。その後は、配置異動にしたが
い、その都度、やりがいを見出し、問題に直面し、解決し、進めてきました。

――24年間勤めてきて、住民との関係で変わってきた点は、どんな点ですか?

久住さん:より連携していこうという意識が相互に高まってきました。以前で
したら、住民は、行政サービスを受けるだけ、要求するだけという意識が強か
った。現在は、行政だけでは解決できない課題が増えてきています。住民個人
個人が抱えている課題が多様化していますから、その解決策も多岐にわたりま
す。その全てを行政でなんとかするのは難しくなってきています。課題分析の
ためにも、解決のためにも連携していくという手法は、今後さらに重要になっ
てきますね。

――自治体職員となって良かったと実感できるのは、どんなところですか?

久住さん:やはり、住民と密着した現場があるということです。現場を見る、
目の当たりに実感する、自分で判断する、解決手法を考える、実践する、ダイ
レクトに成果がわかる……。

 机上の空論ではない、実体験としての現場が常にあることです。もちろん、
成果があがるだけではないですけどね。大変なことも多々あります。ですが、
一度でも現場で達成感を得ると、この仕事は、やみつきになりますね。

 以前、児童館に勤務していた時に、「オーバーナイトハイク」という親子を
対象にした、日の出を目指して夜通し歩くという行事を企画しました。最大で
約220人集まったのだけれど、児童館職員は2人だけ。とても2人だけでは
無理なんですよ。企画の段階から住民に参加してもらいました。日の出を劇的
に見るという達成感はもちろんですが、住民と意見を出して練り上げ、一緒に
作り上げ、参加者が「楽しかった」というのを聞いたときには嬉しかったです。

 生活保護の現場でも、ケースワーカーが保護家庭と同じ視点に立ち、自分の
目で見て、考え、自立プログラムを立て、1人でも2人でも自立することがで
きれば、凄い充実感が得られると思います。ただ、ケースワーカーが一人だけ
で自立支援にあたると、様々な問題にあたってパンクしてしまう恐れがありま
す。

 生活保護のケースワーカーの仕事は、本当につらいことも多いんですよ。い
われのない罵倒を浴びたり、人の死を直視したり。若いワーカーが悩んでいる
なと思った時は、ヒアリングをするようにしてました。よく職員と話していた
のは、「チーム保護課」でやっていこうということです。保護課通信という内
部資料を30号つくり、その中でも、問題・解決方法を共有し、視点を共有す
ることを大切にしていました。事務量も分担して、実効性の高い汗をかくこと
を心がけてました。福祉行政は一人でやる仕事ではないですからね。

★蓄積した信頼関係が1点の対立構造で崩れる辛さも★

――逆に現場だからこそ辛いということはどんなことですか?

久住さん:辛いというのとは、違うかも知れませんが、2つあります。1つは、
法制度が実情と合っていないことを実感するときです。保護行政である人が死
んでいる場合、その人の資産を詳しく調べたりすることができないんですよ。
その解決のために、今、厚生労働省では「リバースモゲージ」という制度が検
討されていますが、もっと根本的なアプローチがあるはずだと考えています。

 2つめは、住民と完全な対立構造になってしまうときです。全ての住民の全
ての課題を解決するのは難しいので、どうしてもそのような事態になることが
あります。それまで蓄積していた信頼関係が1点の対立構造で崩れてしまうの
は辛いことですね。そのようなときこそ、自分の立ち位置を定め、相手と向き
合い、きちんと説明することが大切です。たとえ平行線のまま終わろうとも、
あいまいなままにしておかないことです。

――地方分権については、いかがですか。

久住さん:自治基本条例のときに、主体的に地方分権にかかわれたのは幸運で
した。現場の視点とは別に法制度を見る視点を強く持てたことです。法制度そ
のものに対して、「本当にこれでいいのか」、「こう変えるべきでは」という
場面で、現場からの発信で提言できることになったのは重要だと思います。現
場を持っているからこそ発想できる楽しさと強みというのを、もっと自治体職
員が持っていくべきだと考えています。

――最後に他の自治体職員へのメッセージをお願いします。

久住さん:自治体内のどんな分野でも現場があるはずです。企画や財政には現
場はないというかも知れませんが、それらは、現場の最たるものだと思います。
直接住民に接し、自分に出来る限りのことをやる。それが、成果に結びつかな
くても、失敗に終わっても、その取り組みだけでもいいんです。確固たる視点
を設定し、実効性の高い汗をかくこと。そうすれば、わかってくれる住民、職
員が必ず出てきます。ただ単に事務を行うだけではなく、折角の仕事ですので、
市区町村職員でしか持ち得ない強さと楽しさに気付き、やりがいを持って取り
組んでほしいですね。(了)

<会って一言>
 久住さんは、やわらかい物腰ながら、自身の実体験から得た話にはどれも説
得力があった。福祉の現場で長く仕事をし、さらに自治基本条例を通して地方
分権の洗礼も浴びている。非常にバランスのとれた職員だと感じた。福祉の仕
事において、相手を考える視点を設定し、自分の立ち位置を決め、真摯に向き
合うことの重要性が聞いていてよくわかった。

 久住さんが学生時代、応用昆虫学のフィールドワーク中に、ある大先輩に言
われた言葉を教えてくれたが、それがとても印象的だった。
 その大先輩曰く、
 「お前のような表面だけを追っている調査では駄目だ、蜂も生きているんだ、
お前もそれ以上に蜂を追わないと成果はあがらないぞ!」
 久住さんはバーンと殴られた気がして、それまでの調査姿勢を反省したそう
である。この時点で既に、久住さんの生き方は決まったのではないだろうか。
そんな気がする。
(安藤)

◎久住智治(くすみ・ともはる)さん
1959年生まれ。1982年文京区役所入庁。児童館、重度心身障害者の通
所施設、政策部、保護課を経て現在、男女協働子育て支援部保育課長。論文に
『生活保護の現場からの提案』(自治体法務ナビVol.12)がある。

◎関連サイト
■文京区のHP
http://www.city.bunkyo.lg.jp/index

◎あんどう・けんじ
1971年生まれ。埼玉県出身。中央大学経済学部卒業。趣味は飲酒とフット
サル。出版社勤務。NPO法人コラボ会員。

[インタビュー書評]
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■主張する本――『自治体連続破綻の時代』
                (松本武洋著/洋泉社/06年11月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★夕張はひとごとではない★

 夕張市の財政破綻が尾を引いている。住民税の値上げ、水道代の上昇は当然
のこととして、高齢化率39.7%(05年)のまちだけに、「このままでは
将来展望を描けない」という不安に住民はおののいている。1万3千強の人口
で今後流出が続けば、再建への道は遠ざかるばかりだ。

 だが、このような危機は何も夕張市だけの話ではない。「夕張市の人口を一
万倍にすれば日本の人口である。そして、夕張市の借金630億円を一万倍に
すれば630兆円である。ちなみに、国の借金は700兆円、『隠れ』を加え
ると1000兆円などと言われている」(本書より)状況で、果たして自分た
ちの住むまちは大丈夫と言い切れるのか。夕張市のような破綻がわがまちで起
こる危険性について警鐘を鳴らすのが、この本である。

 書き手は和光市議会議員の松本氏。前回の統一選で、編集者から地方議員に
なったという異色の経歴を持つ。この本を書いたキッカケは、出版元である洋
泉社の編集部から届いた一本のメールだという。

「自分の住む、あるいは住もうとしている自治体の現状はどうなっているか、
それを自分で調べるにはどうしたらよいのか、そして住民がどう行動したらよ
いのか。忍び寄る自治体危機の処方箋となればと思い、この本を上梓しました」
と著者は語る。

★「見ざる・聞かざる・言わざる」からの脱却★

 早速、この本を見ていこう。最悪の事態を描いたシミュレーションの序章に
はじまり、第1章では自治体が直面している危機とは何かについて、高齢化率
の上昇、三位一体改革、地方債の自由化などさまざまな要因が列記される。さ
らに第2章では、自治体を取り巻く個別の問題点を列挙している。

 いずれも自治体の格差に結びつくわけだが、この格差が広がった場合、最後
は住民に負担が重くのしかかることがよくわかる。本書の例を挙げると、国民
健康保険の急速な赤字化、公共施設の劣悪な維持管理状況、自治体病院の危機、
子育てインフラの混乱、水道料金の大幅値上げ等々である。

 本書から自治体病院の現状を取り上げよう。
「全国の自治体病院の100床当たりの赤字額は平成17年度で940万円に
及んでいる(<中略>ちなみに平成16年度は806万円だった)。1つのベッ
ド当たり10万円近い赤字が毎年出ている」惨憺たる状況である。しかもこれ
は公営企業法上の法定負担を除いた額である。

「全国の自治病院の67.4%が赤字」の状況で、国内の高齢化率が20%を
超える(島根県の高齢化率は日本一。平成17年10月現在で27%という数
字も出ている)現実を重ね合わせれば、今後の医療費増が自治体財政を圧迫す
るのは確実である。加えて、地方公立病院の医師のなり手は激減しているとい
う。これでは「夢の田舎暮らし」どころの話ではない。

 続く第3章では、「夕張市職員のボーナスはなぜ増えたのか」と題して、同
市で実際に起きたカラクリ、すなわち“飛ばし”の仕組みもわかる。第4章で
は自治体を監視し、動かすためのノウハウと方法を、さらに第5章では誰でも
出来る自治体チェックの技法として自治体財政の把握の仕方、データの読み方
といった解説も盛り込んでいる。

「役所の論点、考え方がわかる本のなかで、一般の人が読んでもわかりやすい
本はなかなか見つかりません。この本は一般の人はもちろん、これから選挙に
出ようと考えている人にこそ読んでもらいたいと思います」と著者が語るよう
に、総じていうと自治体のデータや事例が豊富である。気軽に読める本であり
ながらも、出来る限り客観的な記述を心がけたと思われる。「見ざる・聞かざ
る・言わざる」の現状から「見て、聞いて、もの申す」ための本と言えよう。

★    編集者から議員へ★

 著者の松本氏は前回の統一選で市議会議員になった。現在1期目。元編集者
が見た役所の姿を次のように語る。

「役所はまず予算ありき。そして、職員が能力を発揮する機会も限られている。
上司の壁、予算の壁、政治の壁と、仮に画期的なことをしようとしても、それ
ぞれの壁があります。実際にアクションを起こすのは職員なのですが、なかな
か職員個人の独創性が発揮しにくい場所です」

 さらに官民の意識の違いも見て取れるという。
「民間は表も裏も知り尽くしています。契約書の作成にしてもそう。専門性も
持っています。役所が民間と仕事をしようとすると、逆にやっつけられかねま
せん。そこで、行政は官民の付き合い方を決めかねている様子も窺えます。あ
まり民と付き合いたくない、仲間内でやりたいというのがホンネで、地元の企
業が安心なのはエゲツナイことをしないからです。よそ者企業は入れたくない
のかもしれません」

 行政は「税」の上に成り立っているがゆえにリスクを徹底的に排除するのは
当然といえば当然だ。そして法令の縛りに加え、議会、住民の監視下にある。
その状況で、意思決定の迅速化といっても限界があるだろう。とはいえ、気が
ついてみたら、行政はモチベーションのない職員ばかり、あげく入札談合が平
然と行われているような状況に陥ったとしたら、住民にとってはまさに「悲劇」
である。

★議員の2極分化★

 こうならないためにこそ首長と行政を監視する議員がいるのだが、住民の代
表として議会に送り出された議員の現状はどうであろうか。

「都市部の議員はけっこう勉強しています。古いパターンの人はそうでもあり
ませんが……。新住民が多い場合は、特によそ者議員をよく監視しています。
だから、勉強せざるをえません」

 従来は“なあなあ”で済んだ自治会的な自治体行政も、多数のよそ者(新住
民)の登場で変わりつつある。従来の地域ボス支配型行政の色が薄れ、よそ者
に説明できる会計と情報公開を実現せざるを得ない。この新旧議員が入り混じ
ったことで、「勉強する議員としない議員の2極化が進んでいるのかもしれま
せん」。かくいう著者も、よそ者議員の一人だ。

 著者はこの本のなかで、一般の人々も自分たちで自治体を監視しようと提唱
する。第4章では、住民が直接行使できる方法として、請願・陳情の仕方、住
民監査請求と事務監査請求の仕組みやその現実、といったオーソドクスな方法
のほかに、情報公開条例の使い方、公聴制度の活用方法、住民投票の可能性に
も触れている。

 最近は、自治体ホームページの進化に伴い、さまざまな行政データが入手可
能になったことがよくわかる。とはいえ、核心部分はまだまだ公開されている
とはいえない。その核心を掴むためには、「仲間を議会に送り込むという方法」
が有効といえよう。

★足元の火を消すために★

 著者は30歳台の議員である。埼玉県には著者も所属する若い議員のネット
ワークがあり、これを活用して面白いテーマをみなで共有し、時には首長の話
も聞くことも多いという。本書の中には大阪市や夕張市、あるいは千葉県我孫
子市といった事例がさまざまに掲載されているが、地方議会にも自治体事例や
情報の共有が不可欠となる時期が来たのかもしれない。

 著者本人は今後のスタンスを、「議員本来の役割である行政監視は当然とし
て、私はむしろ広く議員提案をしていきたいと思います。職員には思いつかな
いアイデアを出す、あるいは行政は動き出すのが遅いので、その動機付けをす
るといったことです」と語る。

 自治体格差、地方債の自由化という荒波が押し寄せ、地方議員も執行部の提
案を鵜呑みにしていればよかった時代ではなくなったということか。それは、
もちろん、住民にも当てはまる。

「もし、何も知らないで危険なまちに家を買ってしまったら最後、簡単に破綻
自治体から逃げ出すことは不可能です。とくに行政関係者でなくても、これか
ら家を買おう、建てようという人こそ、まちの現状や将来像を知らないと大変
なことになります」

 足元の火を消すのは他でもない住民である。リスク時代の到来を映し出す、
著者の言葉であった。(了) 

◎著者紹介(まつもと・たけひろ)
1969年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒業。日本インベストメントファ
イナンス株式会社(エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社)、中央
経済社、東洋経済新報社を経て埼玉県和光市議会議員1期目。経営書・法律書
・会計書・雑誌編集者として累計150冊超の書籍、雑誌を世に送り、今もフ
リーエディター、ライターとして活動する異色の若手地方議員。無所属。20
03年5月、「子どもにツケを回さない」ことを誓約する日本税制改革協議会
(JTR)の納税者保護誓約書に全国の市区町村議員で始めてサインした。

◎関連サイト
■著者ホームページ
http://homepage3.nifty.com/matsumoto-takehiro/index.htm
■著者ブログ
http://ameblo.jp/takeyan/
■著者ブログ(あなたも今すぐできる天下り法人の調査)
http://ameblo.jp/takeyan/entry-10006439274.html
■地域医療の確保と自治体病院のあり方等に関する検討会(総務省HP)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/041130_5.html
■都道府県及び政令指定都市の財政状況(財団法人・地方債協会HP) 
http://www.chihousai.or.jp/08/01.html
■埼玉県内他市との水道料金の比較(埼玉県八潮市水道部HP)
http://www7.ocn.ne.jp/~yashio-w/0405_hikaku.htm
■日本税制改革協議会HP
http://www.jtr.gr.jp/

[取材メモから]
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■自治体議会の会派
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★会派の功罪★

 11月10日、第1回マニフェスト大賞(地方議員の政策コンテスト)の授
賞式が開かれた。筆者も審査委員の一人として応募作品に目を通したが、地域
で努力している議員がいることを改めて知ることができた(受賞した議会・議
員は下記マニフェスト大賞のHPを参考)。

 受賞した議会の代表による挨拶はどれも意欲にあふれていたが、中でも印象
深かったのは審査委員特別賞を受賞した小林華弥子・大分県由布市議。小林市
議は「一人から始まる議会改革こそが、真の改革につながると信じている」と
力強く語った。

 改革を進めるのは一人ひとりの意思の強さだと思うと同時に、考えさせられ
たのが自治体議会の会派の意義だった。

 由布市は05年10月1日、庄内町・挾間町・湯布院町が合併して誕生した。
旧湯布院町議から由布市議になった小林さんは無所属で活動。議員の政策立法
機能の充実をめざし、議決事件の追加を図る条例を制定したり、景観対策の組
織づくりなどを実現してきた。

 言うまでもなく条例は過半数が賛成しなければ可決しない。一人の議員の力
でなぜ条例を可決できるのか疑問だったが、「由布市議会は合併して間もない
こともあり、議会内に会派がない」という。

 その話を聞き、妙に納得してしまった。

 なぜなら同じような話を数か月前、北海道栗山町議会でも聞いたからだ。議
長とともに改革を牽引してきた議会運営委員会委員長が条例制定の理由として
挙げたのは「議長のリーダーシップと会派がないこと」だった。

 この議運委員長は議員歴30年以上で、日本共産党に所属する。会派があり、
その勢力によって正副議長や委員長ポストを決めるようなことならば、恐らく
彼は議運委員長には就かなかっただろう。政党に所属していてもまちづくりに
対する思いは同じ。彼は「自分は町民党」とも話していた。

★会派の定義は?★

 国会には国会対策委員長というポストがあり、与野党とも有力議員が就く。
そして委員長同士の会談によって国会運営が左右される。

 この自治体議会版が議会運営委員会だが、多くの議会では会派の構成人数に
よってメンバーが按分される。議会によっては交渉会派として「3人以上」な
ど一定の人数を決めている。すると無党派で一人で活動する議員(いわゆる一
人会派)の場合は議運のメンバーになれない。議会運営については議運で議論
して決めるケースが多いため、たとえば一般質問の時間を長くしたいと思って
も、その議論に加わることさえできない。

 会派とは何か。実は、法律的な定義は何もない。政務調査費の交付に関して
会派という文言が出てくるのみだ(自治法100条の14)。町村議会では、
会計処理をスムーズに行うため、政務調査費交付条例の制定に合わせて会派を
設ける議会が相次いだ。前述の栗山町議会でも政務調査費の条例を制定したが、
会派によるデメリットを考え、単純に数人単位の「班」をつくることにとどめ
たという。

 もちろん会派はデメリットだけではない。一定規模以上の市や県の議会には
ほぼすべてといっていいほど会派があり、そのことが少なからず円滑な議会運
営に寄与していることは確かだろう。

 しかし、当たり前のようにとらえがちな会派の意義を問い直してみることも
必要ではないか。仮に、議員同士の自由な意見交換や合意形成づくりの弊害に
なっているとしたら、その在り方や別の組織を考えてもいいのではないかと思
う。

 三重県議会は12月定例会に、都道府県では初となる議会基本条例案を提案
する予定だ。その中で会派について「政策立案、政策決定、政策提言等に関し、
会派間で調整を行い、合意形成に努めるものとする」と、役割を規定している
(条例素案第5条)。このような位置づけによって会派は政策集団としての性
格が強くなろう。

 会派はややもすると、議会のポスト獲得のためのものと言われてきた。必要
であるならば、それだけではない定義づけを行うべきではないだろうか。(了)

◎関連サイト
■地方議員の政策コンテスト~「マニフェスト大賞」
http://www.local-manifesto.jp/manifestoaward/
■三重県議会
http://www.pref.mie.jp/GIKAIS/kengi/gikai.htm
■北海道栗山町議会
http://www.town.kuriyama.hokkaido.jp/parliament/gikai.html

[編集後記]
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■続・後記のようなもの
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●前回の本欄で(続く)となっていた、太極拳教室の一大事という話はじつは
まだ現在進行形で進展中です。4年半前から通っている教室の先生が突然辞め
てしまい、しかも、一生徒にすぎなかった私に「あとは、君がやって」と勝手
に後継指名をしたことから始まる混迷劇なのですが、年末から年明けにかけて
山場を迎えそうな状況になってきました。ですから、その顛末はまた別の機会
に報告したいと思います。

●その代わりというわけではありませんが、今回は一冊の本を紹介します。こ
のニューズレターに「取材メモから」を寄稿している千葉茂明さんの編集によ
る『マニフェスト革命――自立した地方政府をつくるために』(ぎょうせい刊)。
著者は、あの北川正恭・早大大学院教授(前三重県知事)です。

 2003年の統一地方選から始まったマニフェスト選挙は、その後、本来の
パーティー・マニフェスト(政党の政権公約集)として国政選挙にも飛び火し、
瞬く間に日本中を「マニフェストをつくらずば候補者にあらず」の風潮に包み
込みました。しかし、マニフェストはもともと議院内閣制を前提としたもの。
首長と議会が併存(競合)する二元代表制の地方政治に持ち込むには、そもそ
も無理があるように思われます。

 ちょうど一年前に書いた拙稿『〇五年の地方選・総選挙に見るマニフェスト
の現時点』(「地方自治研修」05年12月号)でも、西尾勝・国際基督教大
大学院教授の発言を引用して、その理論上の問題点を指摘したのですが、この
たび出版された北川氏の著書には、それにたいする答えが用意されていました。

「『破られる公約』を『守られる公約』にしていくには、理論以上に運動を起
こし、実績をつくっていくことが必要だ。あくまで実践が先であり、後から行
政学や政治学の学者に理論武装してもらえばいい」

 じつに簡潔、明快。帯には「『マニフェスト』は大政治の道具であり、“気
づき”の道具である。提唱者によるマニフェストの決定版。これぞ真髄!」の
文字も。分権時代の自治体経営のあり方や、今後のマニフェストの展望など、
本書には、マニフェストを「政治を変えるためのツール」として活用しようと
いう北川イズムがぎっしり詰まっています。来年、また巡ってくる統一地方選
の前に、一度、目を通しておいてほしい本です。

●来年1月はお休みをいただいて、次号の発行は2月となります。少し早いで
すが、皆さん、よいお年をお迎え下さい。

(樺嶋秀吉)

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
発行  特定非営利活動法人(NPO法人)コラボ
発行人 樺嶋秀吉(NPO法人コラボ代表理事)
サイト http://www.npo-collabo.org/ (購読の申し込みもこちらから)
連絡先 info@npo-collabo.org
〒343-0011 埼玉県越谷市大字増林5797番地
「コラボ」はNPO法人コラボのニューズレターです
本誌に掲載された記事を許可なく転載することを禁じます
Copyright (c) 2003-2006 NPO法人コラボ All rights reserved.
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= コラボ

コラボ vol.40

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
コラボ vol.40                   2007-02-01
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

目次
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[協働を模索する条例・政策の研究――第10回]
■まちへ出る行政――鳥取県、静岡県熱海市
         櫻沢靖子(早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程)
[インタビュー書評]
■主張する本――『行政マンの条件―志と技術を高める』
                          宮川純一(編集者)
[取材メモから]
■「改革」継続の技術                千葉茂明(編集者)

[編集後記]
■宮崎県民の「次の選択」

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[協働を模索する条例・政策の研究――第10回]
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■まちへ出る行政――鳥取県、静岡県熱海市
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櫻沢靖子 Sakurazawa Yasuko 早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程

★出前講座は協働の前段階★

「行政の場」というとまず庁舎が思い浮かぶが、庁舎内で普段仕事をしている
職員が庁舎の外で住民とかかわるものの1つに「出前講座」がある。この「出
前講座」をGoogleで検索してみると膨大なヒット数となり、行政サイドによる
ものだけみても、国、都道府県、市町村と各主体によって行なわれている。

 国土交通省が主張する「コミュニケーション型行政」はその先駆的なもので、
建設省時代に始めた「出前講座」は今も行なわれている。そして都道府県や市
町村においても今や定番とも言える。出前講座は10~20人以上の住民を集
め、住民側が場所を用意し、そこに行政側から講師が派遣され講座を行なうと
いうものが多いようだ。

「行政と住民との協働」というフレーズがやっと定着しつつあり、また各種行
政計画の策定委員に市民委員として一般市民が参加することは珍しいことでは
なくなった。その意味でこの「出前講座」は、協働の前段階ともいえそうだ。

★鳥取県の草の根自治支援室★

 さて、こうした啓発的な出前講座を開催している自治体は数多いが、行政の
独り善がりが懸念される行革を住民の手で進めてもらうことを狙いとして、こ
うした講座を含めて住民をサポートする体制をとっているのが鳥取県である。

 鳥取県では06年4月に草の根自治支援室を設置し、情報提供、相談窓口業
務、啓発業務といった業務を行なっている。情報提供として、ホームページ上
では「指標で比較する市町村の姿」としてさまざまな事柄を数字で比較してい
る。例えば県下の市町村議会議員の月額議員報酬の一覧を見れば、最高額は鳥
取市の47万5千円、最低額は江府町の19万3千5百円(06年9月)とい
うことがわかる。

 情報の範囲は議会関係に限らず、財政、教育、福祉など多岐にわたり、「新
たな借金は自由になる財源の何%か」というように住民の興味を引きやすいよ
うなタイトルになっていたり、あるいは最近話題の公共工事の落札率について
は地図で色分けしてどこの市町村が95%以上なのか一目でわかるなど、それ
ぞれ工夫されたものとなっている。

 相談窓口業務では、寄せられた相談に対して解決策を提案する形――例えば
直接請求の方法を具体的に教えたり、議会への請願や陳情を行うことを提案し
たり――をとっている。具体的には「いわゆる迷惑施設の建設を阻止したいが
どうすればよいか」という相談に対して、建設地決定の経過の情報収集と議会
への請願や陳情、住民監査請求などの手法を提案するというものだ。

 そして啓発業務としてはイエスノーチェックシートという、住民が自分の問
題意識から行政に対してとれる方法にはどのようなものがあるか(例えば監査
請求や不服申立てなど)がわかるシートを作成している。このシートは誰でも
試しやすいものとなっており、苦心の跡が窺える。

★熱海市のタウンミーティング★

 また、出前講座とは異なるが、行政と住民の直接対話としてタウンミーティ
ングも多くの自治体で行われている。タウンミーティングというと小泉内閣当
時のやらせ質問を思い浮かべる人も多いかもしれないが、市町村レベルで行わ
れるものでは、住民の率直な意見を直接首長に伝える場として有効活用されて
いるようだ。

 例えば、「財政危機宣言」を出して波紋を広げた静岡県熱海市。当市のタウ
ンミーティングは06年11月の約1か月、7か所で500人近くを集めた。
新庁舎の建設が議論の中心であったが、賛成反対だけでなく、条件付で賛成と
いった市民が率直な意見を言える場になったようだ。同市に限らず、こうした
庁舎の外で公に住民と行政が意見交換を行なう場は今後も必要であろう。住民
の参加度、ミーティングでの意見の反映度などいろいろ考慮しなければならな
い点は多いが……。

 財政面だけでなく、これからますます厳しい状況におかれていく自治体にと
って、住民との協働は問題解決のためには今後もさらに重要となるであろう。
そのためにパートナーとなりうる住民を増やしていくことは、行政側が重視す
べきことかもしれない。ただそういったお膳立てをされることに対して、その
前に住民からの訴えがまず初めにないのだとしたら、少し寂しい気がするのは
筆者だけであろうか。(了)

◎関連サイト
■草の根自治支援室(鳥取県HP)
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=9349
■静岡県熱海市HP
http://www.city.atami.shizuoka.jp/
■コミュニケーション型国土行政(国土交通省HP)
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/policy/communication/index.html

[インタビュー書評]
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■主張する本――『行政マンの条件―志と技術を高める』
              (石川善朗著/時事通信社/05年11月刊)
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★公務員制度改革のゆくえ★

 自民党の中川幹事長が今月はじめに「5月ごろまでに労働基本権の問題も含
めた公務員制度改革大綱をまとめ、参院選で問いたい」とコメント。これまで、
ことあるごとに争点に挙げられてはトーンダウンしていた公務員制度改革であ
るが、ここに来て急速に現実味を帯びてきた。その推進力は参院選に向けた政
治的な力であることは間違いない。が、正直なところ、そのめざす姿はおろか
参院選の結果すら誰にも予想がつかないというのが紛れもない事実だ。

 そのような報道のさなかに手に取ったのが本書である。著者は現役の国家公
務員である。混迷深まる時代に公務員はどう生きていくべきか、早速著者に聞
くことにした。

★ 行政マンの志を取り戻す★

 行政マンのプロフェッショナルとしての条件とは何か。本書のテーマでもあ
るこの問に対して、「それはなんといってもまずは志です」と著者は断言する。
次に必要なのが実務をこなす技術(スキル)なのであるが、このような当たり
前のことほど、はっきりと書かれた本がないことから、著者はその点を明らか
にしようという想いで本書を書き上げたのだという。

 本書は2部構成で、そのうち第Ⅰ部で、行政マンの志について解説を試みる。
「志」とは何か。この本では「公務の世界では、自らの利益ではなく、社会の
利益のために行動しようと思うこと」「利他の精神をもち、利他のため主体的
かつ積極的に行動しようと思うこと」だという。

 主張は明快だ。志さえあれば、周りからの評価に対して冷静になれるし、決
断力も高まる。それが行政執行時の法や制度の運用にも生きる。そして何より
も、セクショナリズムを打破する突破口にもなると著者は強調する。現実をよ
く考えると、ここに挙げられた要素こそが行政の弱点ともいえなくもない。

 さらに志の影響力は個人にとどまらない。その力は無限だ。
「官僚制度の成り立ちはもちろん、日本の近代の歴史を見れば、志の大切さは
おのずと理解できます。それは民間企業も同様です。志がモチベーションを生
み出します。組織を動かす原動力にもなります。自分のことよりも社会のため
に行動しようという志があって、そこで初めて専門家たるスキルが生きるので
す」と著者は語る。

★志に根ざした行政のスキル★

 さて、志を実現するために欠かせないのが技術(スキル)である。第Ⅱ部で
は、著者はこの技術を「仕事の企画、実行、評価のための技術」と「仕事の土
台となる技術」に大別する。そして事例を示しながら解説を進めていくのだが、
その一部を見ていこう。

 行政マンにとってもっとも現場で鍛えられるのが“交渉力”である。これこ
そ行政の内外において常に必要とされる能力といってもよい。とはいえ、研修
や試験で容易に学べるといった類の能力でもない。また行政の教科書ではまず
触れられることのない要素でもある。

 交渉の要諦として著者がまず挙げるのが、当事者間の心理関係の構築に加え、
ゼロサムゲームではなく、プラスサムゲームの関係を持つことであるという。
そして、イザ交渉という時のコツは、第一に信頼を確保するためには相手の懐
に飛び込むこと。次に交渉当事者間に選択の幅を持たせること、そしてわかり
やすい言葉で明確に自己主張すること、さらに相手方の感情に配慮すること、
最後に必要な場合は〝差し〟で勝負することが大切だという。

 日ごろ、「これは困難です」とか、あるいは「持ち帰って内部で相談する」
が常套句になっていないだろうか。交渉力は決して有形ではないが、それを持
っている人と持っていない人では、交渉相手から見た印象も全く違うことは間
違いない。ここでもまた、志が試されるのだともいえる。 

★デキル人になるには★

 ふと思いついたのだが、公務員は総じて優秀である。ただし、その中でも
とくに「デキル人」とはどのような人であろうか。この質問をぶつけてみた
ところ、著者はこう述べる。

「まず自分の頭で考える人です。ソリューション能力がある人。ただし、本
当にデキルとはそれだけではなくて、我とか野心、こだわりといったものが
ない人です。普通は失敗したらどうしようとか、うまいところを見せようと
か、どうしても躊躇や野心が出てしまいますから」

 こと上司に関しては、部下の心理からすればデキル上司に仕えたいと思う
のは当然であろう。ただし、この本で取り上げられているのだが、上司は部
下に対して指示が不明確で抽象的になりやすく、また時にメンツを重視しが
ちになったり、あるいは有能ゆえに仕事を溜め込みがちになるといったこと
が多いようだ。

 著者はあるべき上司像について、「上司の『志』に部下が共鳴できるかど
うかでしょう。そしてまた、なにごとも動態的にみることができる人である
かどうかがポイントであって、部課長が単に優秀かどうかは別問題」だと言
い切る。

★人が組織を動かす★

 昨今の行政の世界を見渡せば、行政評価や情報公開のキーワードのもとで、
「市民に開かれた行政」であることが求められている。しかしながら、現実は
どうか。自治体行政の不祥事を見れば、裏金問題が常態化し、入札談合にいた
ってはもはや日常茶飯事といっても過言ではない。

 本書にあるとおり、「『志』があらゆる行政の基盤をなしている。この基盤
が緩むと、不祥事やら汚職などあるいは倫理上問題のある事件を発生させてし
まう」状態が依然として続いている。最近の企業不祥事にも見るように、風通
しが悪い組織は、歯車がひとつ狂うと全体に狂いが生じる。リーダーが率先し
て負のオーラを発している組織であれば、この構造上の問題はもはや個人の志
だけでは解決できないのかもしれない。

 この点について著者は、「組織の『志』も重要だ」と指摘する。「組織のリ
ーダーが『組織としての志』をリードし、まとめ上げる必要がある。それがで
きるかどうかは、つまるところ監督次第である」とも。

 これはなにも公務員の世界だけの話ではない。時折しも、宮崎県知事選挙に
おいて、当初泡沫といわれた元タレント候補がみごと当選を果たした。報道に
よれば、新知事に対して県庁内部からは「地方自治の勉強はしていても実務を
知らない」といった意見が出ているようだが、本書の趣旨に沿えば、新知事が
本人の志と県民から受けた期待とプレッシャーをどのように組織にも共有させ
るのか、そして組織としての志を共有できる組織をどうつくるかということが
喫緊の課題だといえよう。

 そして今年は統一地方選挙の年である。全国のいたることで首長選挙・議会
議員選挙が執り行われる。いま市民が待ち望んでいるものは、政官を問わない
「志の復活」のはずである。(了)

◎関連サイト
■自治体職員有志の会ブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/careerdesign/
■宮崎県HP
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/index.htm

◎著者紹介
石川善朗(いしかわ・よしろう)
1955年生まれ。東京大学法学部卒。78年自治省入省。郵政省電気通信局
電波部基幹通信課長、総務省官房参事官などを経て、2006年4月より人事
院事務総局総務課長。

[取材メモから]
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■「改革」継続の技術
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千葉茂明 Chiba Shigeaki 編集者

★「改革派」首長の退場★

 06年12月25日、鳥取県の片山善博知事は記者会見で、4月の統一地方
選に出馬しない意向を表明した。片山知事は2期8年目。同じく「改革派知事」
と評される岩手県の増田寛也知事も既に3期限りでの引退を表明した。03年
には三重県の北川正恭、05年には宮城県の浅野史郎の両知事も引退し、全国
知事会はすっかり様変わりすることになる。

 知事だけではない。埼玉県志木市の穂坂邦夫市長は1期限りで、千葉県我孫
子市の福嶋浩彦市長は3期で引退。同じく3期目の岐阜県多治見市の西寺雅也
市長も統一選には出ない。いずれも市民参加や行財政改革で知られた首長だ。
経営改革で知られた岩手県滝沢村長だった柳村純一氏や愛知県犬山市長だった
石田芳弘氏のように知事選へ挑戦する首長もいる。また、昨年暮れには独自の
まちづくりで知られた岩手県藤沢町の佐藤守町長も辞職した。

★「芸」と「技術」★

「改革派」首長の退場で個人的に気になるのは、その後の自治体改革の行方で
あり、改革を下支えする職員の意識である。もちろん新首長によって改革が進
むケースもあるが、「先祖返り」とうわさされる自治体もある。むしろ最近は
後者の話をよく耳にするが、これはある意味でトップの権限の強大さを意味し
ているともいえる。

 最近、必要があって毎日新聞記者が記した片山知事に関する本を再読した。
タイトルは『<改革>の技術――鳥取県知事・片山善博の挑戦』(田中成之著、
岩波書店、04年11月刊)。著者は長野県の田中康夫知事(当時)、東京都
の石原慎太郎知事の政治手法が「余人はマネのしようがない『芸』」であるの
に対し、片山知事をはじめ官僚出身の改革派知事は「<改革>の技術を駆使し
ている」と指摘する。「技術」ならば、身につけることは比較的容易であり、
能力と努力次第で成功する可能性がある、と説く。

★議会の関与★

 この「技術」を首長交代を挟んでも継続できないだろうか。そのような首長
を有権者が選べばいい、というのが正論だろうが、必ずしも選択肢があるとは
限らない。一つの方法として思い浮かぶのが議会の関与だ。

 地方分権一括法の施行以来、首長の権限は大きくなったと言われる。だが、
本当は議会の権限が高まったのである。確かに機関委任事務が廃止されたこと
で自治体の首長は独自にものを考え、提案できるようになった。しかし、予算
にしても条例にしても最終的に決定するのは議会だからである。現在のように、
首長提案の議案がほぼ100%通ること自体がいわば異常ではないか。

 議会の機能を重視した片山知事は、事前の根回しを廃し、議場では「ガチン
コ勝負」に徹した。また、議員構成が「老若男女」のうち「老男」に偏してい
ることに疑問を投げかけ、郵便投票による「日野郡民会議」設立条例案を02
年2月に提案した(後に修正され、公募・抽選による「日野郡民行政参画推進
会議」に)。

 条例化を図れば、次の首長も容易には変えることができない。多治見市の西
寺市長は03年4月の市長選で「自治体基本条例」の制定を公約。06年3月
に審議未了廃案になるもあきらめず、一部修正した「市政基本条例」として再
提案し、同年9月定例会で可決にこぎつけた。この条例は「地域政府としての
多治見市の成立が市民の信託に基づくものであること」を明らかにしたものだ。

 分権一括法の施行からまもなく丸7年。「改革の技術」とともに「改革継続
の技術」もそろそろ競い合ってほしい。(了)

◎関連サイト
■鳥取県庁HP
http://www.pref.tottori.jp/
■「行政・まちづくり」(多治見市役所HP)
http://www.city.tajimi.gifu.jp/sub/gyosei.html

[編集後記]
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■宮崎県民の「次の選択」
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 先日、F出版社の週刊誌編集部から電話でコメントを求められました。宮崎
県知事に当選した、そのまんま東氏のグラビア記事を載せるので、今後の課題
を聞きたいとのこと。

 今回の宮崎県民の選択は、シーガイアへの公金投入に象徴された無軌道な観
光政策を行い多選の弊害を見せつけた前々知事、そのアンチ勢力として当選し
た前知事、そして政策論争抜きの今回の保守分裂選挙――と続いた県民不在県
政へのキツイお仕置きだったことは間違いありません。

「一番の課題は、多数野党の県議会を相手に自分の政策をどう実現するか」と
型どおりの答えをした後で、「4月の県議選では、そのためにどういう県議を
選ぶか。新知事を選んだ県民も問われている」と付け加えました。もちろん、
頭の中にあったのは、田中康夫前知事を誕生させた長野県のことです。

 じつは、同じころ、統一地方選に向けた連載ものの取材をしている地方紙記
者から、田中県政で長野県民は政治的に成長したか、という質問をされ、「県
政への関心は高まったけれども、結局は知事を〝つくりっぱなし〟にして終わ
った」と、厳しいコメントをしていたのです。

 田中氏独特の強烈なキャラクターのせいもあったでしょうが、彼を知事の座
に就けた支持者たちは、田中県政に対する組織的な支援をせず(できず)、泰
阜村への住民票異動など暴走ともいえるトリッキーな行動を止めることもでき
ませんでした。その結果、2期目の途中で世論調査における県民の不支持率が
支持率を上回り、最後まで対立を続けた県議会には一部支持者の不祥事が原因
で百条委員会までつくられたのです。

 宮崎県の新知事は、このままでは県議会で立ち往生して、やがて多数に呑み
込まれ、県議や官僚の操り人形となることが懸念されます。そうならないため
に、東氏に一票を投じた有権者はどうすべきか。本当に宮崎県政を変えたいと
思うのならば、〝つくりっぱなし〟で終わらない、次の行動が求められていま
す。

 本号のテーマ書評(『行政マンの条件―志と技術を高める』)で宮川氏は、
「(宮崎県の)新知事が本人の志と県民から受けた期待とプレッシャーをどの
ように組織にも共有させるのか、そして組織としての志を共有できる組織をど
うつくるか」と県庁内改革の手腕に期待を寄せています。また、「取材帳から」
の千葉氏は「『改革』継続の技術」で、属人的な「芸」ではなく、誰でも学び、
伝えられる「技術」の大切さを指摘しました。宮崎県に限りませんが、有権者、
とりわけ市民派といわれる人たちに欠けているのは、地域政治の流れを変えた
いという志を具体化していくための技術なのかもしれません。(了)
(樺嶋)

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