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2012年5月17日 (木)

コラボ vol.06

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コラボ vol.6                       2003-12-01
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HEADLINE (6 articles)
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[feature/特集]
01:消費者サイドを意識した「第3の勢力」の結集とは
                    村尾信尚(関西学院大学教授)
[opinion/主張]
02:「市民派」再考            清水直子(フリーライター)

[books review/テーマ書評]
03:政治家たちが記してきた政策本         宮川純一(編集者)

[essay/エッセイ]
04:私はトルコで考えた            野中恵子(地域研究者)

[special report/特別報告]
05:シンポジウム「トップ当選の新人議員は見た! 地方議会のバカの壁」

[postscript/あとがき]
06:夫婦別姓と僕
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[feature/特集]
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01:消費者サイドを意識した「第3の勢力」の結集とは
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村尾信尚 Murao Nobutaka 関西学院大学教授

<先の総選挙では、「マニフェスト対決」とマスコミ報道が過熱したにも関わ
らず、投票率は過去最低から2番目の低さ。結局、無党派層は動かなかった。
こうした無党派層を投票行動に結びつけるような政策提言を行おうと、元財務
省キャリアで、10月に関西学院大学教授に就任したばかりの村尾信尚氏が、
勉強会を11月に発足させた。その狙いや今後の活動について聞いた>

★三重県で納税者側に立つ視点に目覚めてしまった★

―― キャリア官僚を辞め、今年4月の三重県知事選に出馬しましたね。

村尾 8年前に大蔵省(現・財務省)から三重県総務部長(98年4月からは
総務局長)に出向し、当時の北川正恭県知事のもとで行政改革を担当したこと
が、結果的には、政治に首を突っ込むきっかけになりました。本省に戻り、外
務省と通産省(当時)の予算編成担当(主計官)になりましたが、三重で納税
者側に立つ視点に目覚めてしまった自分にとっては、「永田町」や「霞ヶ関」
は、あまりにもインナーなサークルにしか思えなくなりました。

 そこで2001年、納税者や市民の視点を大事にした政策立案をしたいと思
い、任意の市民団体「納税者のための行政推進ネットワーク WHY NOT
(ホワイ・ノット)」を立ち上げました。当初は、自分が立候補するようなこ
とは、まったく考えてもいませんでしたが、北川氏が昨年、3選不出馬を表明
した頃から環境が一変しました。

 私が三重県に出向していた時代から知っている県内のNPO団体の方々から
立候補を促され、自分としても、「市民のための改革」なんて格好いいこと言
いながら、「霞ヶ関」で定年まで暮らしていく“守りの人生”に疑問を感じ出
してもいました。そこで、自分の考える「選挙スタイル」にこだわることを前
提に、知事選に立候補を決意しました。

―― 選挙結果は3位に終わり、ご自身では、「既存の組織の壁はなかなか厚
かった」と振りかえっていますね。

村尾 私は知事選では、勝つことよりも戦い方にこだわりました。(1)どこ
の政党の支持も受けない、(2)借金を作らない、(3)公約には有権者から
の意見を取り入れる――といったことでした。この通り戦いましたので、それ
に悔いはないですが、問題があったとすれば、選挙は戦争なのに、戦うための
戦略や組織が未熟だったことです。私の選挙母体は、ボランティア中心でした
が、戦闘集団としての体をなしていませんでした。

 一方で、選挙は勝たなければ、やりたい政策も何も実現しないのは事実です
から、今度は、戦闘集団として機能できる組織、すなわち「政党」を作らなく
ては自分の思いが果たせないのでは、と思い始めました。

 今後の傾向として、特に国政は、2大政党化されていくでしょうが、小選挙
区制でも比例部分がある以上、2大政党以外でも有権者の関心を集めることが
できます。政権のキャスティングボートとなり得る第3の政党の存在が重要に
なります。今は、その役割を公明党が担っていますが、今後は消費者サイドを
意識した「第3の勢力」が出てきてもいいのではないでしょうか。

★「プランB」からはじまる新しい政策提言★

―― イメージする「新党」は、自民、民主両党とどのように異なるのですか。

村尾 私の認識では、自民党と民主党の相違点は、自民党が経営者(資本)を
向いているのに対し、民主党が労働組合をバックにしていることだと思います。
ただ、双方とも生産者サイド、別の言い方ではタックス・イーター(税金を使
う)側に属しているのではないでしょうか。

 いずれも消費者サイド、タックス・ペイヤー(税金を払う)側の視点に立っ
ていないために、無党派層、サイレント・マジョリティーと呼ばれる有権者が
増加しているのだと考えます。そうした層の意見を吸収する政党がないために、
先の総選挙でも、マスコミが「マニフェスト対決」「政権交代の可能性」など
と盛り上げても、投票率があれほど低かったのだと思っています。

 私個人のホームページでは、今までの政党の政策「おもて=A面」に対する、
「うら=B面」の政策としての「プランB」を提唱しています。個人的には、
政党を作る可能性を否定しませんが、ハコや枠組みを作る前に、まずは政治で
何を実現したいのか、というビジョンをまとめなければ、戦いには臨めません。

 そこで、消費者サイドの政策「プランB」のコンセプトを具体化させるべく、
11月11日に「もうひとつの日本を考える会」という勉強会をスタートさせ
ました。これは純粋に政策を立案する場で、政治的な意味はありません。これ
から1年かけて、「政策提言=マニフェスト」としてまとめたら、解散するつ
もりです。

―― 政策提言をどのようにサイレント・マジョリティーに知らしめるので
すか。

村尾 小冊子として出版して、全国の有権者の眼に触れられるようにしたいで
す。読んだ人が、また新たな政策を提言してくれるかもしれない。政策提言を
選挙公約として立候補する人が出てくるかもしれない。オープンリソース的に
手直しを加えながら、政策が進化し運動が広がっていき、最終的には既存政党
に限界を感じて政治を変えたいという政治家志望者や、特定の支持政党を持た
ない無党派有権者が結集するための旗印となる「綱領」に発展するような好循
環を生み出していければ、と思っています。

 そもそも、社会への憤りを根底に持っていなければ、政治家を職業として選
ぶべきではないのではないでしょうか。ですから、政策提言は政治のツールで
はありますが、それ自体が目的ではありません。「マニフェスト」が、今度の
総選挙でもてはやされましたが、私から見ると、これまでの政党公約と何ら違
いはありません。あたかも政策が新しくなったような幻想を有権者に抱かせる
のは、不幸なことですね。

 また最近は、国政でも地方政治でも、松下政経塾出身者が多いですが、彼ら
を見ていると、社会への怒りや憤りよりも、受験勉強としての選挙、優等生的
なノウハウばかりを重視しているように見えます。二世議員についても、能力
がないとは言いませんが、仮に私の親が政治家だったら、私はあえて政治家を
選ばないですね。(了)

(インタビュー・構成/里見響子)

*むらお・のぶたか 1955年岐阜県生まれ。一ツ橋大学経済学部卒業後、
大蔵省入省。外務省在ニューヨーク日本国総領事館副領事、三重県総務部長、
財務省主計局主計官、国債課長、環境省総合環境政策局総務課長を経て、20
03年4月に三重県知事選に、既存政党からの支持・応援を一切受けない“純
粋無党派”として立候補するも、次々点で落選。現在は、関西学院大学教授。
01年2月に自ら設立し、県知事選立候補で代表を退き脱会した「納税者のた
めの行革推進ネットワーク WHY NOT」に、03年11月、世話人とし
て復帰。

◎関連サイト
■村尾信尚HP
http://www.murao-n.net/
■プランB
http://www.murao-n.net/plan_b.html
■納税者のための行政推進ネットワーク WHY NOT
http://www5e.biglobe.ne.jp/~whynot/
■もうひとつの日本を考える会
http://www.murao-n.net/nippon.html

[opinion/主張]
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02:「市民派」再考
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清水直子 Shimizu Naoko フリーライター

★あえて分類すると★

「市民派」の欠点をあげつらうならまだしも、断片的、個人的な経験やイメー
ジで「市民派」を批判して悦に入るような場面に出くわすと、何だかなぁ、と
思います。もう少し腑分けしてくれないと、あいつらはだめだって言うことで、
俺は違う、俺はもっと新しい、俺はもっとすごいって言いたいだけ?って思っ
たりして。

 弱点や欠点を批判するなら何に起因するのかがはっきりした方が建設的だと
思い、「市民派」の分類をしてみました。ちょっと強引ですが、日本で、次の
ような人たちが、重なり合ったりしながら市民派と名乗っているようにみえる
のですが、どうでしょうか。

【1】革新系無所属を「市民派」と言い換えた(革新勢力が組織の枠を超えて
   共同で選挙に取り組むときの合い言葉が「市民」「市民派」)
【2】たとえば、主婦や若者のように、権威、権力、利権と遠い人の「視点」
   を強調しようとするとき、その立場に立った政策を実現したいから「市
   民派」(政党に所属していることもある)
【3】政党、組織に所属していないことを強調したいから「市民派」
【4】具体的な市民運動の意志を議会に反映させたいとき、行政に対して「市
   民派」
【5】とくにポリシーはないけれど通りがいいから「市民派」

★もう悪口は終わりにしなければ★

 コラボの樺嶋さんからは、1は昔の、2が今の主流、3は無党派、4は住民、
5が困りもの、という趣旨のコメントをいただきました。やはり、1~5の人、
特徴、弱点を十把一絡げに批判するのは無理があるように思います。「市民派」
を名乗る人も多種多様。「市民派のここがおかしい」という指摘は、どの程度
一般化できるのかを検証する必要があります。

 もう、悪口を言っていれば笑いがとれるとか、新しい可能性を感じさせると
いうものでもないでしょうから。

*しみず・なおこ 1973年生まれ。中央大学経済学部卒業。業界誌編集記
者を経て、98年よりフリーライター。雇用・労働、暮らしをテーマに取材、
執筆。著書『知らないと損するパート&契約社員の労働法』(東洋経済新報社)、
共著書『闘う首長-自立する地方自治体とは』(教育史料出版会)、『がんば
れ美術館ボランティア』(淡交社)、『“ほっ”とする生理痛の本』(築地書
館)。

[books review/テーマ書評]
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03:政治家たちが記してきた政策本
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★ベストセラーとなった田中角栄、小沢一郎の著書★

 最近、政治家が語る言葉が軽いなぁ、とは思いませんか。例えば、「朝まで
生テレビ」でみる議論。テレビだからできる、開かれた議論の場といえばその
とおりなのですが、それにしても言葉が軽い、みんなが同時にしゃべる、揚げ
足の取り合いが多い……。

 2001年8月号の『文藝春秋』に、作家の高村薫さんによる「宰相小泉の
空虚なる語法」が掲載されています。小泉語法の基本的な特徴は「簡潔」「断
定」「すり替え」「繰り返し」だとしたうえで、最後に高村さんは「語法は個
人のたんなる癖ではなく、物事を語るスタイルでもない。個人の意思が言葉に
なって姿をあらわす、まさにその過程であり、骨組みであり、思考そのもので
もある。政治が言葉であると言われる所以もそこにあって、語法はそのまま政
治であり、政治家である。」と述べています。

 では、政治家の「本」というのはどうか。実は私自身、仕事柄、政治家本の
企画を出すことがあるのですが、会議結果は決まって「政治の本は売れない」
で不可。

 しかし、古くは田中角栄著『日本列島改造論』(日刊工業新聞社 1972
年)が90万部のベストセラーになりました。この本は田中氏の自民党総裁選
出馬に伴う政権構想として、通産省の関係者と田中氏に近い新聞記者たちが書
いたものです。爆発的ヒット作となった本書が皮肉にも書中で開発計画予定地
の個所付けをしたかたちになり、その影響力は地価高騰を招くという結果とな
りました(この本の出版過程は『田中角栄失脚』(塩田潮著 文春新書 20
02年)に詳しい)。

 また、10年前の「政治の季節」だった1993年には、小沢一郎著『日本
改造計画』(講談社 1993年)がありました。60万部を超えるベストセ
ラーになった本書には、2大政党制や地方分権の提言が記され、当時の小沢ブ
ームを追い風に政策本としては久しぶりのヒットとなりました。

★政治家志望者に告ぐ!★

 さて、それからさらに10年が経過しました。「影響力」という点からみて、
最近の政治家執筆本でいわゆるヒット作があったでしょうか。政策本、なんて
いっても、選挙前のパブ本や一体誰が書いているのだろうかという怪しいもの
ばかりが大抵広告商品として量産されているのが現実なのは、本当に淋しい限
りです。

 前置きが長くなりました。やはり政治家は言葉が命、少なくとも市販性があ
って、あくまで「読まれるためにつくった本」というのを捜してみました。こ
の書き手だから書ける本というもので、いくつかご紹介します。

『わたしは闘う』(野中広務著 文藝春秋 1996年、文春文庫 1999
年)。本書は政治家本にありがちな「大所高所からの政策論」でない、「Aで
もあり、だがBだ式の逃げがうって」ない本として書いたものだと本人が記し
たように、宿敵・小沢一郎氏に対して容赦ない批判を展開した本として時々紹
介される(その後の豹変には驚きです)本ですが、最後の一文には私も同感せ
ざるを得ません。その声を今の自民党に向けて訴えるのが、野中氏の最後のご
奉公ではないでしょうか。

「若い人で『政治家になりたい』という人がいたら私はやっぱり地方議員から
やってこいと言う。
 いくら選挙基盤を田舎の農村地帯に置いていても、東京で生まれたり、東京
でほとんど学生生活を送った人というのは、地方の本当の痛みとか、苦しみを
肌で感じることはない。地方政治家というのは、その地方の本当の痛みや苦し
さを知っている。その体験の中から、国会活動をし、政策を考える。(中略)
 政治家というものは、ある日、親父が死んだから、東京から帰って選挙をや
るという性質のものではない」

 続いて、『知事 地方から日本が変わる』(橋本大二郎著 平凡社新書 2
001年)と『国会議員』(上田耕一郎著 平凡社新書 1999年)。この
2冊はどちらも知事、国会議員という職業を自身の経験から紹介するという主
旨の本です。特に後者は、共産党の元大物参院議員が新書として刊行した珍し
い本ですが、本書には共産党の候補者選定システムやお金の集め方が書かれて
います。中でも「なんでも反対の共産党」というのは違うらしく、上田氏の在
職中「24年間で(政府法案)成立件数2174件のうち、賛成は1120件
で51.5パーセント、反対が1023件で47.1パーセントだった。棄権
が31件、1.4パーセント。賛成のほうが多く、『反対のための反対』は一
本もない」という念の入れようです。

★政界から発せられる言葉は「危篤」だ★

 さて、最後は本稿のまとめらしく『政治家の文章』(武田泰淳著 岩波新書
 1960年、復刊本は1998年)。あの『ヒカリゴケ』を書いた作家が、
司馬遷の『史記』に習い、戦前・中・後の政治家の文章を解読しながら、その
素顔を読みとろうとした意欲作です。主な対象人物は、宇垣一成、浜口雄幸、
芦田均、荒木貞夫、近衛文麿、重光葵、徳田球一の7人。

 本書の中の「『政党全滅』をめぐるもろもろの文章」という章に、ぜひここ
で紹介したい文章があります。これは今でも充分、傾聴に値する言葉です。

「(国策研究会のプランに対して)いろいろと『確立』して下さるのは有がた
いが、この立案者たちの一ばん『確立』したかったのは、つまるところ『軍政
一体の体制』にすぎなかったのである。一鉱夫、一農民にまで、『自覚』や
『自負』や『指導者意識』を配給して下さるのは、いかにも親切そうに見える。
しかし、ではどうやったら、農民、労働者の暮しをゆたかにするつもりなのか、
その『計画』は、一向に『確立』されていないのである。『強化』したり『再
編成』したり『設置』したり『結成』したり『着意』したり『企画』したり
『導入』したり『連結』したり『指導』したり、『具有』せしめたり『展開』
せしめたり、『線に副わ』しめたり、何とそうぞうしい言葉の羅列であろうか。
 言葉とは、我らにとって、そも何ものなのであろうか。悪用された言葉の、
そらおそろしい威力は、言葉そのものの本質に由来するものなのだろうか。言
葉の醜さは、言葉の美しさとともに、永久に消えないものなのだろうか」

 マニフェストばやりの昨今、政党の政策要領の質を高めようというのもわか
りますが、まずは政治家個々人の素顔が行間からにじみ出る文章を書いてほし
い。仕事柄、そう願わずにはいられません。(了)

◎関連サイト
■小泉内閣メールマガジン
http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/
■民主党関係メールマガジン一覧
http://www.eda-jp.com/mm/dpj.html

[essay/エッセイ――60年代生まれの思い]
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04:私はトルコで考えた。
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野中恵子 Nonaka Keiko 地域研究者(トルコ)

★正直、腹が立つ★

 ここ10年、選挙の投票は、地方・国政選挙とも日本にいたときは皆勤賞も
のです(笑)。当然、11月の総選挙でも投票に出かけました。投票してはじ
めて、政治に対して文句をつけられると思うんです。自分で何もしないで愚痴
ばかり言っている人が多いですよね。そういう人をみると正直、腹が立ちます。

 私の大学時代の80年代後半は、バブル景気の真っ只中。当時、周囲の友人
たちは、高価な服装に身をつつみ、「飲み会だ」「夏は○○へ、冬は△△へ旅
行に」と、遊び方もお金の使い方も派手でした。だけど私は、そうした行動に
少し疑問を持っていました。別に清貧が美しいと思っていたわけではないので
すが、「不相応な贅沢はけしからん」といった意識がどこかにあったんです
(笑)。なにより、学生でしょう。結局、親、つまりは他人が稼いだお金で暮
らせていて、そのうえで遊んでいるんですから。

 90年代以降、日本は政治も経済もパッとしませんよね。こうした依存心が、
ますます強くなっているからだと思うんです。自分が働かなくても「なんとか
なる」といった感覚が。いま国民年金を支払っていない人が4割いることなど
は、典型ですね。どこかで誰かが何とかしてくれると思っている。日本人は自
己責任という考えが本当に稀薄。いや、日本自体そうかな。自らの国の防衛に
しても、アメリカなどの他国に頼ったままでいいんでしょうか。あてにできる
と信じて疑わないことに疑問も感じますし、私は自己責任を明確化するという
意味で、憲法改正も望んでいますよ。

 学生の頃は、社会的な意識はあったほうでしょうが、さして深く政治に関心
があったわけでもありません。それがトルコという国に行き、その現実を見て、
「政治とは、人々の暮らしにこんなに影響するものなんだ」と、気づかされた
思いです。

★国際情勢に左右される国に来て★

 私がはじめてトルコを訪れたのは、1987年。悩める若者として、何かを
模索する冒険の旅でした。しかし、トルコの人たちと話し、彼らが持つ、やる
せない気持ちを知ったことは、ドキリとさせられる体験でした。

 当時、末期とはいえ冷戦でした。トルコは彼らの力では決して取り除くこと
ができない国際情勢につねに翻弄され、それが生活にまで影響を及ぼしていた
んです。ソ連と国境を接しながらも、アメリカと軍事同盟を結んでいる関係で、
とくに色濃くあったのですね。

 私がトルコへの旅行でいちばん心に残ったのは、トラブソンという黒海沿岸
の小さな街で出会った妊婦の教師の話でした。片言の英語で穏やかにトラブソ
ンついて語っていた彼女が、突然、怒りを露わにして、ソ連について話し出し
たのです。

「いつもこうなのよ。ソ連だの、アメリカだの、超大国のせいで苦しめられる
のはけっきょく私たち。お腹の赤ちゃんは大丈夫なのか、心配で、心配で……」

 前年4月に起こったチェルノブイリ事故から間もないころ、彼女は妊娠して
いたのでした。原発事故というのは、象徴的な一事例としてあげたこと。彼女
が言いたかったのは、冷戦構造の超大国の利害関係の中で、実際にその犠牲に
なっているのは自分たちであることなのです。ソ連と長い国境を接しているが
ゆえに、アメリカから、重要な防衛線とされている国の自分たちが。

 私はこの旅行で、東西冷戦の狭間で翻弄されるトルコについて興味を持ち、
88年から90年までイスタンブールに留学をかねて滞在しました。そこで、
見れば見るほど、トルコの地政学上の位置から、関係国との政治的・宗教的な
呪縛や軋轢が、直接人々の暮らしに深くかかわっている現実に、あらためて気
づかされました。また私がトルコにいたときは湾岸戦争直前で、隣国イラクを
めぐる空気が不穏になり、宗教がらみのテロも散発していたときです。そうい
った苦しさも、体験として感じることになりました。

★自らのことを自分たち自身考えよ★

 翻って日本です。日本は北朝鮮問題があるとはいえ、国際関係上、直接的な
問題が突きつけられることが少なく、そしてなにより大きな経済力を持った国
です。日本はトルコより多くの自由と可能性を持っています。

 それにもかかわらず、多くの日本人が、積極的に自らの将来について考える
ことをしない。フリーハンドの部分が多いにもかかわらず、なかば放棄してい
る。政府でさえも他国の指示に言われるがままに従おうとする。もう少し、自
らの国のことを自分たち自身で考えていいのではないでしょうか。この依存心
が強く、自らの明確な意思を作らない、どうにかなると思い続ける日本に、未
来があるのか訝しく思わざるをえません。私一人が怒っても仕方がないのかも
しれませんが(笑)、日々怒りはやみませんね。

*のなか・けいこ 1965年高知県生まれ。88年関西学院大学文学部英文
科卒。同年から90年までトルコに、93年から95年までドイツに滞在し、
トルコ問題を研究。著書に『ドイツの中のトルコ――移民社会の証言』(柘植
書房新社)、『ゾーリンゲンの悲劇――トルコ人労働者移民放火殺人』(三一
書房)。共著に『イスタンブール歴史の旅』(小学館)、『「対テロ」戦争と
イスラム社会』(岩波新書)。

◎関連サイト
■トルコ・トラベル・ガイド
http://home.turkey.or.jp/
■トルコ関連の書籍・出版物
http://i16.jp/books/ALPHAXA5C8A5EBA5B3.html
■トルコ語関係の出版物
http://myshop.esbooks.co.jp/myshop/gecekondu

[special report/特別報告]
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05:シンポジウム「トップ当選の新人議員は見た! 地方議会のバカの壁」
             (NPO法人コラボ・NPO法人一新塾共催)
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 最も多くの有権者から信任された新人議員が地方議会の実態を語るシンポジ
ウム「トップ当選の新人議員は見た!地方議会のバカの壁」が11月21日に
東京・豊島区立勤労者福祉会館で行われた。平日、しかも3連休前日の夜にも
かかわらず、地方自治に関心をもつ住民や地方議員、自治体職員など、およそ
80人が参加。遠くは島根県松江市、岡山市、愛知県豊田市、茨城県つくば市
から現職議員が駆けつけ、今春の統一地方選で当選した若いパネリスト議員た
ちの発言に耳を傾けていた。
(コーディネーター、パネリストの肩書と関連サイトはこの記事の末尾を参照)

 シンポジウムでは、トップ当選の背景や当選後半年間に垣間見た議会の実態
など多岐にわたるテーマを、竹内謙・前鎌倉市長の進行により2時間40分に
わたって話し合った。項目別に整理して報告する。

●トップ当選●

 東京都多摩市議選史上、2位当選者との差が初のダブルスコアだった岩永ひ
さかさん(26)は、その大量得票の原因について、「1年前に補選で出てい
たこと、男性より女性のほうが清潔感があること、それに若い。たぶん、それ
だけで当選したのでしょう」と自己分析。大学の恩師からは「おそらく、多く
のおじさんたちはキャバクラで指名するような気分で投票したのだろう」と言
われたというエピソードを披露し、「いまの政治を変えたいと思う人たちが、
とりあえず私に期待してみようと一票を入れてくれたと思っている」と結んだ。

 また、埼玉県春日部市議の白土幸仁氏(29)は、「駅立ちをしようと思い、
駅に行ったができず、ついに4回目に彼女の応援を得てようやくできた」とい
う新人ならではの苦労話を紹介し、「自分の思いは、自分の言葉で飾らずに語
ることを大事にした。心の底からの熱い思いを大切にして、漢字を読み間違え
たり、語句や文法を間違えてもいいというつもりで、1日に15回以上、自分
のまちをどうしたいかを街頭演説で語り続けた」ことが多くの支持を集めたの
ではないかと振り返った。

 いずれのパネリストにとっても「トップ当選」というのは「結果」であり、
それを「目的」に選挙を戦ってきたわけではない。だから、その原因を正確に
は掴みかねていたようだが、「(駅立ちなどにより)無党派層に対して広く働
きかけ、そことのパイプ役になることができた。自治会などの組織を無理に固
めようとする政治家を、有権者は見下すところがある」(さいたま市議の土井
裕之氏)という最近の有権者の投票行動が最大公約数的な答えといえそうだ。

●支援者との関係●

 その土井氏(32)は、合併によってさいたま市が誕生する際、議員任期を
特例で延長することに抗議して、浦和市議を1期半ばで辞任。「浪人生活」を
挟んで、この春、さいたま市議となった。「1期目(浦和市議時代)は一匹狼
で、1人でも反対していた。いまは、自分との共通項を探している。支持母体
が違えば、(政治行動が)違って当たり前の世界。共通項を見つけて歩み寄る
ことは、やる気になればできる。ただ、支持者との関係では、『なんだ、お前
は妥協しているのか。なんで、あいつと付き合っているのだ』と言われるジレ
ンマもある」とか。

 自分の政策を実現しようとすれば、議会内で「対立」「孤立」ばかりはして
いられないが、そのために支援者の期待を裏切ることもある。「自分を応援し
てくれた方と、当選後にどういう関係を作っていくのかが課題となる」。市民
団体的な理想論だけでは割り切れない、現実政治のなかで苦労を味わった土井
氏ならではの指摘だった。

●与党意識●

 党籍は民主党だが、執行部に対する是々非々のスタンスを確保するため議会
では「無所属の会」に所属している東京都中野区議・奥田けんじ氏(28)の
目に映る区議会は「ねじれ」ている。選挙で現職の区長を推した側は議会では
少数派だが、与党意識を持っている。一方、区長自身は議会対策上、最大会派
と良好な関係を保ちたいと考えている。その結果、「数(多数)のうえで与党
意識を持つ方と、意識(選挙時)のうえで与党意識を持つ方がたくさんになっ
て総与党現象」になっているという。

「地方議会には与野党という構図は当たらない。首長と議会は対峙できる関係
でないといけないのに、実際は、みんなが与党だと思っているから、執行部の
提案に反対できない。これでは議会がないのと変わらない」と奥田氏。そうな
る背景として「意識が国の模倣だ。オレたちはミニチュア版の国会議員だと思
ってスタートしているから、そういった大きな勘違いが平気でできる」とも語
った。

●バカの壁●

 シンポのタイトルにもなった地方議会における「バカの壁」とは何なのか。
パネリストの発言を簡略に紹介しよう。

「(議会では)隣の議員に『どう思う?』と問いかけることはなく、『私は、
こう思う』と理事者側へ言って、あっちも素っ気ない回答をするだけ。隣席の
議員に問いかけたいのに、そういうルールがなく、1人でやっているのと変わ
らない」(奥田氏)

「(期数を重ねている議員を見て思うこと)当選しないといけない、とばかり
考えてしまうと、人の顔が票に見えてくる。『この人は自分に投票してくれる
のだろうか』と考えながらでしか活動していけない」(岩永氏)

「だれを議長にするか、副議長にするか、委員長にするかという、役職をめぐ
る繊細なバランスのなかで成り立っているのが議会と議員」(白土氏)

「議員が役割を果たすというのは、係長、課長、部長と流れていく行政機関の
プロセスの中に入り込むこと。立案の過程に入り込んでいるので、議会に出さ
れたときには、賛成起立するだけ」(土井氏)

●コーディネーター総括●

 最後に竹内氏は「釣バカの人たちは、釣をやらない人とは会話が成り立たな
い。議会は、議員バカではいけないと思う。一般の市民と話をし、苦労すると
ころから改革は生まれると思うので、全国にこういう元気でフレッシュな議員
が生まれることを期待している」と議論を締めくくった。

 今回のシンポを企画したNPO法人コラボの宮川純一副代表理事は「議員個
人と対支援者、対住民、対行政・首長という地方議会の根幹にまで話が及んだ。
『支援者が諸刃の刃になる』、『行政内部に入り込もうとする議会』、『首長
に擦り寄ろうとする議員』といった発言も出た。これは、議員生活に未だ違和
感を覚える『健全な』新人だからこそ」と、その成果に満足気だ。

 さらに宮川氏は「投票率を上げようとしない議員。行政に一生懸命入り込み、
それが手柄だという議員。そうした議員は議会でしか生きられないが、じつは、
そういう議会の姿を長い間認めてきた有権者の意識のなかにも、『どうせ、政
治なんて変わりはしないさ』という『バカの壁』があるのかもしれない」とも
語っている。

※質疑を含めたシンポジウムの抄録を次号(2004年1月発行)で紹介します。

(報告者/樺嶋秀吉)

■コーディネーター・パネリストの関連サイト
竹内謙氏(前神奈川県鎌倉市長、ネット新聞「JanJan」編集委員長)
http://www.janjan.jp/index.php
土井裕之氏(さいたま市議・無所属)=1期目(浦和市議1期経験)
http://www4.ocn.ne.jp/~doi/
奥田けんじ氏(東京都中野区議・無所属)=1期目
http://okudakenji.com/
岩永ひさか氏(東京都多摩市議・多摩生活者ネットワーク)
       =2期目(1期目補選当選)
http://www.tama.jp/tama-net/iwanaga/
白土幸仁氏(埼玉県春日部市議・無所属)=1期目
http://www007.upp.so-net.ne.jp/shirato/

[postscript/あとがき]
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06:夫婦別姓と僕
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 無職の同居人の健康保険の非加入問題を解消しなければならず、区役所で同
居人を「妻」とする届けを出してきました。

 サラリーマンである僕は、この問題について会社と相談したのですが、婚姻
届を出さずとも、住民票の「続柄」で「妻」と明記すればなんとかするとのこ
と(同時に、前年のパートナーの収入証明書提出)。姓を変えるのはなんだか
なと思っていたので、この話に乗りました。

 結果、役所の窓口にそう伝えると「『未届けの妻』という形がありますから」
とあっさり、僕らと健保の問題双方をクリアする形を取ってくれました。もら
った住民票には世帯主のところに僕の姓名。下に同居人の姓名。そして続柄に
「妻(未届け)」と印字されていました。

 今回の総選挙で、高市早苗や山谷えり子といった夫婦別姓に対して、女性の
“伝統派”とでも言うべき人たちが落選しました。逆に夫婦別姓法案を推進す
る民主党・公明党が躍進。自民党内部でも夫婦別姓への支持は実際には多いと
聞くし、少しは夫婦別姓の法律も進捗するのかなと思っています。

 とはいえ、「民法改正という国家の基本原則に関すること」(自民党議員)
と言われるように、自民党は党議拘束を外さないので、“おえらいおじさん”
たちが支配する部会で放置され、まったく動かないかもしれません。いずれに
せよ、憲法のように、条文とは乖離した現実的な処理はゆっくりと進んでいる
んですけれど。(了)
(S)

※次号の発行は来年1月5日頃となる予定です。

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発行人 樺嶋秀吉(NPO法人コラボ代表理事)
発行  特定非営利活動法人(NPO法人)コラボ
サイト http://www.npo-collabo.org/ (購読の申し込みもこちらから)
連絡先 info@npo-collabo.org
〒343-0011 埼玉県越谷市大字増林5797番地
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