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2012年5月17日 (木)

コラボ vol.08

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コラボ vol.8                       2004-02-01
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HEADLINE (6 articles)
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[feature/特集]
市民の「自治能力」をいかに高めるか    福嶋浩彦(千葉県我孫子市長)
01:市の単独補助金、完全見直しの成果は
02:陳情政治か、市民自治かの岐路

[opinion/主張]
03:「現代のブラック・ジャック」は本当に悪者なのか
  ――望まれる医療行政の抜本的改革 木村恭子(外国通信社エディター)

[books review/テーマ書評]
04:議員秘書たちの「しごと」            宮川純一(編集者)

[essay/エッセイ]
05:「ダイナミック」なき国への憂鬱と希望
                 柏木明子(『ワシントンポスト』記者)
[postscript/あとがき]
06:日本と韓国、メディアの度量
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[feature/特集]
市民の「自治能力」をいかに高めるか
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01:市の単独補助金、見直しの成果は
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福嶋浩彦 Fukushima Hirohiko 千葉県我孫子市長

<最近の地方分権論議は、三位一体改革といった財源(税源)移譲問題にばか
り焦点が当てられている。だが、分権の本来の意味は、地域に暮らす人が自分
たちの地域の課題を自分たちで解決していくことだ。そのためには、行政ばか
りでなく、住民にも自治能力が必要だ。自身も生協活動など市民運動の経験が
あり、市長になってからは「市民自治」の実践を掲げて市政運営に臨んでいる
福嶋浩彦氏に、分権時代の住民が求められているものは何かを訊いた>

★“合併”を拒否し、単独での生き残りを試みる理由★

―― 約13万という我孫子市の人口は、市民自治を実践するのに最適な規模
ですか?

福嶋 我孫子市は昨年、合併をしないという結論を出したのですが、一番大き
な理由はその点です。いまの13万人というのは、本当にいい規模だと思って
います。それなりに自立できる財政力もありますし、なにより、行政と市民の
「顔が見える」関係が成立する。職員にしてみると、自分が担当している仕事
で、市内でどんな問題があって、市民の誰がどんな意見を持っているかがだい
たいわかります。市長も、市政の重要な課題については、ほぼ自分で把握でき
ます。

 もっと重要なのは、市民の側から考えたときです。ある問題を本当になんと
かしたいと考えたときに、本気になって市民全体に訴えて世論を作れば、行政
の方針を変えることができる――そういうリアリティを市民が実感できる人口
規模だと思います。50万、100万都市だと、市民の力で実際に市を動かす
という発想にはなかなかなっていきません。

 自治体が分権の時代を切り拓いていくうえで一番必要なのは自立の精神です。
行政も市民も、地域のことは自分たち自身で決めていくという、自己責任、自
己決定の強い意志を持たなければなにも始まりません。行政と市民が共に自立
の精神を育てていくという意味でも、いまの我孫子市は最適規模だと思ってい
ます。

★新たな既得権には決してしない★

―― 市民自治の取り組みとして、市単独の補助金(約2億円)をいったん白
紙にして公募する制度を2000年から始めましたが、4年目を迎えての成果
はどうですか?

福嶋 目的の一つは、既得権を一切断ち切ること。これはほぼできたと思って
います。行政の中で検討していたのでは絶対に切れないだろうと思われた補助
金、例えば医師会に対するものなども本当にゼロにしてしまいました。審査に
当たった、市民による検討委員会の結論は明快で、「医者はお金持ちなんだか
ら、貧乏な市が補助する必要はない」というものでした。

 一度決まった補助も3年を限度に見直すことになっているので、2003年
の2回目の見直しのときには、NPO団体など2000年から新たに補助が始
まったところもちゃんと審査しました。新たな既得権にはしないということで
す。その際に考え方として整理したのは、「行政が補助するということは、そ
の活動を評価している証ではない」ということでした。補助は、その団体が自
立するための支援なのですから、市が一番高く評価している「自立できる団体」
には補助しないことになるわけです。

 市が補助をする団体は、それよりも1ランク低い団体、つまり、活動の目的
はいいけれども、まだ自立はできないという団体です。実際、見直しで補助を
打ち切ったNPO団体の中には「3年前より評価が下がったのか」と不満を持
つところもありましたが、「逆です。上がったんです」と説明して納得しても
らいました。

[feature/特集]
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02:陳情政治か、市民自治かの岐路
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★お互い納得できる合意をつくるための試行錯誤★

―― 今後、市民にはどんなことを求めていきますか?

福嶋 補助金公募制度のもう一つの目的は、行政と市民の関係を変えることで
した。税金が財源の補助金を、どこの団体、どんな活動に出せば、本当にまち
づくりがよくなるのか。そこをちゃんと議論できるような関係に、行政と市民、
あるいは市民同士がなりたいということです。ですから、検討委員会の決定で
点数の低かった団体には公開で反論できるヒアリングの場を設けています。そ
こでの反論によって、結論がひっくり返ることもあります。

 じつは、このヒアリングも市民の検討委員会にやってほしかったのですが、
審査だけで膨大な仕事量になる委員さんからは「さすがにそこまでは勘弁して
ほしい」と言われました。すぐには無理かも知れませんが、将来はヒアリング
も市民同士でできればいいと思っています。

 市民同士が議論をするときには、お互いに緊張感があるんです。ヘンな話を
すると「それは、あなたのエゴではないか」とか「それは事実と違う」と、相
手からすぐに反論されますから。行政に対しては、何言ってもOKみたいなと
ころがある。でも市民同士の場合は、きちんと相手を説得しないといけない。

 これからは、市民も自治能力を高めることが必要不可欠です。市民の自治能
力とは、一言で言えば、異なる意見を持つ市民同士がきちんと対話でき、お互
いに納得できる合意を自らつくりだしていくこと。残念ながら、多くの場合、
市民は異なる意見の人と話し合うより、自分たちの意見に沿って行政が動くよ
うに市役所に要求します。そのほうが楽だからです。でも、この自治能力があ
るかないかで、市政への参加も、陳情政治の延長でしかない参加か、市民自治
につながる参加かに分かれることになるでしょう。

★議論できる場の提供と徹底した情報開示★

―― その市民同士の対話を行政はどうコーディネートしていきますか?

福嶋 何でもかんでも行政を批判し、要求するという感性ではなくて、自分た
ちのことは自分たちで決めていくという意識を市民自身が持たないと、市民同
士の議論にもならないと思います。市としても、市民にそういう意識を持って
もらえるような努力をします。そのための機会をつくったり、もっともっと情
報を出していく。

 昨年から我孫子市では政策づくりに入る前の情報も公開しています。一つは、
議員が職員に直接要望したときの記録。もう一つは、自治会や業界団体や○○
連合会というような公共性の高い民間団体から市が要望を受けたときの、その
要望内容と市がどう回答したかです。

 例えば自治会から要望があって実行する場合、いままでは、具体的な実行段
階になって初めて反対意見が出てきて、そこで再検討ということがありました。
これからは、要望を受けて「やります」と言った段階で全部公表します。そう
することで、最初の段階で反対意見が出て、議論できるようにする。市が、そ
の自治会と反対意見を持つ人の話し合いの場をセットすることもできます。

 行政マンも市民の議論をリードしていくことにまだ不慣れです。でも、まち
づくりの実践の中で試行錯誤しながら、行政も市民も、より成熟した自治能力
を身につけていきたいと思っています。そのとき初めて、真の地方分権の時代
がやってくるのです。(了)

(インタビュー・構成/樺嶋秀吉)

*ふくしま・ひろひこ 1956年鳥取県生まれ。筑波大学を81年除籍。社
会新報記者を経て、83年12月に我孫子市議に初当選。市議3期目の95年
1月、「停滞市政の変革」を訴えて市長選挙に立候補し当選。2003年の市
長選では、改革の2期8年の実績を強調する一方、子育て支援の推進、シニア
世代が活躍する環境づくりなどを公約に掲げ、無投票で3選を果たした。市長
選の無投票は28年ぶりだった。

◎関連サイト
■我孫子市役所
http://www.city.abiko.chiba.jp/
■我孫子市の補助金交付制度
http://www.city.abiko.chiba.jp/information/zaisei/hojokin.html
■ふるさと手賀沼ガイド
http://www.teganuma.jp/

[opinion/主張]
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03:「現代のブラック・ジャック」は本当に悪者なのか
  ――望まれる医療行政の抜本的改革
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木村恭子 Kimura Kyoko 外国通信社エディター

★背筋が寒くなる思い★

 昨年末から年明けにかけ、病院通いが続いた。受け付けが「きょうは何科に
おかかりですか」と聞くので、自分で診察科をあらかじめ決めておかなくては
と、自宅にある家庭医学本を取り出し、症状に最も近い病名を見つけ、診断科
を選んだ。しかし、結局は別の科の診察が適切であることがわかり、その科の
予約日がくる間に症状が悪化、完治に時間がかかってしまった。命に関わる病
気だったら、と思うと背筋が寒くなった。

 欧米の病院では、受け付けの際に、患者の症状に従って適切な科を判断して
くれるプロフェッショナルな人材が配置されていると聞いた。一方、日本の医
療現場は、というと、テレビドラマ「白い巨塔」(フジテレビ系)にみるよう
に、最初の放映時から30年以上たっても、ほとんど変わっていない。日本の
医療現場の構造問題を実感していたところに、その思いを一層強くするニュー
スを目にした。

★理にかなった「混合医療」★ 

 1月13、14両日の複数の大手紙に、神奈川の病院で「がん手術費不正徴
収」「保険診療に上乗せ負担」などとする記事が掲載された。記事の概略は、
1)厚生労働省が原則禁止している「混合診療」(健康保険を使う診療と、保
険がきかない薬や検査、治療などの自由診療を一緒に行うこと)を、同病院の
外科医が過去5年間続けていた、2)保険対象外の部分を患者から実費で徴収
したほか、保険適用されている材料代を徴収したり、手術の医療報酬点数を高
額請求していた、3)健康保険法の規則に違反している疑いもある--という
ものだ。

 実は、渦中の外科医を、私は10年以上前から知っている。彼は、日本の医
療制度に不満を持ち米国に長く滞在。乳ガン治療で患者負担が少ない手術法の
草分けとして、マスコミで「現代のブラックジャック」と紹介されたこともあ
る人物だ。

 新聞を読んだ限りでは、この事件の問題は、混合診療が認められていない点
に尽きると思った。厚労省が例外的に認めた場合以外は、一部でも保険適用外
の治療が入れば、「自由診療」とみなされ、本来は保険がきく部分も含め、患
者がすべて実費を払わなければならないことを、不覚にも今回、初めて知った。

 ただでさえ、新薬の開発や手術方法の進展が目覚しいガン治療の分野で、日
本の保険制度の適用が追いつかないにしても、海外で実績のある新薬や検査な
どの適用を望む患者もいるだろう。しかしそれを望めば、保険は一切きかなく
なるため、月々の医療費が100万円を超えたり、地方から東京に自由診療を
受けにきて交通費を含め3カ月で600万円以上もかかっているケースもある
そうだ。ガンになった精神的負担に加え、経済的負担の大きさは計り知れない。

 保険がきく部分については保険でまかない、保険外でも患者が望み、医師が
最善の治療だと判断した治療については実費を払う--こんな常識的と思える
ことさえも、現在の医療行政ではまかり通らない。

 前出の事件は、患者からの問い合わせが発端となって発覚したようだが、医
師が患者に対する説明責任を必ずしも果たしていなかったようなので、これは
改善の余地があるとしても、最良の医療を望む患者側に立てば、保険外の実費
(4万円~6万円程度)のみを負担することの方が、保険がきく部分も含めて
全額負担する現行法上の手段よりも、“理にかなう”と考えるのが自然ではな
いだろうか。

 手術の材料代にしても、保険で認めている以上の高額な器具を使い、高度な
技術を施せば、自ずと保険の上乗せ分が出てくるが、これも患者から実費をも
らわない以外は、病院の持ち出しになってしまう。当該の医師は、「患者によ
りよい医療を施すために、保険適用外の検査や手術を行った」「病院の持ち出
しになることを避けるために、患者から実費を払ってもらった」などと会見で
説明している。

★後手後手だった政府の対応★

 混合診療の問題は、政府レベルでも検討されつつある。政府の総合規制改革
会議(議長=宮内義彦オリックス会長)が、昨年12月に小泉首相に提出した
最終答申の中で、省庁や業界団体の抵抗が強い項目の1つに「混合診療の解禁」
を挙げたが、「基本的に大きな進展はない」として、引き続き規制改革に取り
組むよう訴えた。

 さらに、今年に入り厚労省は、ガン治療の専門家らによる「抗がん剤併用療
法に関する検討会」(座長=黒川清・東海大教授)を設置し、混合治療の問題
や保険適用外の抗がん剤の扱いなどについて検討を始めた。

 政府の対応は「遅ればせながら」の感は否めないが、この際、ユーザー(患
者)へのサービスの観点からも、混合医療問題を含め医療制度全般における抜
本的な改革に取り組んでほしい、と切に願う。(了)

*きむら・きょうこ 津田塾大学卒。読売新聞社編集局で、地方部(長野支局、
八王子支局、整理)、政治部、世論調査部の記者を経験。筑波大学大学院(社
会人コース)修了後、海外勤務にあこがれ外資系通信社に転職。現在、米金融
経済通信社「テレレート・ニュース」エディター。関心テーマは、「いつの間
にか生きにくくなった日本の軌道修正」「将来への漠然たる不安を解消するた
めに何をすべきか」など。昨秋、NPO法人コラボ会員に。福島県生まれ。

◎関連サイト
■「がん手術費不正徴収」に関する『毎日新聞』の記事
http://www.mainichi.co.jp/women/news/200401/14-06.html
■総合規制改革会議HP
http://www8.cao.go.jp/kisei/
■抗がん剤併用療法に関する検討会(第1回開催要項)
※議事録はまだ公開されていない
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0106-1.html

[books review/テーマ書評]
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04:議員秘書たちの「しごと」
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

★衆参合わせて1506人★

 時に「先生」の黒子として水面下で汗を流し、そして時には責任をもかぶる。
まして、「先生」が落選すれば、即解雇もありえる。これほど不条理で不安定
な仕事もない、というのが秘書のしごと。

 にもかかわらず、現実に各選挙区や永田町では数多くの秘書が日々汗と涙と
冷や汗を流しています。国会議員には法的に保障された第一、第二公設秘書、
それに政策秘書が議員の行動をサポートしており、これに加えて議員個人が雇
用主かつ給与支払者として雇う私設秘書が衆参合わせて1506人(1議員当
たり約3.1人)もいるという調査があります(『毎日新聞』2002年4月)。
このほか、法的には保障されていない、地方議員や首長の秘書も存在します。

 その業務もさまざま。『議員秘書―日本の政治はこうして動いている』(龍
崎孝著・PHP新書 2002年)によると、選挙対策はもちろんのこと、ほ
かにも運転手、政務調査会出席と資料集め、陳情処理、国会見学(これぞ将来
の有権者対策)、議員の日程管理、年の瀬の予算箇所づけ電話作戦、地元の留
守居役、マスコミ対策……。

 最近さまざまな事件報道で明らかになった政治資金集めも秘書のしごとです。
たとえば加藤紘一衆議院議員辞職のきっかけは秘書の逮捕ですが、これも加藤
氏が秘書の集金能力に頼らざるを得なかった事情があります。同書によると、
この秘書が就任後、山形県内の献金額は1996年・約7800万だったのが、
2000年には約1億9000万と膨れ上がったのです。集金能力こそ大物秘
書の条件とは言いすぎでしょうか。

『代議士秘書 永田町、笑っちゃうけどホントの話』(飯島勲著・講談社文庫
2001年)は、30年にわたって小泉純一郎衆議院議員の秘書を務め、現在
も同首相秘書官を務める飯島氏の著書です。この本によると秘書の定着率は、
「公設秘書で平均4、5年、私設秘書まで含めれば3年弱ぐらいなものだ。そ
もそも、代議士が落選してしまえば、それでおしまいの世界」。逆に、先生を
生かすも殺すも秘書の能力にかかっているといえなくもありません。

「秘書はあらゆることを知っていなければならない」という章では、あやしい
金もうけ話の断り方、海外で亡くなった有力支援者の遺体の搬送方法、入試の
あっせん依頼の対処法、支援者の子女を霞ヶ関の官庁アルバイトにねじ込む方
法と、支援者が持ち込む無理難題から先生を守る苦労が語られています。「先
生を傷つけるな」―この使命を果たせなければ、よい秘書にはなれないどころ
か自分の職も失うというわけです。 

★あなたたちは誰のためにある?★

 さて、ここからが本題なんですが、「誰がための秘書か」という問題。かつ
て鉄の結束を誇った「田中派秘書軍団」は、秘書を明日の不安から解放し、オ
ヤジのために最大限に働かせるための方策をつくりあげました。それが秘書救
済システム、つまりは相互扶助体制を構築していたのです。『田中真紀子研究』
(立花隆著・文藝春秋 2002年)にはこうあります。

「落選した代議士の周りには、職を失い、呆然自失する秘書もいる。家族を抱
え、子どもの教育費がかかり、住宅ローンも支払わなければならない…そうい
う失意の元仲間をスタッフが手薄な政治家のところに、暫時あずける。彼は安
定した職場を得て、オヤジの復権を待つことができる」、だからこそいざ選挙
では大秘書軍団が大活躍した。

 さらにこの時期にできあがったもうひとつのシステムがあります。それが利
権口利きのための議員秘書ネットワーク。このシステムが、現在も生き残りま
した。鹿野道彦衆議院議員の元秘書の事件で明らかになった行際研が、じつは
「『辞め秘書』が、一時、身を寄せる場所でもあった」と前出の『議員秘書―
日本の政治はこうして動いている』は記しています。職場と職務、そして守る
べき先生を失った秘書の末路かもしれません。

 秘書の給与はだれのものか。『新版 議員秘書の研究』(平田有史郎著・創
成社 2002年)では、先の秘書給与問題で突如もち上がった「公設秘書給
与プール制」に対して、このように結んでいます。

「国のカネは果たして議員のものか、秘書のものか。これをどのようにみるか
は、秘書に対する議員の見解――秘書は議員の使用人か、仕事上のパートナー
か――にかかっている。プール制の導入は、(中略)すっきり決着をつけてお
くときではないだろうか」

 秘書が生きるためには、先生が現職でいること、解雇されないこと。そして
規定どおり給料をいただけること、が明日の希望となります。そんなこととは
一見関わりが薄いかに見える有権者にとっても、給与詐欺疑惑を考える場合に
忘れてはならないのが「秘書給与の出資者はだれか」という問題です。「政策
秘書」「公設秘書」の給与が国庫、すなわち税から支給されている限り、秘書
もまた公務員なのです。

 もしこの給与問題をほうっておけば、政界の人材枯渇に拍車がかかり、秘書
のなり手がいなくならないとも限りません。その結果、縁故採用組が増えると
したら、それは2世議員の増殖と同様、次世代の政治の行く末を暗示するかも
しれないのです。(了)

◎関連サイト
■    江田五月『国会議員』(講談社新書)内より「秘書のタイプと役割」
http://www.eda-jp.com/books/giin/121.html
■政策担当秘書とは
http://www.asahi-net.or.jp/~yl3y-ynym/seido.html

[essay/エッセイ――60年代生まれの思い]
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05:「ダイナミック」なき国への憂鬱と希望
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柏木明子 Kashiwagi Akiko 『ワシントンポスト』記者

★「骨太の改革」はどうなったのか★

 いま日本の政治について思うのは、本当に変われない、ということ。改革を
掲げて取り組んできたけれど、わかったことは、変える仕組みがないというこ
と。自民党による変革は不可能。道路公団の改革を見ていてよくわかりました。

「骨太の改革」――あの分厚い書類に託された改革はどうなったのでしょうか。
小泉政権発足以来、3年経ちましたが、ほとんど進んでいない。公共事業など
については、流れが変わりましたが。

 景気は多少回復が見えます。しかし日本経済の将来不安の根底にある財政問
題はまったく解決していない。やはり、改革が目に見えて進んでこないと、日
本への興味を高めるのは難しいでしょう。

 いま、日本を魅力ある国として見せるには、また世界の多くの人々に知って
もらうには、予想外のことを起こす必要があったと思います。簡明に言えば政
権交代でした。いいか悪いかは別にして、変わるということに意味があったと
思います。そして、もしそれがワークしなければ、またそこで次の変革につな
げていくという選択肢もあるわけで。

 昨年の総選挙で、民主党は躍進し、「扉が開いた」などと形容され、「次、
あるいは次の次の選挙では、交代」と言われたけれど、それでは遅すぎる感じ
がします。数年後ではなくて、いま、大きな変化がおきて、海外からの関心を
高めていく、そうしたモメンタムをつくることに、大きな意味があったと思い
ます。

 少しでもビジネスで外国と触れ合っている人は、痛切に感じているはずです。
いま変わること、日本から情報を発信することの重要性を。世界のスピードと
日本のスピードのギャップは、ますます広がりつつあります。ただでさえ遅か
ったのが、韓国やタイのように周囲の国の動きが速くなっている。でも日本の
変化のスピードは変わらない。

 外国人の話を聞くと、たとえば中国、韓国に当てはまり、日本に当てはまら
ない単語がある。それは「ダイナミック」。

「なんで中国が面白いの?」「Because it is Dynamic.」

 絶対に日本に対しては、使われない単語です。

★アメリカ政治への興味★

 政治への関心は、大学時代からありました。ただし、それは日本ではなく、
アメリカの政治。高校の頃から英語に興味を持ち、その延長にあったからです。

 アメリカ政治のなかには、本当に魅力ある人が多い。古くはアレキサンダー
・ハミルトン、アブラハム・リンカーンから、最近ではベトナム戦争期のジェ
イコブ・ジャビッツ(共和党員でありながら戦争に反対)。

 とくにジャビッツは、国の政策に対して、信念を持って立ち向かう。決して
付和雷同ではない。そうした政治家が、ほかにも出てきて、そこでアメリカの
政治その姿に惹かれて、アメリカ政治に強い興味を持ち始めました。

 彼らの回想録を読み、また、学校の授業で、ジョナサン・コゾル著『自分の
学校をつくろう』やウィリアム・ドムホフ著『現代アメリカを支配するもの』
といった本を読み、アメリカ政治や社会学について、深く立ち入っていきまし
た。専門家になりたいとも思いました。

 一方で、正直に申し上げると、日本の政治には無関心でした。これは留学か
ら戻ってくる1995年まで。恥ずかしい話ですが、投票さえ行ったことがあ
りませんでした。バブル時代、平和で治安がよい日本社会に、強く求めるもの
がなかった……。これは言い訳にすぎませんが。

 しかし、記者としての仕事が始まり、バブル景気が吹き飛んだ日本と接する
ようになり、日本の問題をイヤというほど感じるようになりました。日本の財
政悪化のスピードを見ているだけでも、それは明らかで……。

★あえて希望を言えば★

 オーストラリア人が言っていましたが、小泉純一郎首相は、ブッシュ米大統
領、ブレア英首相に次いで、世界で3番目に知られた指導者だそうです。少な
くとも就任した2001年から1、2年は、メディアのアテンションを引っ張
ってきました。日本の改革者として。

 しかし、数年たって、経済構造はあまり変わってないし、実際、いまの日本
に対して私の周囲の女性のほとんどが日本の将来に、ペシミスティック。小泉
首相は、まだ就任時に語った「改革」の信念を持っているのでしょうか。

 希望をあえて言えば、官僚を辞めて、政治に飛び込もうとする30代、40
代の人たち。熱すぎるほどの「この国を何とかしたい」という語りには、地位
を捨て、家族を説得しながら挑む意気込みに、すごい決意だと思いますし、希
望がそこにあると思います。

(以上は、あくまで個人の見解です)

*かしわぎ・あきこ 1966年東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科
卒。銀行員を経て、93年コロラド大学へ留学、政治学修士号を取得し、95
年より現職。

◎関連サイト
■「骨太の改革」とは(その予兆として)『毎日新聞』の記事
http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/article/koizumi/200106/23-5.html
■ワシントンポスト紙
http://washpost.com/index.shtml

[postscript/あとがき]
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06:日本と韓国、メディアの度量
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 最近、韓国の新聞――『朝鮮日報』『中央日報』『東亜日報』のHPを頻繁
に見る。言うまでもないが日本語で。更新も早く、日本についての記事が多い
ことが面白い。

 今年に入ってからでも、小泉首相の靖国神社参拝、竹島絵柄の切手発行問題
は、もちろんトップ記事(ちなみにハングルでの記事もそうだった)。自衛隊
のイラク派遣についても社説でシニカルに書かれていた。とかくナショナリズ
ムが強い国民と言われる彼の国、それを引っ張ってきたのがこの大手新聞メデ
ィアと言われるが、まあそんな感じもしてくる。

 でも振り返って日本の大手新聞。僕が見た限り、5大紙のHPで韓国語版は
1つもない。外国語は英語版のみ。韓国の3大紙が、英語版に加え中国語版も
あるというのに。メディアも商売でやっているんだろうから、需要がなければ
やらないんだろうけれど、少し寂しく感じてしまう。

 これが韓国の勢いなのかなあ――。でも、韓国の3大新聞は『オー・マイ・
ニュース』をはじめとするインターネット新聞に侵蝕されつつあるとも聞く。
うーむ。となると日本の新聞は周回遅れなのか。ねえ『産経新聞』さん、あな
たはやらないの? 皮肉を込めてオススメします。(了)
(S)

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発行人 樺嶋秀吉(NPO法人コラボ代表理事)
発行  特定非営利活動法人(NPO法人)コラボ
サイト http://www.npo-collabo.org/ (購読の申し込みもこちらから)
連絡先 info@npo-collabo.org
〒343-0011 埼玉県越谷市大字増林5797番地
「コラボ」はNPO法人コラボのニューズレターです
本誌に掲載された記事を許可なく転載することを禁じます
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